退職勧奨の録音は違法?退職面談や退職交渉を録音する簡単な方法3つ
退職勧奨を録音していいのか悩んでいませんか?
自分の生活やキャリアを守るためにも、退職勧奨の内容を証拠に残した方がいいのではないかと考える方もいるでしょう。
結論としては、退職勧奨の録音は、違法ではありません。むしろ、録音することを推奨することが多いです。
退職勧奨の録音のメリットとデメリットは以下のとおりです。
退職勧奨を録音する方法は、状況毎に使い分けるべきですが、「机の上に置いておく方法」、「上着のポケットに入れておく方法」、「ペンや腕時計型の物を使う方法」などがあります。
ただし、退職勧奨の録音をする際には、リスクを減らし、証拠として有効に活用できるように注意すべき点がいくつかあります。
また、退職勧奨を証拠化する方法は、録音だけではなく、録音以外の方法が有用なこともあります。
実は、退職勧奨の面談で労働者に有利な発言などがされることも多いのですが、録音しておけばよかったと後悔している労働者を目にすることも少なくありません。
この記事をとおして、多くの外資系従業員の方に退職勧奨の録音について正しい知識を知っていただければ幸いです。
今回は、退職勧奨の録音は違法ではないことを説明したうえで、退職面談や退職交渉を録音する簡単な方法3つを解説していきます。
退職勧奨の録音については、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次(contents)
1章 退職勧奨(退職面談・退職交渉)の録音は違法ではない!
退職勧奨の録音は、違法ではありません。むしろ、録音することを推奨することが多いです。
自分自身が会話の当事者となっているため盗聴とは異なります。会社自身が労働者に対して渡した情報を記録しているにすぎないため、プライバシー侵害の程度が強いとは言えません。
一方で、退職勧奨におけるやり取りについては、労働者の雇用契約上の地位にも関わるものであり、これを記録しておく合理的な理由もあります。
実際、裁判でも、退職勧奨の録音が証拠として提出されることは珍しくなく、問題なく証拠として採用されるのが通常です。
そのため、退職勧奨時の面談を録音したからと言って、その行為が違法であるとはいえないのです。
2章 退職勧奨(退職面談・退職交渉)を録音するメリットとデメリット
退職勧奨の録音については、メリットが多いですが、デメリットもあります。
退職勧奨のメリットとデメリットを整理すると以下のとおりです。
それでは、メリットとデメリットについて、それぞれ順番に説明していきます。
2-1 メリット1:紛争化した際に証拠になる
退職勧奨を録音するメリットの1つ目は、紛争化した際に証拠になることです。
退職勧奨については、その後、紛争化するリスクが潜んでいるためです。
例えば、労働者が退職勧奨に応じない場合には、解雇に至る可能性があり、解雇事由の有無が問題となります。
退職勧奨時の会社側の発言は、法的に整理される前の生の主張となっていることが多く、解雇後に会社から指摘される解雇理由とは矛盾していることがよくあります。
また、退職勧奨時の会社の発言には、ハラスメントとなるような発言も含まれていることもあります。
その他、労働者が意思に反して退職届や退職合意書にサインをしてしまったような場合にも、録音があると取り消しの手掛かりとなるようなこともあります。
2-2 メリット2:退職した際に証拠になる
退職勧奨を録音するメリットの2つ目は、退職した際に証拠になることです。
退職勧奨の後、労働者が退職に応じることになる場合には、退職合意書にサインを行うことになります。
退職合意書では内容が不明確であるような部分について、会社から口頭で説明がされているようなことも珍しくありません。
離職票上の処理やインセンティブの取扱い、RSUの付与など、細かい内容について、後から、説明と異なる取り扱いをされてしまうこともあります。
そのような場合に録音があると会社側に取扱いを直すようにと説得することも容易となります。
2-3 デメリット1:録音が発覚した際に関係が悪化する
退職勧奨を録音するデメリットの1つ目は、録音が発覚した際に関係が悪化することです。
退職勧奨を録音することは違法ではないとしても、録音をしていたことによって、会社側との信頼関係は崩れてしまいます。
今後、上司や人事担当者と気まずくなり、働きにくい環境になってしまうリスクがあります。
