退職勧奨は違法?違法な退職勧奨をされた場合の簡単な対処法4つ
退職勧奨をされているものの違法ではないかとの悩みを抱えていませんか?
外資系企業で勤務していると誰でも退職勧奨をされる可能性がありますので、決して他人ごとではありません。
退職勧奨自体は、直ちに違法となるわけではありません。
もっとも、自由な退職意思の形成を妨げるに足りる不当な行為ないし言動を行った場合には、違法となる可能性があります。
退職勧奨が違法になるケースとしては、例えば、以下の4つがあります。
ケース2:暴力
ケース3:脅迫
ケース4:嫌がらせ
退職勧奨が違法な場合の慰謝料の相場は、20万円~100万円程度です。
違法な退職勧奨をされた場合についても焦らずに冷静に対処していくことが大切です。
実は、退職勧奨の違法性を争うハードルは高く、認容されても低廉な慰謝料となることが多いため、安易に退職を認めてしまうとリカバリーが困難となってしまうことも珍しくありません。
この記事をとおして、外資系企業で働く労働者の方に退職勧奨について法律上どのように考えられているのかということを知っていただければ幸いです。
今回は、退職勧奨の違法性について説明したうえで、違法な退職勧奨をされた場合の簡単な対処法4つを解説していきます。
この記事を読めば、違法な退職勧奨をされた場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。
退職勧奨が違法となる場合については、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次(contents)
1章 退職勧奨自体は違法ではない
退職勧奨自体は、直ちに違法となるわけではありません。
退職勧奨というのは、あくまでも企業が労働者に退職をお願いするものにすぎず、法的な効力が発生するようなものではないためです。
労働者は、退職勧奨に応じたくないと考えれば、これを自由に拒否することができます。
例えば、労働者によっては、退職勧奨をされてモチベーションが下がってしまったと感じることや働き続ける意欲がなくなってしまったと感じることもあるかもしれません。
しかし、モチベーションが下がってしまったり、働き続ける意欲がなくなってしまったりしても、それによって退職勧奨自体が違法となるわけではないのです。
むしろ、退職勧奨によって労働者自身が働き続けたくないと感じる状況に至ってしまうと、会社の思うつぼになってしまいます。
退職勧奨にどのように向き合っていくかを考えるうえで、企業が退職勧奨を行うこと自体が禁止されているわけではないということを理解しておく必要があります。
2章 退職勧奨が違法となる基準|違法となる4つのケース
退職勧奨は、自由な退職意思の形成を妨げるに足りる不当な行為ないし言動を行った場合には、違法となる可能性があります。
あくまでも労働者の自発的な退職意思を形成するという限度で許容されているに過ぎないためです。
裁判例でも、「自由な退職意思の形成を妨げるに足りる不当な行為ないし言動をすることは許されず、そのようなことがされた退職勧奨行為は、もはや、その限度を超えた違法なものとして不法行為を構成することとなる」と判示されています(東京地判平23年12月28日労経速2133号3頁[日本アイ・ビー・エム事件])。
つまり、退職勧奨自体は直ちに違法となるわけではありませんが、一定の限度を超えたものについては退職強要として違法とされることもあるのです。
例えば、退職勧奨が違法になるケースとしては、以下の4つがあります。
ケース2:暴力
ケース3:脅迫
ケース4:嫌がらせ
それでは、これらのケースについて順番に説明していきます。
2-1 ケース1:侮辱
退職勧奨が違法になるケースの1つ目は、侮辱的な発言を伴うようなケースです。
退職勧奨の際には、その名誉感情を害するような言辞を用いることは許されないとされています。
例えば、労働者に対して、「小学生以下だ」、「頭おかしいんじゃないのか」等の侮辱するような発言をしたような場合には、違法となることがあります。
2-2 ケース2:暴力
退職勧奨が違法になるケースの2つ目は、暴力を伴うようなケースです。
物理的に労働者の自由を妨げるものですし、労働者の身体に危害を加えるものだからです。
例えば、ビンタをしたり、力ずくで椅子に座らせたりと言ったことは許されません。
2-3 ケース3:脅迫
退職勧奨が違法になるケースの3つ目は、脅迫を伴うようなケースです。
退職勧奨の際には、不当な心理的圧力を加えることは許されないとされているためです。
例えば、「サインしないと痛い目にあうぞ」、「サインしないとお前がやってきたことを従業員全員に言いふらすからな」などの発言をした場合には、違法となることがあります。
2-4 ケース4:嫌がらせ
退職勧奨が違法になるケースの4つ目は、嫌がらせを伴うようなケースです。
先ほど説明したように、退職勧奨の際には、不当な心理的圧力を加えることは許されないとされているためです。
例えば、退職を断ったら、「炎天下の中ずっと外で立っているように指示された」、「一人だけ朝5時に出勤して掃除をするように指示された」などの場合には、違法となることがあります。
3章 退職勧奨が違法な場合の慰謝料|20万円~100万円が相場
