会社都合退職で退職金は上乗せ?相場と交渉方法を弁護士が詳しく解説
会社都合退職をすることになり、「退職金は会社都合なら上乗せされるのか」「提示された金額は妥当なのか」と悩む方は少なくありません。
会社都合退職でも退職金が自動的に増えるとは限らず、退職金規程の内容や退職に至った経緯、会社との交渉によって受け取れる金額が変わることがあります。
この記事の要点
・会社都合退職でも退職金の上乗せを当然にもらえるわけではなく、通常の退職金の割増とは別に特別退職金などを交渉できる場合があります。
・退職勧奨や解雇では増額交渉がしやすい場合がある一方、希望退職や法人の清算などでは個別交渉が難しいことがあります。
この記事を読めば、会社都合退職における退職金の上乗せ相場や交渉方法、確認すべきポイントがよくわかるはずです。
目次(contents)
- 1章 会社都合退職でも退職金が自動で上乗せされるとは限らない
- 2章 会社都合退職でもらえるお金の種類4つ
- 3章 【類型別】会社都合退職の類型3つと退職金上乗せ
- 4章 会社都合退職で退職金の増額交渉がしやすいケースとしにくいケース
- 5章 会社都合退職と退職金の上乗せ相場
- 6章 会社都合退職の退職金上乗せ額を左右する事情8つ
- 7章 会社都合退職でも退職金や上乗せ分をもらえない場合4つ
- 8章 会社都合退職の退職金を上乗せ交渉する手順
- 9章 退職金の上乗せを合意するときに確認すべき事項8つ
- 10章 退職金の上乗せについて弁護士に相談した方がよいケース6つ
- 11章 会社都合退職の退職金上乗せに関するQ&A
- 12章 外資系企業の退職勧奨・解雇はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
- 13章 まとめ
1章 会社都合退職でも退職金が自動で上乗せされるとは限らない

会社都合で退職することになっても、退職金が自動的に上乗せされるわけではありません。
退職金は、法律上、すべての会社に支払いが義務付けられているものではないためです。
退職金制度がある場合でも、支給額は就業規則や退職金規程などの定めによって決まります。
そのため、会社都合退職を理由に退職金が増えるかどうかも、まず会社の規程を確認する必要があります。
また、規程上の退職金とは別に、会社との合意によって追加のお金が支払われることもありますが、法律の条文で支給が義務付けられているわけではありません。
したがって、会社都合退職になったときは、「会社都合なら退職金が上乗せされる」と考えず、会社の制度や提示された条件を確認することが大切です。
2章 会社都合退職でもらえるお金の種類4つ
会社都合退職でもらえるお金は、すべて同じ性質の「退職金」ではありません。
会社の規程に基づくものと、退職条件として個別に支払われるものがあるため、分けて確認することが大切です。
主な種類としては、以下の4つがあります。
種類2:会社都合の支給率による増額分
種類3:特別退職金・割増退職金・解決金
種類4:有給の買い取り

それでは、会社都合退職でもらえるお金について順番に見ていきましょう。
2-1 種類1:退職金規程に基づく通常の退職金
まず確認するのが、会社の退職金規程に基づく通常の退職金です。
退職金制度がある会社では、勤続年数や基本給など、あらかじめ定められた計算方法に従って支給額が決まります。
これは、会社都合退職だから特別にもらえるお金ではなく、退職金制度の支給条件を満たした労働者に支給されるものです。
そのため、まずは就業規則や退職金規程を確認し、自分に通常いくらの退職金が支給されるのかを把握しましょう。
外資系企業と退職金制度については、以下の記事で詳しく解説しています。
2-2 種類2:会社都合の支給率による増額分
退職金規程によっては、自己都合退職よりも会社都合退職の方が高い支給率になっていることがあります。
会社都合退職では、労働者の意思とは別に退職することになるため、規程上有利に扱う制度が設けられていることがあるためです。
例えば、同じ勤続年数でも、自己都合退職には一定の減額率を適用し、会社都合退職では減額せずに支給するというケースがあります。
この増額分は個別交渉による上乗せとは異なるため、まず退職金規程に会社都合退職の支給率が定められていないか確認しましょう。
2-3 種類3:特別退職金・割増退職金・解決金
通常の退職金とは別に、特別退職金、割増退職金、解決金などが支払われることがあります。
