外資系のガーデンリーブとは?平均期間と早期退職時の給与や退職理由
ガーデンリーブとはどのようなものか知りたいと悩んでいませんか?
人事担当者からガーデンリーブという単語を聞いても、何を交渉すべきか分からないという方も多いでしょう。
ガーデンリーブとは、在籍期間を延長し、その期間の就労を免除したうえで、給与の支給を行うことです。
昨今、外資系企業におけるガーデンリーブは、会社側が退職勧奨をする際に、労働者が応じやすいように、転職の便宜として設けられることが多くなってきました。
しかし、本来的には、一定期間、企業機密に触れられないようにして、競業避止義務を課すことによって、企業秘密を保持することを目的として用いられてきたものです。
ガーデンリーブの平均期間は3か月程度とされることが多いです。
労働者としては、ガーデンリーブ期間中に転職先が見つかることも想定されるため、そのような場合に給与や退職理由をどのように扱うのか予め調整しておきたいところです。
退職時におけるガーデンリーブを交渉するにあたっては、キャリアに不安があることを示したうえで、これを補償してもらえないようであれば退職を検討することは難しい旨を伝えて協議することになります。
ガーデンリーブと特別退職金については、基本的にトレードオフの関係にありますので、メリットデメリットを検討したうえで、どのように割り振るかを検討することになります。
この記事をとおして、退職勧奨をされた際にガーデンリーブについてどのように交渉すればいいのかを知っていただければ幸いです。
今回は、外資系のガーデンリーブとは何かを説明したうえで、平均期間が3か月程度であることや早期退職時の調整としての給与や退職理由の取扱いを解説していきます。
ガーデンリーブについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次(contents)
1章 ガーデンリーブとは?
ガーデンリーブとは、在籍期間を延長し、その期間の就労を免除したうえで、給与の支給を行うことです。
労働者と会社との間で退職の条件として合意することによって定められるものであり、法律などに規定されているわけではありません。
外資系企業などでよく用いられる制度となります。スペルはGarden Leaveであり、直訳すると庭いじり休暇という意味です。
例えば、最終出勤日を1月31日、退職日を3月31日、2月1日~3月31日はガーデンリーブとして、出勤は不要だが、給与は支給すると言ったような定め方がされます。
2章 ガーデンリーブを設ける2つの理由
外資系企業が労働者に対してガーデンリーブを設けることについては、理由があります。
外資系企業としても、本来は、就労していない労働者に対して給与を支払う必要はない以上、理由があってこのような条件をつけるのです。
具体的には、外資系企業がガーデンリーブを設ける理由は以下の2つです。
理由2:最新の機密情報の流出を防ぐため|企業秘密の保持
それでは、これらの理由について順番に説明していきます。
2-1 理由1:労働者のキャリアを守るため|転職の便宜
外資系企業がガーデンリーブを設ける理由の1つ目は、労働者のキャリアを守るためです。
つまり、退職勧奨を行う際に、労働者の転職の便宜を図ることによって、退職に応じてもらいやすくするのです。
例えば、会社から面談室に呼ばれて、あなたの雇用を継続することができないので退職してほしいと言われることがあります。
その際に外資系企業から退職条件などを記載した退職合意書(separation agreement)を交付されるのですが、その合意書の中に、ガーデンリーブ期間が設けられていることがあります。
外資系企業は、最終出社日は1月31日、退職日は3月31日であり、その間の2月1日から3月31日まではガーデンリーブ期間であるため、転職活動をするなりしていただいて構わない等の説明をしてきます。
2-2 理由2:最新の機密情報の流出を防ぐため|企業秘密の保持
外資系企業がガーデンリーブを設ける理由の2つ目は、最新の機密情報の流出を防ぐためです。
つまり、一定期間、最新情報に触れることができないようにして、当該労働者が持っている情報を陳腐化させることで、企業秘密を保持するのです。
これが本来的な意味におけるガーデンリーブですが、この場合には、会社側はガーデンリーブ期間中には転職することができないように競業避止義務を課してきます。
重要情報にアクセスできる一定以上の役職にある者は、入社時に、このような競業避止義務のあるガーデンリーブを設けることにつき予め合意を求められることになります。
外資系投資銀行などで、このような本来的な意味におけるガーデンリーブを目にする機会がよくあります。
3章 ガーデンリーブの平均期間3か月程度
ガーデンリーブの平均期間は3か月程度です。
外資系企業は、最初の提案では0.5か月~2か月程度のガーデンリーブを提案してくる傾向にあります。
しかし、労働者としては、0.5か月~2か月で転職することは不可能であるため、このような条件では納得できないことがほとんどです。
そこで、ガーデンリーブ期間の延長を交渉していくことが多いですが、最終的には3か月程度で落ち着くことが多いです。
特別退職金の支給金額を減らし、ガーデンリーブに全振りするような交渉を行う場合には3ヶ月以上のガーデンリーブを獲得できることもあります。
