解雇に補償金はある!?給与補償の有無や和解の際の補償の相場を解説
外資系企業から解雇を言い渡されてしまい、補償金をもらうことはできないか悩んでいませんか?
解雇されてしまうと、これからの生活がどうなってしまうのか不安ですよね。
結論としては、解雇に補償金という制度はありません。
解雇が有効な場合には給与補償もありません。
しかし、解雇の補償金ではなく、不当解雇の紛争の中で解決金が支払われることはあります。
解決金による補償の相場は賃金の3か月分~6か月分程度ですが、解雇の有効性の見通しなどによっても金額は大きく変わってきます。
解雇における解決金以外の補償としては、解雇予告手当や失業保険などがあります。また、解雇前の退職勧奨段階の場合には、特別退職金という形で補償が支払われることもあります。
解雇後に十分な補償を獲得するには、適切かつ冷静に対処していく必要があります。
実は、外資系企業であっても、労働者を容易に解雇できるわけではなく、紛争となった際には相当程度の支払いを命じられるリスクを背負っているのです。
この記事をとおして、解雇を言い渡されてしまった外資系企業の労働者の方に生活を守る方法を知っていただければ幸いです。
今回は、解雇に補償金はないことを説明したうえで、給与補償の有無や和解の際の補償の相場を解説していきます。
この記事を読めば、解雇を言い渡されてしまった場合に補償を獲得するためにはどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次(contents)
1章 解雇の補償金という制度はない
解雇に補償金という制度はありません。
解雇の補償金制度とは、雇用主が労働者を解雇をする際に一定の補償金を支払うことを義務付けられる制度のことです。
諸外国では法律により解雇の補償金という制度が設けられていることも多いですが、日本ではこのような制度は設けられていません。
解雇の補償金という制度がない代わりに、そもそも解雇できるケースを厳格に限定しているのです。
そのため、日本では、解雇をされた場合に裁判所が補償金という名目で支払いを命じる判決を下すことはありません。
2章 解雇が有効なら給与補償もない
解雇が有効な場合には、給与補償もありません。
解雇日以降の賃金は支払ってもらうことができなくなります。
解雇が有効な場合には解雇日をもってその企業の労働者ではないことになるためです。
ただし、解雇が無効な場合には、遡って解雇日以降の賃金の支払いを請求できる場合があります。
解雇が無効な場合には、解雇日以降勤務することができなかったのは、企業側に原因があることになるためです。これをバックペイと呼びます。
例えば、2024年8月31日付けで解雇されて、2025年8月31日まで争い不当解雇と認められた場合には、企業は、遡って1年分の賃金の支払いを命じられることがあるのです。
3章 解雇の補償金ではなく解決金はある
日本では解雇に補償金という制度はありませんが、不当解雇の紛争の中で解決金が支払われることはあります。
前記のとおり、企業は不当解雇とされた場合にはバックペイが命じられるリスクがありますので、一定の金銭的な補償をして示談をすることが多いのです。
実際、不当解雇の事案が争われる際には9割程度が金銭解決により和解されているといわれることもあります。
日本では、解雇の和解の際に支払われる解決金が解雇の補償金の代わりとなっています。
そのため、日本に解雇の補償金制度がないからと言って、生活の補償を受けることができないというわけではありません。
4章 解雇の和解における補償の相場|賃金3か月分~6か月分程度
解雇の和解における補償(解決金)の相場は、賃金の3か月分~6か月分程度です。
あくまでも相場に過ぎませんので、企業側が賃金の3か月分から~6か月分程度の補償を支払う義務があるわけではありません。
一方で、労働者も賃金の3か月分~6か月分程度の補償により納得しなければいけないというわけではありません。
補償金額については、最終的には解雇が法的に有効とされる可能性が高いかどうかといった部分が大きく影響してきます。
その他にも、労働者が復職する意思がどの程度強いのか、企業側が復職に応じることが可能なのかということも金額に関わってきます。
適切に交渉していくことで、賃金の1年分を超える補償金が支払われることも珍しくありません。
5章 解雇における解決金以外の補償
解雇の際には解決金以外にも、いくつか補償が支払われることがあります。
補償金という制度はありませんが、労働者の生活を補償する趣旨の制度がありますし、制度がない場合でも会社から一定の補償がされることがあるのです。
例えば、解雇における解決金以外の補償としては、以下の3つがあります。
・失業保険
・特別退職金
それでは、これらの補償について順番に説明していきます。
5-1 解雇予告手当
解雇における解決金以外の補償としては、解雇予告手当があります。
企業は、労働者を解雇する際には、原則として、30日前には解雇の予告をしなければならないとされています。
そして、30日前の解雇予告を行わない場合には、不足する日数に相当する解雇予告手当を支払う必要があるとされています。
そのため、解雇の際には30日分の生活については、解雇予告または解雇予告手当により補償されることになります。
5-2 失業保険
解雇における解決金以外の補償としては、失業保険があります。
失業保険とは、失業した際に一定期間、生活を支援するための給付金を受け取ることができる日本の公的制度です。