これらは、会社が退職を求める際に、労働者との合意によって退職条件に追加されることがあるお金です。
例えば、退職勧奨を受けた労働者に対して、通常の退職金とは別に数か月分の賃金相当額を提示するというケースがあります。
ただし、法律上当然に支給されるものではありません。
そのため、会社から提示された金額だけで判断せず、退職の経緯や条件を踏まえて検討することが大切です。
特別退職金については、以下の記事と動画で詳しく解説しています。
2-4 種類4:有給の買い取り
退職時に未消化の有給休暇が残っている場合、会社との合意によって買い取ってもらえることがあります。
退職すると、その後は有給休暇を取得できなくなるため、退職条件の一つとして買い取りが検討されることがあるためです。
退職時の有給買い取りについては、退職所得として処理されることがあります。
もっとも、退職時に残った有給休暇を会社が必ず買い取らなければならないわけではありません。
そのため、有給休暇が残っている場合には、退職日までに消化するのか、会社が買い取るのかを確認しておくとよいでしょう。
3章 【類型別】会社都合退職の類型3つと退職金上乗せ
会社都合退職といっても、退職に至る経緯によって、退職金の上乗せとの関係は異なります。
会社が一方的に雇用を終了する場合と、話し合いで退職する場合では、確認すべき内容が違うためです。
主な類型としては、以下の3つがあります。
類型2:退職勧奨による合意退職
類型3:パワハラ等の職場環境による辞職
それでは、それぞれと退職金の上乗せとの関係を順番に見ていきましょう。
3-1 類型1:解雇・整理解雇
解雇や整理解雇では、会社側の判断によって雇用契約が終了します。
この場合、退職金規程で会社都合退職について有利な支給率が定められていれば、その基準に従って退職金が計算されるのが原則です。
ただし、普通解雇については、失業保険との関係で会社都合とされることが通常ですが、退職金規程上は自己都合とされる場合もあるので、注意が必要です。
これに対して、解雇や整理解雇された場合には、退職金規程に基づくとは別の上乗せ金が当然に発生するわけではありません。
不当解雇を争う中で、特別退職金や解決金を交渉していくことになります。
不当解雇の解決金については、以下の記事と動画で詳しく解説しています。
3-2 類型2:退職勧奨による合意退職
退職勧奨では、会社から退職を勧められ、労働者が同意することで退職することになります。
解雇とは異なり、最終的には会社と労働者の合意によって退職条件を決めるためです。
そのため、通常の退職金に加えて、特別退職金などを退職条件に含めることがあります。
もっとも、退職勧奨を受けただけで上乗せ金を受け取れるわけではなく、会社からの提示や双方の合意が必要になります。
また、退職勧奨については、会社都合退職として扱われるのが原則ですので、退職金規程に基づく退職金については有利に取り扱ってもらえます。
退職条件の交渉については、以下の記事と動画で詳しく解説しています。
3-3 類型3:パワハラ等の職場環境による辞職
パワハラなど会社側に原因がある事情によって、労働者から退職を申し出る場合もあります。
このような退職は、失業給付などの場面で会社側の事情が考慮されることがありますが、それだけで退職金が自動的に上乗せされるわけではありません。
退職金については、退職金規程でどのような退職理由として扱われるかを確認する必要があります。
また、すでに退職してしまった後になってしまうと、退職金規程以上の退職金の上乗せを交渉することも困難です。
退職金ではなく、別途パワハラ等の損害賠償を請求することを検討することになります。
外資系のパワハラについては、以下の動画で詳しく解説しています。
4章 会社都合退職で退職金の増額交渉がしやすいケースとしにくいケース
会社都合退職でも、退職金の増額を交渉しやすいかどうかは、退職の進め方によって異なります。
会社が労働者の同意を必要としている場合や、解雇の有効性に争いがある場合には、交渉の余地が大きくなるためです。
増額しやすいケース2:解雇の有効性に疑問がある場合は増額交渉がしやすい
増額しにくいケース1:希望退職・早期退職は個別の増額交渉がしにくい
増額しにくいケース2:法人の清算や日本からの撤退では増額交渉がしにくい

それでは、退職金の増額交渉がしやすいケースとしにくいケースを順番に見ていきましょう。
