解雇の履歴書の書き方!記載義務やばれる理由3つとキャリアの守り方

履歴書に解雇されたことを記載しなければいけないのか悩んでいませんか?
前職を解雇により退職したことが知られてしまうと、転職できないのではないか不安に感じてしまいますよね。
解雇の履歴書の書き方としては、「令和●年●月●日 ●●会社 退職」と記載するのが一般的です。
通常、履歴書に「解雇」との記載をする義務まではなく、解雇を履歴書へ書かないことも違法とは言えないでしょう。
ただし、解雇は履歴書に記載しない場合でも、応募先の会社にばれてしまうことがあります。
解雇された場合の転職活動をする際には注意点があり、無理に解雇を隠そうとすると経歴詐称になってしまうこともあります。
解雇の履歴が原因で転職活動が上手くいかない場合には、キャリアを守るため会社に解雇を撤回してもらうことも検討するといいでしょう。
実は、外資系企業では解雇を言い渡されることも決して珍しいことではありませんが、良い条件で転職するにはキャリアが大切となります。
今回は、解雇の履歴書の書き方について、記載義務やばれる理由3つとキャリアの守り方を解説していきます。
この記事を読めば、解雇されてしまった場合に履歴書をどのように書けばいいのかがよくわかるはずです。
目次(contents)
1章 解雇の履歴書の書き方

解雇の履歴書は、「令和●年●月 ●●株式会社 退職」などの記載をすることが多いです。
退職の理由まで記載しなければいけないわけではないためです。
解雇と記載すると採用面接に進む前に落とされてしまうので、履歴書上は「退職」との記載にとどめておく方が多いのです。
(出典:ハローワークインターネットサービス 応募書類の作り方パンフレット7頁)
以下では、解雇の種類ごとに履歴書の書き方を説明していきます。
1-1 普通解雇の履歴書の書き方
普通解雇の履歴書の書き方も、「令和●年●月 ●●株式会社 退職」などの退職をするのが通常です。
失業保険の関係では、普通解雇であっても、原則として、会社都合退職として処理されます。
もっとも、「会社都合退職」との記載をすると、労働者に落ち度のない会社側の原因と誤解されてしまう可能性もあるため、避けた方が穏当でしょう。
1-2 懲戒解雇の履歴書の書き方
懲戒解雇の履歴書の書き方も、「令和●年●月 ●●株式会社 退職」などの退職をするのが通常です。
賞罰欄についても、「賞」は受賞歴や表彰歴、「罰」は犯罪歴を指すことが通常で、懲戒解雇は含まれません。
そのため、犯罪をして懲戒解雇をされてしまったような場合でなければ、賞罰欄を記載する必要はありません。
1-3 会社都合の解雇の履歴書の書き方
会社側の経営上の都合により解雇された場合の履歴書については、「令和●年●月 ●●株式会社 会社都合により退職」などの記載をすることが考えられます。
経営上の都合による解雇であれば、とくに採用側も悪い印象を受けないことが多いため、履歴書に「会社都合」という理由も記載する方が多いでしょう。
ただし、人によっては、会社都合であっても解雇ということを履歴書の段階では記載したくないという方もいるでしょう。
そのような場合には、「令和●年●月 ●●株式会社 退職」とだけ記載しておくことが考えられます。
1-4 試用期間解雇の履歴書の書き方
試用期間で解雇された場合の履歴書についても、「令和●年●月 ●●株式会社 退職」とだけ記載することが多いです。
ただし、前職3か月~6か月で退職していれば、試用期間で解雇されたことは察しがついてしまうでしょう。
2章 解雇を履歴書へ書かないのは違法?記載義務の有無
解雇されたことを履歴書へ記載しなくても、直ちに違法とは言えないでしょう。
聞かれていない場合にまで不利益な職歴を自発的に告知する義務まではないとされる傾向にあります。
採用を望む人が不利な事実を自分から告知したくないと考えるのは当然のことであり、採用者側もこれを踏まえて採用を検討するためです。
例えば、以下の裁判例が参考になります。
【事案】
風営法の規制を受けるパチンコ店にホールスタッフとして雇用された原告が、入社直前の風俗店での職歴を履歴書に記載しませんでした。
被告はこれを経歴詐称として懲戒解雇したため、原告は雇用の地位確認等を求め、解雇の有効性が争われました。
【結論】
懲戒解雇は無効ですが、有期契約は期間満了により終了いたしました。
【理由】
採用を望む者が不利益な事実の回答を避けたいと考えるのは当然であり、原告には本件職歴を自発的に申告する義務はなかったといえます。
原告の行為は不作為にとどまり、勤務態度に問題がないことから、懲戒解雇は重きに失し無効と判断されました。
しかし、従業員の素行に注意を払う被告にとって、直前の職歴の不告知は労使間の信頼関係にかかわる重大な事柄です。
したがって、有期雇用契約の更新拒絶については合理的な理由があると認められました。
(参考:岐阜地判平成25年2月14日裁判所ウェブサイト掲載判例)
ただし、前職の退職理由の記載を求められたり、聞かれたりした場合には、不利益な事項でも真実を告知すべき義務がありますので注意が必要です。
3章 解雇を履歴書に書かないでもばれる理由
解雇については、履歴書に書かないでもばれることがあります。
履歴書以外からも、前職の退職理由が明らかになる機会があるためです。
例えば、解雇を履歴書に書かないでもばれる理由としては、以下の3つです。
理由2:前職照会・リファレンスチェック
理由3:雇用保険受給資格者証