ただし、それでも6か月程度が限度であり、あまり退職日を先に設定しすぎると会社は難色を示すことになります。
なお、外資系企業によっては、本社からいつまでにヘッドカウントを何人減らすなどの目標を課されている場合があります。
このような目標を課されている場合には、ガーデンリーブ期間を長くすると、目標期限までに削減を達成できないため、延長交渉に応じてもらいにくいことがあります。
4章 ガーデンリーブ期間中の早期退職時の調整|給与や退職理由の取扱い
労働者としては、ガーデンリーブの交渉をする際には早期退職の調整の条項を入れることについて求めておくことが大切です。
ガーデンリーブ期間中に転職先が決まった場合において、残りのガーデンリーブ期間が長期にわたり残っている場合には、無駄な待機期間が生じてしまうことがあるためです。
とくにガーデンリーブ期間が長いほど、早期退職時の調整を合意しておくことが重要となります。
具体的には、退職日前であっても、労働者から申し出ることによって退職できること、その場合の残存期間の給与や退職理由の取扱いを調整することになります。
労働者としては、退職日前に退職をする場合には、失業保険の受給を予定しないことが多いため自己都合とすることを望むことが多く、残存期間分の賃金については特別退職金に上乗せを交渉することになります。
5章 退職時におけるガーデンリーブの交渉方法
退職時におけるガーデンリーブを交渉するにあたっては、理由が必要です。
会社側は、働いていない期間について、労働者に給与を支払うことになるため、必要がなければガーデンリーブを設けることに同意しません。
また、仮にガーデンリーブを設けてもらえる場合でも、会社は可能な限り、その期間を短くしてくる傾向にあります。
そのため、労働者としては、自己に有利な退職条件にする場合には、ガーデンリーブについて交渉を行うことになります。
具体的には、ガーデンリーブの交渉方法は以下の3つです。
交渉方法2:有給の残日数
交渉方法3:特別退職金の一部をガーデンリーブにする
それでは、各交渉方法について順番に説明していきます。
5-1 交渉方法1:キャリア上の不安
ガーデンリーブの交渉の1つ目は、キャリア上の不安です。
転職活動に必要期間に不足していることや入社時から現在までの在籍年数が短いことなどから、退職に応じることができない旨を伝える方法です。
例えば、転職活動をするにしても平均して4か月程度、時期や年齢によっては6か月~8か月程度転職に要する場合もあります。
また、在籍年数が1年に満たないと、転職活動をしても、転職先から厳しい目で見られることになり、オファーされる条件が現在よりも悪いものになりがちです。
そのため、このような観点からキャリア上の補償がされない限りは退職に応じないと交渉することになります。
5-2 交渉方法2:有給の残日数
ガーデンリーブの交渉の2つ目は、有給の残日数です。
ガーデンリーブについては、結局のところは、働かずに給与を支給してもらうことができるという意味において、年次有給休暇と同じです。
例えば、年次有給休暇が10日残っているのであれば、その日数をガーデンリーブに加算するようにと交渉することが考えらえます。
5-3 交渉方法3:特別退職金の一部をガーデンリーブにする
ガーデンリーブの交渉の3つ目は、特別退職金の一部をガーデンリーブにすることです。
特別退職金とガーデンリーブについては、トレードオフの関係にあります。
つまり、外資系企業は、特別退職とガーデンリーブを合計したパッケージについて賃金●か月分などと設定しており、それを特別退職金とガーデンリーブいずれにどの程度割り振るかについては、ある程度柔軟に応じてくることが多いのです。
そのため、特別退職金を1か月分減らす代わりに、ガーデンリーブを1か月分延ばして欲しいなどの交渉を行うことがあります。
なお、特別退職金とガーデンリーブのメリットでデメリットを比較すると以下のとおりです。
特別退職金については、以下の動画でも詳しく解説しています。
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8章 まとめ
以上のとおり、今回は、外資系のガーデンリーブとは何かを説明したうえで、平均期間が3か月程度であることや早期退職時の調整としての給与や退職理由の取扱いを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
“まとめ”
・ガーデンリーブとは、在籍期間を延長し、その期間の就労を免除したうえで、給与の支給を行うことです。
・外資系企業がガーデンリーブを設ける理由は以下の2つです。
理由1:労働者のキャリアを守るため|転職の便宜
理由2:最新の機密情報の流出を防ぐため|企業秘密の保持
・ガーデンリーブの平均期間は3か月程度です。
・労働者としては、ガーデンリーブの交渉をする際には早期退職の調整の条項を入れることについて求めておくことが大切です。
・ガーデンリーブの交渉方法は以下の3つです。
交渉方法1:キャリア上の不安
交渉方法2:有給の残日数
交渉方法3:特別退職金の一部をガーデンリーブにする
この記事が外資系企業のガーデンリーブについて知りたいと考えている方の助けになれば幸いでウs。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日