4-1 増額しやすいケース1:退職勧奨は増額交渉がしやすい
退職勧奨は、比較的、退職金の増額を交渉しやすいケースです。
退職勧奨では、会社が退職を勧めても、労働者が同意しなければ退職は成立しないためです。
そのため、会社が早く合意退職を成立させたい場合には、特別退職金などを追加して条件を提示することがあります。
例えば、「通常の退職金に加えて一定額を上乗せするので退職に応じてほしい」と提示されるケースもあります。
退職勧奨では、最初に提示された金額が最終条件とは限らないため、すぐに同意せず、増額の余地があるかを検討することが大切です。
4-2 増額しやすいケース2:解雇の有効性に疑問がある場合は増額交渉がしやすい
解雇の有効性に疑問がある場合も、退職金などの増額を交渉しやすくなることがあります。
解雇には、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められることが必要です。
そのため、解雇理由が弱い場合には、会社側にも解雇が無効と判断されるリスクがあります。
例えば、十分な改善の機会を与えないまま能力不足を理由に解雇したというケースでは、解雇の有効性が問題になることがあります。
このような場合には、解雇を争う代わりに、一定の上乗せ金を支払って合意退職とする方向で交渉できることがあります。
外資系の解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
4-3 増額しにくいケース1:希望退職・早期退職は個別の増額交渉がしにくい
希望退職や早期退職では、個別の上乗せ交渉がしにくい傾向があります。
会社があらかじめ対象者、募集期間、退職金の加算額などを決めて、同じ条件で募集していることが多いためです。
例えば、「対象者には通常の退職金に賃金の一定月数分を加算する」と一律に条件が決められているケースもあります。
このような制度では、特定の労働者だけ条件を変えると、他の対象者との公平性が問題になりやすくなります。
そのため、希望退職や早期退職では、提示された制度自体を確認したうえで、個別交渉が可能かを慎重に判断する必要があります。
4-4 増額しにくいケース2:法人の清算や日本からの撤退では増額交渉がしにくい
法人の清算や日本からの撤退に伴う退職では、退職金の増額交渉が難しくなることがあります。
会社が事業を終了する場合には、支払える資金や退職条件について、あらかじめ厳しい制限が設けられていることがあるためです。
労働者側としても、整理解雇を争ったり、仮に不当とされたあとに金銭の回収をしたりすることが容易ではありません。
法人の清算や日本からの撤退の場合には、会社の状況を確認しながら、現実的にどこまで交渉できるかを見極めることが重要です。
5章 会社都合退職と退職金の上乗せ相場
会社都合退職の退職金の上乗せ相場について、特別退職金は賃金の3か月分~6か月分程度が一つの目安になることがあります。
例えば、月額賃金が50万円であれば、150万円~300万円程度です。
また、退職金制度に基づく通常の退職金は、会社ごとに計算方法が異なりますが、勤続年数1年につき月額賃金1か月分程度となる制度が多いです。
さらに、自己都合退職と会社都合退職で支給率を変えている会社もあります。
自己都合退職では「1000万円×0.8=800万円」
会社都合退職では「1000万円×1.0=1000万円」
とするケースをよく目にします。
この場合には、会社都合退職となることで200万円多く受け取れることになります。
もっとも、これらはあくまで目安です。
実際の金額は退職金規程や会社から提示された条件、交渉の有無や法的見通しによって異なるため、自分の事案に応じて確認しましょう。
6章 会社都合退職の退職金上乗せ額を左右する事情8つ
会社都合退職で退職金をどこまで上乗せできるかは、一律には決まりません。
退職の経緯や会社側の事情、労働者が退職によって受ける不利益などによって、会社が応じる金額が変わるためです。
上乗せ額を考える際に重要な事情としては、以下の8つがあります。
事情2:会社が退職を急ぐ度合い
事情3:年齢と再就職の難しさ
事情4:勤続年数・役職・会社への貢献
事情5:基本給・賞与・株式報酬など報酬の内容
事情6:退職日までに失う賃金・福利厚生
事情7:過去の支給例・社内基準・他の対象者との均衡
事情8:会社の経営状況・支払能力・決裁権限

それでは、退職金の上乗せ額を左右する事情について順番に見ていきましょう。