失業保険の受給要件を満たせば、雇用保険の加入期間と年齢、失業の原因によっても異なりますが、通常、90日から150日程度の補償がされる傾向にあります。
解雇の場合には会社都合とされる傾向にありますので、年齢や勤続年数によって最高で330日分の補償がされる可能性があります。
5-3 特別退職金
解雇前の退職勧奨段階の場合には、特別退職金という形で補償が支払われることもあります。
特別退職金とは、通常の退職金に加えて、退職に応じる対価等として支給される退職金のことです。
解雇される前の退職勧奨の段階では法的な紛争となる前の段階であるため、解決金ではなく特別退職金との名目で補償がされることになります。
特別退職金については、以下の記事で詳しく解説しています。
6章 解雇後に十分な補償を獲得する方法
解雇後に十分な補償を獲得するには、適切かつ冷静に対処していく必要があります。
解雇が不当な場合であっても、労働者が何もしなければ解雇が有効な前提手続きを進められてしまうことになります。
具体的には、不当な解雇をされた場合には、以下の方法で対処していきましょう。
方法2:通知書を送付する
方法3:交渉をする
方法4:労働審判・訴訟を利用する
それでは、これらの方法について順番に説明していきます。
6-1 方法1:弁護士に相談する
解雇後に十分な補償を獲得する方法の1つ目は、弁護士に相談することです。
解雇をあされた場合に適切に対処していくためには、法的な見通しを踏まえてリスクを分析して、慎重に方針を立てる必要があります。
とくに外資系企業の解雇紛争は専門性が高い一方で、企業側は解雇紛争に慣れているため、対等に交渉するには知識とノウハウが必要となります。
そのため、外資系企業から解雇された場合には、弁護士に相談しましょう。
6-2 方法2:通知書を送付する
解雇後に十分な補償を獲得する方法の2つ目は、通知書を送付することです。
弁護士に相談したら、解雇が無効であること、及び、解雇理由証明書の交付を求めること等を記載した通知書を送付してもらいましょう。
解雇理由証明書を取得することで、見通しを立てやすくなりますし、どのような主張や証拠を準備すればいいのかもわかるようになります。
また、事実上、企業は、解雇理由証明書に記載されていない事項については、後から解雇理由として追加しにくくなります。
6-3 方法3:交渉をする
解雇後に十分な補償を獲得する方法の3つ目は、交渉をすることです。
通知書を送付して、企業側からの回答があると争点が明確になりますので、折り合いをつけることが可能かどうか話し合いを行うことになります。
交渉の方法については、電話や書面、対面など様々ですので、状況に応じ適切な方法を選択することになります。
6-4 方法4:労働審判・訴訟を利用する
解雇後に十分な補償を獲得する方法の4つ目は、労働審判又は訴訟を行うことです。
話し合いによる解決が難しい場合には、労働審判や訴訟などの裁判所を用いた解決を検討します。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には労働審判委員会が審判を下します。迅速、かつ、適正に解決することが期待できます。
労働審判については、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
7章 外資系企業の解雇はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
外資系企業の解雇の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
解雇の有効性につき見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、外資系企業の性質に応じて適切に方針を策定する必要があります。
リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨事件に力を入れており、特に外資系企業とのパッケージ交渉について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しています。
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8章 まとめ
以上のとおり、今回は、解雇に補償金はないことを説明したうえで、給与補償の有無や和解の際の補償の相場を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
“まとめ”
・解雇に補償金という制度はありません。
・解雇が有効な場合には、給与補償もありません。
・日本では解雇に補償金という制度はありませんが、不当解雇の紛争の中で解決金が支払われることはあります。
・解雇の和解における補償(解決金)の相場は、賃金の3か月分~6か月分程度です。
・解雇における解決金以外の補償としては、以下の3つがあります。
解雇予告手当
失業保険
特別退職金
・不当な解雇をされた場合には、以下の方法で対処していきましょう。
方法1:弁護士に相談する
方法2:通知書を送付する
方法3:交渉をする
方法4:労働審判・訴訟を利用する
この記事が外資系企業から解雇されてしまい補償がないか悩んでいる労働者の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日