解雇(クビ)後の給料は補償される?和解金相場は給料3ヶ月~6ヶ月
解雇されると給料がどうなってしまうのか不安に感じていませんか?
解雇された後も生活を続けなければいけないため、給料がどうなるのか不安ですよね。
結論としては、解雇されると給料は支給されなくなります。
しかし、不当解雇として無効であるとされた場合には、遡って給料が補償されることになります。
解雇の和解金の相場は、給料の3ヶ月分~6ヶ月分程度と言われています。
会社は、本来、30日前には解雇の予告を行う必要がありますので、急な解雇(即日解雇)の場合には、解雇予告手当を支払わなければなりません。
上記については、基本的には、試用期間解雇、懲戒解雇、整理解雇(会社都合解雇)の場合にも同様ですが、解雇予告手当にはそれぞれ一定の例外事由があります。
不当解雇をされた場合に解雇日以降の給料を遡って回収するには、冷静かつ正確な対応が必要となります。
実は、外資系企業であっても、日本で業務を行う以上は厳格な解雇規制が適用されますので、不当な解雇であるとして遡って給料の補償を受けることができるケースが少なくないのです。
この記事をとおして、解雇されてしまい給料が支払われなくなることに不安を感じている外資系従業員の方に、解雇と給料に関して正しい知識を知っていただければ幸いです。
今回は、解雇(クビ)後の給料は補償されるかを説明したうえで、和解金相場について解説していきます。
この記事を読めば、解雇された場合の給料についての考え方がよくわかるはずです。
解雇された場合の給与については、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次(contents)
1章 解雇されると給料は支給されなくなる
解雇されると、解雇日の翌日以降の給料は支給されなくなります。
つまり、解雇されたら場合の給料は、解雇日当日までの分しか支払われないことになります。
会社は、解雇日をもって、労働者が退職したものとして扱うためです。
例えば、末日締め翌月25日払いの会社が、労働者を3月31日で解雇したとします。
この場合には、3月31日までのお給料は支払われることになりますが、4月1日以降のお給料は支払われなくなります。
そのため、労働者は、解雇されると、解雇日の翌日以降の給料の支給がされず、生活に困ることになってしまうのです。
“~解雇されると最後の給料の支払日はどうなる?~”
解雇された場合、最後の給料の支払日は、労働者が請求を行うかどうかによって、異なります。
労働基準法23条1項では、「使用者は、労働者の…退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い…を返還しなければならない。」と規定しています。
そのため、労働者が請求をした場合には、請求日から7日以内が最後の給料の支払日となります。一方で、労働者が請求をしなかった場合には、通常の給料日が支払日となります。
ただし、解雇を争う場合には、7日以内に最後の給料を支払うように請求してしまうと、退職したことを認めていた等の指摘をされるリスクがあるので注意が必要です。
2章 不当解雇だと遡って給料が補償される|バックペイ
不当解雇として無効であるとされた場合には、遡って給料が補償されることになります。これをバックペイといいます。
解雇日の翌日以降、労働者が業務を行うことができなかったのは、会社側に原因があることになるためです。
例えば、2024年6月末日付けで解雇された場合、これを不当解雇であるとして争い、2025年5月末日に解決した場合には、12か月分の賃金が支払われることになります。
ただし、解雇を争う期間、他の会社に勤務をして、お給料の支給を受けている場合には、会社に請求できる金額が6割程度まで減ってしまうことがあります。
他の会社から給料の支給を受けつつ、解雇した会社にも給料を請求することができてしまうと二重取りになってしまうので調整されることになるのです。
3章 解雇の和解金の相場は給料3ヶ月~6ヶ月分
解雇の和解金の相場は、給料の3ヶ月分~6ヶ月分程度と言われています。
解雇を争う中で退職を前提とした和解が成立することがあります。
その場合、解決金等の名目で、会社から労働者に対して解決金等の名目で一定の支払いがされることになるのです。
解雇の見通しや労働者の復職の意思などにより概ねの金額が決まる傾向にあります。
訴訟外の交渉の段階では、バックペイが溜まっておらず、会社側も解雇が有効であることを前提に交渉してきます。そのため、給料3ヶ月~6ヶ月分程度となりがちなのです。
ただし、労働審判の段階では、和解金の相場も、もう少し変わってきます。
具体的には、労働者敗訴の心証の場合には賃金の2~3か月分程度、どちらの言い分が認められるか微妙な事案の場合6か月分前後、労働者勝訴の心証の場合には賃金の6か月分~1年分程度となる傾向にあります。
4章 急な解雇(即日解雇)だと給料に代えて解雇予告手当が支払われる
急な解雇(即日解雇)の場合には、原則として、解雇予告手当を支払われることになります。
解雇予告手当とは、会社が労働者に対して予告をしないで、いきなり解雇する場合に、支払わなければならない手当です。
会社は、解雇をする際には、30日前には解雇の予告を行う必要があり、予告をしない場合には予告に代えた手当の支払いが必要となるのです。
解雇予告手当の支払いは、解雇の申し渡して同時にしなければならないとされています(昭和23年3月17日基発464号)。
面談室等で現金により交付されるか、給与口座に振り込み送金されることが通常です。
ただし、解雇予告手当については、解雇が有効である場合に支払われるものであるため、解雇を争う場合には、解雇予告手当を請求することは矛盾してしまうリスクがあります。
解雇後に労働基準監督署に相談に行くと、解雇予告手当を請求するように等の助言をされることもありますが、方針と矛盾しないように注意が必要です。
解雇された場合に「やるべきこと」と「やってはいけないこと」は、以下の動画でも詳しく解説しています。
5章 解雇の種類と給料の取扱い
解雇の種類後の給料の取扱いについて、説明していきます。
解雇日の翌日以降の給料が支払われなくなることは、いずれの解雇も同様ですが、解雇予告手当については若干の差異が生じることがあります。