6-1 事情1:退職勧奨・解雇の法的な見通し
退職勧奨や解雇について、会社側の法的な立場が弱いほど、上乗せ額を交渉しやすくなることがあります。
特に解雇は、会社が自由に行えるものではなく、合理的な理由と相当性が必要です。
例えば、能力不足を理由とする解雇について、改善の機会が十分に与えられていないというケースでは、解雇の有効性が争いになることがあります。
このように会社側にも法的なリスクがある場合には、そのリスクを踏まえて上乗せ額を検討することになります。
6-2 事情2:会社が退職を急ぐ度合い
会社が早期の退職を強く希望しているほど、上乗せ額の交渉余地が大きくなることがあります。
退職勧奨では、労働者が合意しなければ、会社の希望する時期に退職させることができないためです。
例えば、会社が短期間で組織変更を進めたいというケースでは、早期に合意する条件として金銭面を調整する余地が生じることがあります。
そのため、会社がいつまでの退職を求めているのかも重要な事情になります。
6-3 事情3:年齢と再就職の難しさ
年齢や再就職の難しさも、上乗せ額を考える事情の一つです。
退職後すぐに同程度の条件で再就職できるとは限らず、収入が途切れる期間が長くなることがあるためです。
例えば、専門性の高い職種や管理職などで、同程度のポジションを見つけるまで時間がかかるというケースもあります。
そのため、再就職までにどの程度の期間が必要になりそうかも、交渉材料として検討することになります。
6-4 事情4:勤続年数・役職・会社への貢献
勤続年数や役職、これまでの会社への貢献も、上乗せ額を考える事情になります。
長期間勤務してきた労働者や重要な役職を担ってきた労働者ほど、突然の退職による影響が大きいことがあるためです。
例えば、長年勤務して管理職を務めてきたというケースでは、勤続期間や職責を踏まえて退職条件を検討することがあります。
ただし、勤続年数が長いだけで一定額の上乗せを請求できるわけではありません。
6-5 事情5:基本給・賞与・株式報酬など報酬の内容
基本給だけではなく、賞与や株式報酬などを含めた報酬全体も重要です。
退職によって失う経済的利益は、毎月の基本給だけとは限らないためです。
例えば、基本給に加えて高額な賞与や株式報酬を受け取っているというケースでは、基本給だけを基準にすると退職による不利益を十分に反映できないことがあります。
そのため、上乗せ額を検討する際には、年間の報酬全体を確認することが大切です。
6-6 事情6:退職日までに失う賃金・福利厚生
退職時期によって失う賃金や福利厚生も、上乗せ額を左右する事情です。
退職日が早まることで、本来であれば受け取れたはずの給与や賞与などを失うことがあるためです。
例えば、賞与の支給日前に退職することで賞与を受け取れなくなるというケースもあります。
そのため、提示された退職日だけを見るのではなく、その日まで勤務した場合に得られる利益も確認する必要があります。
6-7 事情7:過去の支給例・社内基準・他の対象者との均衡
会社内の過去の支給例や社内基準も、上乗せ額を考える材料になります。
同じような退職について一定の基準で特別退職金を支払っている場合には、その基準との違いを説明する必要が生じるためです。
例えば、同じ部署や同程度の役職の労働者に共通した条件が提示されているというケースもあります。
そのため、確認できる範囲で社内基準や他の対象者との条件の違いを整理しておくことが有益です。
6-8 事情8:会社の経営状況・支払能力・決裁権限
会社の経営状況や支払能力、誰が退職条件を決められるのかも、上乗せ額を左右します。
労働者側に有利な事情があっても、会社に十分な資金がない場合や、担当者に増額の決裁権限がない場合には、交渉できる金額に限界があるためです。
例えば、日本法人が退職条件を決められず、海外本社の承認が必要というケースもあります。
そのため、上乗せ額を考える際には、法的な見通しだけではなく、会社側が実際にどこまで支払えるのかも見極めることが大切です。
7章 会社都合退職でも退職金や上乗せ分をもらえない場合4つ
会社都合退職であっても、退職金や上乗せ分を必ず受け取れるわけではありません。
通常の退職金は会社の制度に基づき、上乗せ分は規程や会社との合意に基づいて支払われるためです。
主にもらえない場合としては、以下の4つがあります。
例2:勤続年数などの支給条件を満たしていない場合|通常退職金が支給されない