退職勧奨が違法な場合の慰謝料の相場は、20万円~100万円程度です。
退職勧奨が違法となる場合には、民法上の不法行為として損害賠償請求が認められる可能性があります。
もっとも、違法な退職勧奨が行われたことを立証することは容易ではないため、そもそも慰謝料が認められないという珍しくありません。
また、慰謝料が認められた場合でも、現在の日本の裁判所の傾向では、慰謝料金額が控えめであるため費用倒れになってしまうことも多くなっています。
そのため、退職勧奨をされた場合に慰謝料請求をすればいいと考えて、安易に退職するといった対応は控えた方がいいでしょう。
なお、退職勧奨が原因で労災認定がされたような場合には、慰謝料金額も高額になることがあります。
もっとも、精神疾患の労災認定に関しては業務起因性が中々認められにくい一方で、診断書を提出したことによって休職を命じられ期間満了とともに自動退職処理をされることもるため注意が必要です。
4章 違法な退職勧奨をされた場合の対処法
違法な退職勧奨をされた場合には、焦らずに冷静に対処していくことが大切です。
生活やキャリアを守るためには、リスクや見通しを踏まえて、慎重に対応していくべきだからです。
例えば、違法な退職勧奨をされた場合の対処法としては、以下の4つです。
対処法2:弁護士に相談する
対処法3:退職するつもりがない旨を伝える
対処法4:退職条件の交渉をする
それでは、これらの対処法について順番に説明していきます。
4-1 対処法1:安易に退職合意書にサインしない
まず、違法な退職勧奨をされた場合の対処法の1つ目は、退職合意書に安易に退職合意書にサインしないことです。
一度、退職合意書にサインをしてしまうと容易に撤回することはできません。
また、企業側は退職合意書にサインをさせれば、その時点で目的を達成してしまいますので、それ以降は退職条件の交渉も困難となります。
加えて、先ほど見たように、退職合意書にサインをした後に慰謝料を請求しようとしても、そのハードルは高く、認容された場合の金額も低廉となっています。
そのため、違法な退職勧奨をされても、安易に退職合意書にサインをしないことが大切です。
4-2 対処法2:弁護士に相談する
次に、違法な退職勧奨をされた場合の対処法の2つ目は、弁護士に相談することです。
退職勧奨をされた場合において、その退職勧奨の適法性や拒否した場合のリスク、方針等については、法的な見通しを踏まえて検討する必要があります。
とくに退職勧奨の段階では、想定される企業側のアクションも複数ありますので、それぞれについて適切に分析をしていく必要があります。
そのため、違法な退職勧奨をされた場合には、退職勧奨問題に精通している弁護士に相談することがおすすめです。
4-3 対処法3:退職するつもりがない旨を伝える
次に、違法な退職勧奨をされた場合の対処法の3つ目は、退職するつもりがない旨を伝えることです。
企業側は労働者に対して退職を強要することはできないため、退職するつもりがないと明確に言われた場合には退職勧奨を継続しにくくなります。
そこで、労働者としては、この企業でこれからも働き続けたいと考えていて、退職勧奨がストレスになっている場合には、退職勧奨はやめてほしいと明確に伝えることになります。
4-4 対処法4:退職条件の交渉をする
最後に、違法な退職勧奨をされた場合の対処法の4つ目は、退職条件の交渉をすることです。
退職勧奨について条件次第では退職してもいいと考えている場合には、退職条件の交渉をすることが考えられます。
例えば、生活の補償を確保するべく十分な特別退職金の支払いをしてもらうことが考えられます。
特別退職金については、以下の記事で詳しく解説しています。
また、キャリアを守るためには、相当期間のガーデンリーブを設けてもらうことが考えられます。
ガーデンリーブについては、以下の記事で詳しく解説しています。
5章 外資系企業の退職勧奨対応はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
外資系企業の退職勧奨対応は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
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6章 まとめ
以上のとおり、今回は、退職勧奨の違法性について説明したうえで、違法な退職勧奨をされた場合の簡単な対処法4つを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
“まとめ”
・退職勧奨自体は、直ちに違法となるわけではありません。
・退職勧奨が違法になるケースとしては、以下の4つがあります。
ケース1:侮辱
ケース2:暴力
ケース3:脅迫
ケース4:嫌がらせ
・退職勧奨が違法な場合の慰謝料の相場は、20万円~100万円程度です。
・違法な退職勧奨をされた場合の対処法としては、以下の4つです。
対処法1:退職合意書にサインしない
対処法2:弁護士に相談する
対処法3:退職するつもりがない旨を伝える
対処法4:退職条件の交渉をする
この記事が違法な退職勧奨に悩んでいる外資系企業の労働者の方の助けになれば幸いです
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日