以下の順番で説明していきます。
・懲戒解雇と給料
・整理解雇(会社都合解雇)と給料
5-1 試用期間解雇と給料
試用期間解雇された場合でも、解雇日の翌日以降の給料は支払われなくなります。
しかし、試用期間解雇が不当である場合には、解雇日の翌日以降の給料が遡って補償されることになります。
解雇予告手当については、試用期間中の場合、働いている期間が14日以内の労働者には支払いは不要とされています。
5-2 懲戒解雇と給料
懲戒解雇された場合でも、解雇日の翌日以降の給料は支払われなくなります。
しかし、懲戒解雇が不当である場合には、解雇日の翌日以降の給料が遡って補償されることになります。
解雇予告手当については、懲戒解雇のようなケースでは、「労働者の責めに帰すべき事由」に基づき解雇をする場合として、支払いは不要とされることがあります
5-3 整理解雇(会社都合解雇)と給料
整理解雇された場合でも、解雇日の翌日以降の給料は支払われなくなります。
しかし、整理解雇が不当である場合には、解雇日の翌日以降の給料が遡って補償されることになります。
解雇予告手当については、整理解雇のようなケースでは、「やむを得ない事由」により、「事業の継続が不可能となった」場合として、支払いは不要とされることがあります
整理解雇については、以下の動画でも詳しく解説しています。
6章 不当解雇された場合に給料を回収する手順
不当解雇をされた場合に解雇日以降の給料を遡って回収するには、冷静かつ正確な対応が必要となります。
会社側は解雇が有効であることを前提に処理をしてきますので、労働者が何も対応をしないでいると、仮に不当解雇であっても給料を取り戻すことができなくなってしまうのです。
具体的には、不当解雇をされた場合において、給料を回収するには以下の手順で対処していきましょう。
手順2:通知書を送付する
手順3:交渉
手順4:労働審判又は訴訟
それでは、順番に説明していきます。
6-1 手順1:弁護士に依頼する
不当解雇をされた場合には、まずは弁護士に相談をするべきです。
解雇の見通しを分析したうえで、個々人に応じたリスクを踏まえて、方針を決めていくべきだからです。
とくに、解雇については、一度決めた方針と矛盾しないように、一貫した対応を行っていくことが大切となってきます。
解雇後の態様の一つ一つについて、会社側から反論の材料とされてしまうリスクがありますので、早い段階で弁護士に依頼してしまうことがおすすめです。
6-2 手順2:通知書を送付する
次に、不当解雇への対応方針を決めたら、会社に対して、通知書を送付することになります。
方針に基づいて、会社に対して、求めていく内容を通知していくことになります。
例えば、解雇を争う場合には、解雇が無効であることを指摘したうえで、解雇理由証明書を請求していくことになります。
解雇された後、解雇が無効であること等を指摘せずに長期間にわたり放置してしまうと、退職を認めていた等の反論されることもあります。
そのため、解雇をされた場合には早めのアクションを行うことが重要です。
6-3 手順3:交渉
通知書を送付し、会社から回答があった場合には、話し合いにより折り合いをつけることが可能かどうか交渉を行うことになります。
双方の主張が明らかになり争点が明確になり、話し合いの前提となるような共通認識を構築することができれば、早期に解決できる場合があります。
交渉の方法については、とくに決まった方法はなく、書面により交渉したり、電話により交渉したり、面談をしたりと様々です。
状況に応じて適切な方法を選択していくことになります。
6-4 手順4:労働審判又は訴訟
話し合いによる解決が難しい場合には、労働審判又は訴訟といった裁判所を用いた解決を検討することになります。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には労働審判委員会が審判を下します。迅速、かつ、適正に解決することが期待できます。
労働審判については、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
7章 外資系の不当解雇はリバティ・ベル法律事務所にお任せ
外資系企業の解雇の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
解雇の有効性につき見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、外資系企業の性質に応じて適切に方針を策定する必要があります。
リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨事件に力を入れており、特に外資系企業とのパッケージ交渉について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しています。
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8章 まとめ
以上のとおり、今回は、解雇(クビ)後の給料は補償されるかを説明したうえで、和解金相場について解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
“まとめ”
・解雇されると、解雇日の翌日以降の給料は支給されなくなります。
・不当解雇として無効であるとされた場合には、遡って給料が補償されることになります。
・解雇の和解金の相場は、給料の3ヶ月分~6ヶ月分程度と言われています。
・急な解雇(即日解雇)の場合には、原則として、解雇予告手当を支払われることになります。
・解雇日の翌日以降の給料が支払われなくなることは、いずれの解雇も同様ですが、解雇予告手当については若干の差異が生じることがあります。
・不当解雇をされた場合において、給料を回収するには以下の手順で対処していきましょう。
手順1:弁護士に依頼する
手順2:通知書を送付する
手順3:交渉
手順4:労働審判又は訴訟
この記事が解雇された場合の給料について悩んでいる外資系企業の従業員の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日