それでは、これらの理由について順番に説明していきます。
3-1 理由1:採用面接
前職を解雇されたことがばれる理由のほとんどは、採用面接で前職の退職理由を聞かれるためです。
前職を退職した理由を聞かれたら真実を告知する義務があり、解雇されたにもかかわらず、円満に退職したということはできません。
ほとんどの会社では、前職の退職理由を聞かれますので、履歴書に記載しなくても結局面接の場で解雇されたことは明らかになります。
3-2 理由2:前職照会・リファレンスチェック
前職照会やリファレンスチェックでも、前職を解雇されたことが明らかになってしまうことがあります。
狭い業界だと経営者同士のつながりなどで、前職の関係者から解雇されたことが伝わってしまうこともあります。
3-3 理由3:雇用保険受給資格者証
あまり知られていないかもしれませんが、雇用保険受給資格者証によっても前職を解雇されたことが分かります。

(出典:ハローワークインターネットサービス – 雇用保険手続きのご案内)
「12.離職理由」の箇所に「11」、「12」、「50・55」が記載されている場合には、解雇されたことになります。
「12」は、天災等の理由により事業の継続が不可能となったことによる解雇です。
「50・55」は、被保険者の責めに帰すべき重大な理由による解雇です。
「11」は、上記の12、50・55以外の解雇です。
なお、一身上の都合により退職した方は、「40」や「45などの記載がされています。
4章 これはNG!解雇された場合の転職活動の注意点
解雇された場合に転職活動をするにあたっては、注意点があります。
聞かれたことには真実を告知すべき義務があり、これに反すると経歴詐称として、懲戒解雇されたり、損害賠償を請求されたりしてしまうためです。
例えば、解雇された場合の転職活動において注意していただきたいNG行動としては、以下の3つがあります。
NG2:前職の経歴を記載しない
NG3:採用面接で嘘をつく