例3:会社都合加算の定めがない場合|通常退職金の加算が支給されない
例4:特別退職金の合意がない場合|特別退職金が支給されない
それでは、会社都合退職でも退職金や上乗せ分をもらえない場合について順番に見ていきましょう。
7-1 例1:会社に退職金制度がない場合|通常の退職金が支給されない
会社に退職金制度がない場合には、原則として通常の退職金は支給されません。
法律上、会社には必ず退職金制度を設けなければならないという義務がないためです。
そのため、会社都合で退職する場合でも、退職金制度自体がなければ、会社都合であることだけを理由に通常の退職金を請求することはできません。
もっとも、通常の退職金制度がなくても、退職勧奨などの場面で特別退職金を個別に交渉することは考えられます。
7-2 例2:勤続年数などの支給条件を満たしていない場合|通常退職金が支給されない
退職金制度があっても、支給条件を満たしていない場合には、通常の退職金を受け取れないことがあります。
退職金規程では、一定以上の勤続年数などを支給条件としていることがあるためです。
例えば、「勤続3年以上の労働者を支給対象とする」と定められているケースでは、勤続2年で退職すると支給対象にならないことがあります。
そのため、会社都合退職になった場合でも、まず自分が退職金規程の支給条件を満たしているか確認することが必要です。
7-3 例3:会社都合加算の定めがない場合|通常退職金の加算が支給されない
退職金規程に会社都合退職の加算が定められていなければ、会社都合になっただけで通常の退職金が増えるとは限りません。
会社都合による支給率の引き上げは、法律上当然に行われるものではないためです。
例えば、自己都合退職と会社都合退職で同じ計算式を使う退職金制度であれば、退職理由が会社都合でも支給額が変わらないことがあります。
そのため、会社都合退職について特別な支給率や加算が設けられているか、退職金規程を確認することが大切です。
7-4 例4:特別退職金の合意がない場合|特別退職金が支給されない
特別退職金や割増退職金は、会社との合意がなければ当然に支給されるものではありません。
これらは、退職金規程に基づく通常の退職金とは異なり、退職条件の一つとして個別に決められることが多いためです。
例えば、会社から退職勧奨を受けても、通常の退職金だけが提示され、特別退職金について合意していないというケースでは、当然に上乗せ分を請求できるわけではありません。
そのため、上乗せを希望する場合には、退職合意をする前に金額や支払条件について交渉する必要があります。
8章 会社都合退職の退職金を上乗せ交渉する手順
退職金の上乗せを希望する場合には、会社から提示された条件にすぐ同意せず、順番を意識して交渉しましょう。
一度退職条件に同意すると、後から条件を変更することが難しくなるためです。
上乗せ交渉の主な手順は、以下の4つです。
手順2:弁護士に相談する
手順3:通知書を送付し法的な見通しを踏まえ交渉を行う
手順4:退職合意書を作成する

それでは、会社都合退職の退職金を上乗せ交渉する手順について順番に見ていきましょう。
8-1 手順1:安易に退職合意書にサインをせず一度持ち帰る
まず、会社から退職合意書を示されても、その場ですぐにサインしないことが大切です。
退職合意書には、退職金の金額だけではなく、退職日や請求権の放棄など重要な条件が含まれていることがあるためです。
例えば、上乗せ額に納得できないまま署名すると、その後に増額を求めることが難しくなるケースがあります。
そのため、退職条件を提示されたら、「弁護士に相談したいので、一度持ち帰らせてください」とだけ回答し、一度持ち帰って内容を確認しましょう。
8-2 手順2:弁護士に相談する
次に、提示された条件が妥当か分からない場合には、労働問題に詳しい弁護士へ相談することを検討しましょう。
退職金の上乗せ交渉では、単に「もっと支払ってほしい」と伝えるだけではなく、退職勧奨や解雇の法的な見通しを踏まえて交渉することが重要だからです。
弁護士に相談することで、会社の提示額が妥当か、どのような点を交渉材料にできるかを整理しやすくなります。
特に、解雇を示唆されている場合や高額な退職条件が問題となっている場合には、合意する前に相談することが大切です。
8-3 手順3:通知書を送付し法的な見通しを踏まえ交渉を行う
交渉する方針が決まったら、会社に通知書を送付し、退職条件について話し合います。