ただし、退職勧奨を行われた時点で既に一定程度信頼関係が崩れている傾向にあり、会社側も録音をしていることが多いことには留意が必要です。
2-4 デメリット2:文字に起こすのに労力がかかる
退職勧奨を録音するデメリットの2つ目は、文字に起こすのに労力がかかることです。
裁判の際に録音を証拠として提出するには、録音データと文字に起こした反訳書を提出しなければなりません。
例えば、録音の時間が1時間を超えるような長時間にわたる場合などには、文字に起こすだけで数時間かかることになります。
そのため、録音については、実際に証拠として使う際にも時間やコストがかかることに留意が必要です。
“~退職勧奨時の録音は解雇理由になる?~”
退職勧奨時の録音は、解雇理由にはならないでしょう。
確かに、裁判例には、録音禁止の指示に反して、録音を継続した事案で、この点を考慮して解雇を有効とした事案があります(東京地立川支判平30.3.28労経速2363号9頁[甲社事件])。
しかし、上記の事案は、常にボイスレコーダー所持しているとの報告や苦情が出ており、他の従業員が自由な発言ができず職場環境が悪化する等の実害が生じうるケースです。
退職勧奨の面談に限ってこれを録音したとしても、他の従業員が自由な発言ができず職場環境が悪化するとは言えないでしょう。
そのため、退職勧奨時に録音をしたことを理由に解雇をすることは難しいでしょう。
3章 退職勧奨(退職面談・退職交渉)を録音する簡単な方法3つ
退職勧奨を録音する方法はいくつかありますが、状況に応じて使い分けるといいでしょう。
録音方法を検討する際には、集音性と秘密性を意識するべきです。
具体的には、退職勧奨の録音方法には、以下の3つがあります。
方法2:上着のポケットに入れておく|対面の場合におすすめ
方法3:ペンや腕時計型の物を使う|突然行われる場合におすすめ
それでは、これらの方法について順番に説明していきます。
3-1 方法1:机の上に置いておく|WEB面談の場合におすすめ
WEB面談による退職勧奨の場合には、録音機を机の上に置いておく方法がおすすめです。
最近ではWEB面談により退職勧奨を行われることも増えてきていますが、これについては、机の上に録音機を置いておくことで簡単に録音することができます。
カメラに映らない位置においておけば秘密性も高いですし、机の上に置いておけば集音性も高いです。
3-2 方法2:上着のポケットに入れておく|対面の場合におすすめ
対面による退職勧奨の場合には、録音機を上着のポケットに入れておく方法がおすすめです。
上着のポケットであれば、カバンやズボンのポケットなどに比べると集音性も高いです。
一方で、上着の胸ポケットなどについては、秘密性が高くないこともありますので、注意が必要です。
3-3 方法3:ペンや腕時計型の物を使う|突然行われる場合におすすめ
突然退職勧奨を行われる場合には、ペンや腕時計型物を使う方法がおすすめです。
日常的に身に着けていても違和感がないため、突然の事態にも対応しやすいためです。
例えば、Apple watchなどであれば、突然退職勧奨をされた際にも録音を行いやすいです。
4章 退職勧奨(退職面談・退職交渉)を録音する際の注意点
退職勧奨の録音をする際には、リスクを減らし、証拠として有効に活用できるように注意すべき点がいくつかあります。
せっかく録音をしていただいても、あまりいい証拠となっていないことも珍しくありません。
具体的には、退職勧奨を録音する際には以下の3点に注意すべきです。
注意点2:録音は面談時のみにする
注意点3:事前に集音性に問題ないかテストをする
それでは、これらの注意点について順番に説明していきます。
4-1 注意点1:自分の発言も録音される
退職勧奨を録音する際に注意すべき点の1つ目は、自分の発言も録音されることです。
あなた自身が不利な発言をしている場合には、当然の発言についても録音として証拠とされることになってしまいます。
会社の発言に対して、売り言葉に買い言葉といったかたちで、自分自身も乱暴な発言をして異様な場合には、ハラスメントがあったとの認定にはなりにくい傾向にあります。
また、事実認識に齟齬があるにもかかわらず、会社の主張を認めるような発言をしている場合にも、あなた自身も落ち度を認めていたことの証拠とされてしまうこともあります。
退職勧奨の録音を良い証拠とするためには、自分自身の発言にも細心の注意をする必要があるのです。
4-2 注意点2:録音は面談時のみにする