それでは、これらのNG行動について順番に説明していきます。
4-1 NG1:「一身上の都合で退職」と記載する
まず、前職を解雇された場合には、履歴書には「一身上の都合で退職」とは書かないようにしましょう。
解雇により退職したのであれば、「一身上の都合で退職」したわけではなく、嘘になってしまうためです。
経歴詐称としてトラブルになりがちです。
4-2 NG2:前職の経歴を記載しない
次に、前職の経歴を記載しないこともやめた方が良いでしょう。
履歴書に記載のない会社で勤務歴があったとして、経歴詐称とされる可能性が高いためです。
裁判例には、中途採用従業員が職務経歴書に記載のない会社に勤務歴があった事案において、虚偽申告したのは退職を巡る紛争を秘匿するためで、故意の経歴詐称にあたるとして、内定取り消しを有効と判断したものがあります。
(参考:東京地判令和6年7月18日労経速2574号9頁[アクセンチュア事件])
4-3 NG3:採用面接で嘘をつく
採用面接で嘘をつくことも、当然禁止なので注意しましょう。
解雇されたにもかかわらず、自主的に退職したかのように受け止められてしまう言い方も避けた方が良いでしょう。
例えば、前職を解雇されたにもかかわらず、「前職では自分のスキルを活かせなかったので退職して別の会社を探そうと考えた」などの発言をすれば詐称となるでしょう。
5章 解雇の履歴を消したい!キャリアを守るための対処法
解雇をされた後に転職活動をしていると、どうしても上手くいかず解雇の経歴を消したいと感じる方もいるでしょう。
解雇という経歴が転職活動に与える影響はとても大きいのです。
とくに、これまで華々しい経歴で順調にキャリアアップしてきた方であれば強いショックを受けてしまう方もいるでしょう。
しかし、外資系企業で働くのであれば解雇は珍しいものではありませんの、自身のキャリアを守る術も知っておく必要があります。
具体的には、解雇の履歴を消してキャリアを守るためには、以下の手順を試してみると良いでしょう。
手順2:通知書を送付する
手順3:解雇の撤回を交渉する
手順4:労働審判又は訴訟を提起する
それでは、これらの手順について順番に説明していきます。
5-1 手順1:弁護士に相談する
まず、はじめに弁護士に相談することがおすすめです。
解雇について法的な見通しを分析してもらい、あなたの目指す解決に向けて方針を助言してもらうべきだからです。
選択すべき手続きや解決までの期間、解決に必要なコストなど丁寧に教えてもらうことができるはずです。
外資系企業の解雇については専門性がとくに高いので、取り扱いの実績が豊富な弁護士を探すと良いでしょう。
5-2 手順2:通知書を送付する
次に、方針を決めたら、あなたの立場や主張について、通知書にして会社に送付しましょう。
何もせずに放置していると、あなた自身が解雇を認めて争っていなかったなどとの反論をされかねないためです。
また、その際には、併せて、解雇理由証明書の交付を請求するといいでしょう。
解雇理由証明書とは、文字通り解雇の理由が記載された証明書であり、労働基準法上、労働者から請求された場合には交付の義務があります。
解雇理由証明書を見ることで、より見通しが明確になりますし、準備しなければいけない主張や証拠が明らかになります。
5-3 手順3:解雇の撤回を交渉する
会社側から回答があったら、争点が明確になりますので、話し合いで折り合いをつけることが可能か、解雇の撤回を交渉しましょう。
もし、会社側が復職を拒む場合には、解雇の撤回の他にも、金銭的な補償等を求めていくことが多いです。
不当解雇の解決金については、以下の記事で詳しく解説しています。
5-4 手順4:労働審判又は訴訟を提起する
話し合いによる解決が難しい場合には、労働審判や訴訟など裁判所を用いた解決も検討しましょう。
労働審判は迅速に解決を目指す制度で、3回以内の期日で判断が出るのが特徴です。
労働審判については、以下の記事で詳しく解説しています。
例えば、解雇の無効を求めて労働審判を申し立て、和解金として数か月分の給与に相当する金額を得るケースもあります。
もし労働審判で解決しなければ訴訟に進み、最終的には裁判所が解雇の有効性を判断することになります。
不当解雇の訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。
不当解雇の訴訟については、以下の動画で詳しく解説しています。
6章 解雇の履歴についてよくある疑問
解雇の履歴についてよくある疑問としては、以下の3つがあります。
Q2:解雇を履歴書に書いてもいい?
Q3:離職票は転職先に出すべき?
これらの疑問を順番に解消していきましょう。
6-1 Q1:解雇の履歴があると転職できない?
A.解雇の履歴があっても、転職できている方は多いです。
ただし、解雇されたと伝えたら落とされてしまうことも少なくなく、転職のハードルは上がってしまうでしょう。
6-2 Q2:解雇を履歴書に書いてもいい?
A.解雇を履歴書に書くことも、勿論可能です。
ただし、採用面接に行く前に書類審査で落とされてしまうことが多くなります。
6-3 Q3:離職票は転職先に出すべき?
A.離職票は、転職先に出す必要がないことが多いでしょう。
離職票は、失業保険を受給する際にハローワークに提出するものであり、手元に残っていないことが多いためです。入社の手続きに必要な書類でもありません。
転職先が退職手続き書類にあまり詳しくないような場合には、離職票の提出を求められることもあります。
離職票がどのようなものかを説明して誤解を解くといいでしょう。
7章 外資系企業の解雇はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
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8章 まとめ
以上のとおり、今回は、解雇の履歴書の書き方について、記載義務やばれる理由3つとキャリアの守り方を解説しました。
この記事の内容を簡単に整理すると以下のとおりです。
“まとめ”
・解雇の履歴書は、「令和●年●月 ●●株式会社 退職」などの記載をすることが多いです。
・解雇されたことを履歴書へ記載しなくても、直ちに違法とは言えないでしょう。退職理由を履歴書に記載する義務まではないためです。
・解雇を履歴書に書かないでもばれる理由としては、以下の3つです。
理由1:採用面接
理由2:前職照会・リファレンスチェック
理由3:雇用保険受給資格者証
・解雇された場合の転職活動において注意していただきたいNG行動としては、以下の3つがあります。
NG1:「一身上の都合で退職」と記載する
NG2:前職の経歴を記載しない
NG3:採用面接で嘘をつく
・解雇の履歴を消してキャリアを守るためには、以下の手順を試してみると良いでしょう。
手順1:弁護士に相談する
手順2:通知書を送付する
手順3:解雇の撤回を交渉する
手順4:労働審判又は訴訟を提起する
この記事が履歴書に解雇されたことを記載しなければいけないのか悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日