このときは、希望額だけを伝えるのではなく、会社が退職を求める経緯や解雇となった場合の法的な見通しなどを踏まえて交渉することが重要です。
例えば、解雇の有効性に疑問がある場合には、その問題点を示したうえで、合意退職の条件として特別退職金の増額を求めることが考えられます。
法的な根拠と退職条件を結び付けて交渉することで、会社側も増額を検討しやすくなります。
8-4 手順4:退職合意書を作成する
交渉がまとまったら、最終的な退職条件を退職合意書に記載します。
口頭だけで合意すると、後から金額や支払時期について認識の違いが生じるおそれがあるためです。
退職合意書には、通常の退職金と上乗せ金を区別したうえで、金額や支払日などを明確にしておきます。
そのため、金額について合意できた後もすぐに署名するのではなく、合意内容が正確に書面へ反映されているか確認するようにしましょう。
9章 退職金の上乗せを合意するときに確認すべき事項8つ
退職金の上乗せ額について会社と合意できても、金額だけを見て署名するのは避けた方がよいでしょう。
退職合意書には、退職理由や支払時期、請求権の放棄など、その後の生活や権利に影響する重要な条件が含まれるためです。
確認すべき主な事項としては、以下の8つがあります。
確認事項2:退職日とそれまでの就労・自宅待機・賃金
確認事項3:通常退職金と上乗せ金の金額・計算根拠
確認事項4:支払日・支払方法・税務処理
確認事項5:離職票・退職証明書の記載
確認事項6:賞与・有給休暇・福利厚生・再就職支援
確認事項7:清算条項・請求権放棄・秘密保持・競業避止
確認事項8:合意違反時の扱いと十分な検討期間
それでは、退職金の上乗せを合意するときに確認すべき事項について順番に見ていきましょう。
9-1 確認事項1:退職の法的形式と退職理由
まず、どのような形で退職することになるのかを確認しましょう。
退職勧奨による合意退職なのか、解雇なのかなどによって、退職の意味が異なるためです。
また、退職理由が「会社都合」と理解していても、書面上の記載が異なっていることがあります。
そのため、退職合意書に署名する前に、退職の形式と理由が自分の認識と一致しているか確認しましょう。
9-2 確認事項2:退職日とそれまでの就労・自宅待機・賃金
退職日だけではなく、それまでの働き方と賃金も確認しましょう。
合意成立から退職日まで一定の期間がある場合、その間も出勤するのか、自宅待機になるのかによって状況が変わるためです。
例えば、自宅待機としながら、退職日までは通常どおり賃金を支払うというケースもあります。
退職日までの扱いを曖昧にせず、就労義務と賃金の有無を明確にしておくことが大切です。
9-3 確認事項3:通常退職金と上乗せ金の金額・計算根拠
通常の退職金と上乗せ金は、分けて確認することがおすすめです。
両者をまとめた金額だけが示されていると、本来の退職金がいくらで、追加でいくら支払われるのか分かりにくいためです。
金額だけではなく、その計算根拠まで確認しておくことが大切です。
9-4 確認事項4:支払日・支払方法・税務処理
退職金や上乗せ金については、いつ、どのような方法で支払われるのかを確認しましょう。
金額に合意しても、支払時期が曖昧では、予定どおり受け取れない可能性があるためです。
また、通常の退職金、特別退職金、解決金などは、名目や実態によって税務上の扱いが異なることがあります。
そのため、支払日、振込先、税務上どのように処理される予定なのかを合意前に確認しておくとよいでしょう。
9-5 確認事項5:離職票・退職証明書の記載
離職票や退職証明書にどのような退職理由が記載されるのかも確認しましょう。
退職理由の記載は、失業給付などに影響する可能性があるためです。
例えば、会社との話し合いでは会社側から退職を求められたことを前提としていたのに、書類では自己都合退職として処理されるというケースも考えられます。
そのため、退職金の金額だけではなく、退職後に発行される書類の記載についても確認しましょう。
9-6 確認事項6:賞与・有給休暇・福利厚生・再就職支援
退職金以外の待遇についても、まとめて確認しましょう。
退職する時期によっては、賞与や有給休暇、福利厚生などの扱いが変わることがあるためです。
例えば、未消化の有給休暇を退職日までに取得するのか、再就職支援サービスを利用できるのかという点も確認事項になります。
退職金の上乗せ額だけで判断せず、退職までに受けられる待遇全体について慎重に検討するといいでしょう。