退職勧奨を録音する際に注意すべき点の2つ目は、録音は面談のみにすることです。
業務時間中も常に録音を行っていると、他の従業員が発言をしづらくなり職場環境が害されてしまういますし、業務上の秘密情報の漏洩のリスクなども高まります。
例えば、日常業務において、会社側から録音をやめるようにと言われているのに、引き続き録音を継続するような態様をすると解雇理由とされてしまうこともあります。
そのため、何から何まで録音するというのは望ましくなく、退職勧奨等の人事面談に限って録音した方がいいでしょう。
4-3 注意点3:事前に集音性に問題ないかテストをする
退職勧奨を録音する際に注意すべき点の3つ目は、事前に集音性に問題ないかテストをすることです。
録音をしたものの、重要な発言が十分に入っていなかったり、聞き取りにくかったりして、結局、証拠としての価値が低くなってしまうことがあります。
そのため、録音機を買ったら、事前に集音性に問題がないか、どのような方法で録音するとどの程度聞き取ることができるのかなどを確認するようにしましょう。
5章 録音以外に退職勧奨(退職面談・退職交渉)を証拠化する方法
退職勧奨を証拠化する方法は録音だけではありません。
録音をし忘れてしまった場合でも証拠化できることがあります。
初回の退職勧奨面談などについては、重要な発言がされる傾向にある一方で、いきなりで録音できなかったということも多いので、是非、録音以外の方法も試みてください。
録音以外に退職勧奨を証拠化する方法としては、例えば、以下の3つがあります。
方法2:自分でメモや日記をつける
方法3:家族や友人にLINEで相談する
それでは、コラらの方法について順番に説明していきます。
5-1 方法1:退職勧奨後にメールを送る
録音以外に退職勧奨を証拠化する方法の1つ目は、退職勧奨後にメールを送ることです。
退職勧奨が行われた後に、退職勧奨で話し合われたことのメモをメールとして、人事担当者に送信することで、話し合った内容を証拠にすることができます。
メールを印刷したり、写真に撮影したりすることによって、簡単に証拠として提出できるというメリットもあります。
5-2 方法2:自分でメモや日記をつける
録音以外に退職勧奨を証拠化する方法の2つ目は、自分でメモや日記をつける方法です。
退職勧奨で話した内容を日記やメモとして記録しておく方法でも、証拠となります。
どの程度、立証に寄与するかは内容次第となりますが、何もないよりはずっといいはずです。
なるべく発言ベースでそのまま記載をして、主観や評価を排除して客観的に記録しておくことが大切です。
5-3 方法3:家族や友人にLINEで相談する
録音以外に退職勧奨を証拠化する方法の3つ目は、家族や友人にLINEで相談する方法です。
退職勧奨を受けたことを家族や友人に相談する際に発言の内容を記載しておくことで証拠になることがあります。
もっとも、紛争になった後にLINEを送ってもあまり意味がないので、面談の直後に送信することが大切となります。
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7章 まとめ
以上のとおり、今回は、退職勧奨の録音は違法ではないことを説明したうえで、退職面談や退職交渉を録音する簡単な方法3つを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
“まとめ”
・退職勧奨の録音は、違法ではありません。むしろ、録音することを推奨することが多いです。
・退職勧奨の録音のメリットとデメリットは以下のとおりです。
・退職勧奨の録音方法には、以下の3つがあります。
方法1:机の上に置いておく|WEB面談の場合におすすめ
方法2:上着のポケットに入れておく|対面の場合におすすめ
方法3:ペンや腕時計型の物を使う|突然行われる場合におすすめ
・退職勧奨を録音する際には以下の3点に注意すべきです。
注意点1:自分の発言も録音される
注意点2:録音は面談時のみにする
注意点3:事前に集音性に問題ないかテストをする
・録音以外に退職勧奨を証拠化する方法としては、例えば、以下の3つがあります。
方法1:退職勧奨後にメールを送る
方法2:自分でメモや日記をつける
方法3:家族や友人にLINEで相談する
この記事が退職勧奨をされて録音をするべき悩んでいる外資系企業の従業員の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日