9-7 確認事項7:清算条項・請求権放棄・秘密保持・競業避止
退職合意書では、会社に対する請求を今後行わないという条項が入ることがあります。
このような条項に同意すると、未払い賃金などについて後から請求することが難しくなる可能性があるため、内容を慎重に確認する必要があります。
また、退職後の秘密保持や競業避止について、広い義務が定められていることもあります。
上乗せ金だけに目を向けず、どの権利を放棄し、退職後にどのような義務を負うのかを確認したうえで合意しましょう。
9-8 確認事項8:合意違反時の扱いと十分な検討期間
最後に、会社が合意した金額を支払わなかった場合などの扱いも確認しておきましょう。
退職合意は、署名した後に簡単にやり直せるものではないためです。
また、会社から短い期限を示されたとしても、重要な内容を理解しないまま急いで署名することはおすすめできません。
合意内容を十分に検討する時間を確保し、不明な点を解消したうえで署名しましょう。
10章 退職金の上乗せについて弁護士に相談した方がよいケース6つ
退職金の上乗せについて迷った場合には、早めに弁護士へ相談した方がよいケースがあります。
退職条件に一度同意すると修正が難しく、法的な問題や金額の妥当性を自分だけで判断しにくいことがあるためです。
弁護士への相談を検討した方がよいケースとしては、以下の6つがあります。
ケース2:退職金額が少なく不満がある
ケース3:退職金規程や計算根拠が開示されない
ケース4:退職を断ると解雇すると言われた又は退職強要がある
ケース5:管理職・高年収・外資系で報酬構成が複雑
ケース6:離職理由、未払い賃金、ハラスメントなど複数の争点がある
それでは、弁護士に相談した方がよいケースについて順番に見ていきましょう。
10-1 ケース1:署名期限が迫っている又は面談で即答を求められた
会社から短い期限を示されている場合には、署名する前に弁護士へ相談することをおすすめします。
退職合意書には、退職金だけではなく、請求権の放棄など重要な内容が含まれていることがあるためです。
例えば、「今日中に回答してほしい」「明日までに署名してほしい」と求められるケースもあります。
重要な条件ほど急いで判断せず、内容を確認してから回答しましょう。
10-2 ケース2:退職金額が少なく不満がある
会社から提示された退職金や上乗せ額が少ないと感じる場合にも、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
提示額が妥当かどうかは、退職に至った経緯や会社側の法的なリスクなども踏まえて判断する必要があるためです。
例えば、会社から退職を強く求められているのに、通常の退職金しか提示されていないというケースもあります。
金額に納得できない場合には、合意する前に増額交渉の余地がないか確認しましょう。
10-3 ケース3:退職金規程や計算根拠が開示されない
退職金の計算方法が分からない場合にも、弁護士へ相談することが考えられます。
会社から合計額だけを示されても、その金額が退職金規程どおりに計算されているか判断できないためです。
例えば、会社都合退職の支給率があるはずなのに、その計算根拠が説明されないというケースもあります。
根拠が分からないまま同意せず、退職金規程や計算内容を確認しましょう。
10-4 ケース4:退職を断ると解雇すると言われた又は退職強要がある
退職勧奨を断った場合に解雇すると言われている場合や、強い退職圧力を受けている場合には、早めの相談がおすすめです。
解雇が法的に有効かどうかによって、退職条件の交渉方針が大きく変わるためです。
例えば、退職に応じなければ直ちに解雇すると繰り返し告げられるケースもあります。
このような場合には、その場で退職に同意せず、会社の対応に法的な問題がないか確認しましょう。
10-5 ケース5:管理職・高年収・外資系で報酬構成が複雑
管理職や高年収の労働者、外資系企業で働いている方は、弁護士への相談が特に有益なことがあります。
基本給以外に、賞与や株式報酬などが含まれ、退職による経済的な影響を計算しにくいことがあるためです。
例えば、退職時期によって賞与や株式報酬を受け取れなくなるというケースもあります。
退職金だけを見るのではなく、失う可能性のある報酬も含めて条件全体を検討するといいでしょう。
10-6 ケース6:離職理由、未払い賃金、ハラスメントなど複数の争点がある
退職金以外にも問題がある場合には、まとめて弁護士へ相談することをおすすめします。
退職合意書に署名すると、他の請求についても放棄したことになる可能性があるためです。
例えば、未払い残業代があり、さらにハラスメントについても問題がある状態で退職条件を提示されるケースもあります。
11章 会社都合退職の退職金上乗せに関するQ&A
会社都合退職の退職金の上乗せについて、よくある疑問としては、以下の5つがあります。
Q2:退職金の上乗せは月額賃金の何か月分が目安ですか
Q3:退職金制度がなくても上乗せ分を交渉できますか
Q4:退職合意書に署名した後でも増額交渉できますか
Q5:法人の清算や日本からの撤退でも増額交渉できますか
これらの疑問を順番に解消していきましょう。
11-1 Q1:会社都合退職なら退職金は必ず上乗せされますか
A.会社都合退職になっただけで、退職金が必ず上乗せされるわけではありません。
通常の退職金は退職金規程などに従って計算され、特別退職金などの上乗せ分は、会社の制度や個別の合意によって支給されるためです。
そのため、まずは退職金規程を確認し、会社都合の場合に支給率が変わるのか、別途上乗せ金が提示されているのかを確認しましょう。
11-2 Q2:退職金の上乗せは月額賃金の何か月分が目安ですか
A.特別退職金については、賃金の3か月分~6か月分程度が一つの目安になることがあります。
ただし、法律上「何か月分を支払う」と決められているわけではありません。
退職の経緯や会社が退職を求める強さ、再就職の難しさなどによって金額は変わります。
そのため、月数だけで妥当性を判断せず、自分の事情を踏まえて検討しましょう。
11-3 Q3:退職金制度がなくても上乗せ分を交渉できますか
A.退職金制度がない会社でも、特別退職金などを交渉することは可能です。
退職金制度に基づく通常の退職金と、退職条件として個別に合意する上乗せ金は別のものだからです。
例えば、退職勧奨を受けた際に、退職へ同意する条件として一定額の支払いを求めるというケースが考えられます。
もっとも、会社に法律上当然の支払義務が生じるわけではないため、交渉できるかは個別の事情によります。
11-4 Q4:退職合意書に署名した後でも増額交渉できますか
A.退職合意書に署名した後の増額交渉は、一般的に難しくなります。
署名によって、退職条件について会社と合意したと扱われるためです。
特に、「会社と労働者の間にほかの債権債務がない」とする清算条項がある場合には、追加請求が難しくなることがあります。
そのため、金額に納得できない場合には、署名する前に交渉しましょう。
11-5 Q5:法人の清算や日本からの撤退でも増額交渉できますか
A.法人の清算や日本からの撤退の場合でも、増額交渉をすること自体はできます。
ただし、通常の退職勧奨よりも交渉が難しいことがあります。
会社の支払原資が限られていたり、現実問題として回収が困難であったりするためです。
12章 外資系企業の退職勧奨・解雇はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
外資系企業の退職勧奨や解雇は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
法的な見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、外資系企業の性質に応じて適切に方針を策定する必要があります。
リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨事件に力を入れており、特に外資系企業とのパッケージ交渉について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しています。
解決実績の一部については、以下のページから確認する事が出来ます。
解決事例 | 外資系労働者特設サイトbyリバティ・ベル法律事務所 (libertybell-tokusetu.com)
まずはお気軽にご相談ください。
13章 まとめ
以上のとおり、今回は、会社都合退職で退職金は上乗せについて、相場と交渉方法を解説しました。
この記事が会社都合退職の場合に退職金が上乗せされないか悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日






パッケージとは?-相場と6つの交渉方法-320x180.png)
