自主退職を促されたら?会社が促す理由4つと違法性や簡単な対処法

外資系企業から自主退職を促されてしまい困っていませんか?
自分から退職するように言われてしまうと、モチベーションが下がってしまいますし、生活やキャリアも心配ですよね。
自主退職を促されたら、拒否することができます。
自主退職を促すこと自体は違法ではありませんが、その方法が労働者の自由な意思を抑圧し退職を強制するものである場合には違法となることがあります。
外資系企業が労働者に自主退職を促す理由としては、いくつかの傾向があります。
自主退職を促された場合、「何ももらえない」と思い込んでしまう方もいますが、条件交渉次第でさまざまなお金を受け取れる可能性があります。
もし、自主退職を促されたとしても、自分の生活やキャリアを守るために、焦らず、かつ、冷静に対処していくようにしましょう。
実は、外資系企業から自主退職を促されているとの相談は後を絶ちませんが、もっと早く相談していただきたかったと悔しい思いをすることが少なくありません。
自主退職を促された場合には、どのように対応していくかによって結果は大きく変わってくるためです。
この記事をとおして、外資系企業で働いている多くの方に自主退職を促された場合に是非知っておいていただきたい知識やノウハウを惜しみなくお伝えしていくことができれば幸いです。
今回は、自主退職を促されたらどうすればいいのかについて、会社が促す理由4つと違法性や簡単な対処法を解説していきます。
この記事を読めば、外資系企業から自主退職を促された場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次(contents)
1章 自主退職を促されたら拒否できる
自主退職を促されたら、拒否することができます。
自主退職を促すことは、法律上、退職勧奨(たいしょくかんしょう)と呼びます。
退職勧奨は、あくまでも会社からのお願いにすぎませんので、応じるかどうかは労働者の自由なのです。
例えば、外資系企業で、「今後のキャリアを考えて別の道に進んだほうがいいのでは」とやんわりと退職を促されたとしても、その場でYESと答える必要はありません。
仮に「退職届を書いてほしい」と言われた場合でも、その場で署名・提出する義務は一切なく、持ち帰って検討することができます。
自主退職を促されても、それに応じるかどうかは完全にあなたの判断なので、まずは断ることができるということを知っておくことが大切です。
2章 自主退職を促すのは違法?
自主退職を促すこと自体は違法ではありません。
退職勧奨自体を禁止する法律はないためです。実務上も、退職勧奨はよく行われています。
ただし、その方法が労働者の自由な意思を抑圧し退職を強制するものである場合には違法となることがあります。
裁判例は、退職勧奨に際して、自由な退職意思の形成を妨げるに足りる不当な行為ないし言動をすることは許されないとしているためです。
(参照:東京地判平成23年12月28日労経速2133号3頁[日本アイ・ビー・エム事件])
例えば、会社が労働者に対して自主退職を促す際に、不当な心理的圧力を加えたり、名誉感情を不当に害するような言辞を用いたりする場合は、違法となる可能性があります。
会社からの「退職の促し」が、単なる提案の域を超えて精神的な圧力や脅しに近い形になっている場合には、法的に問題となります。
もし退職の話が続いたり、言い方に強引さを感じたりする場合は、録音や記録を残すとともに、早めに弁護士に相談して、違法な退職強要に対抗する準備をしておきましょう。
3章 自主退職を促される理由4つ
外資系企業が労働者に自主退職を促す理由としては、いくつかの傾向があります。
自主退職を促される理由ごとに対応のポイントも変わってきますので、どのような理由で退職勧奨をされることが多いのかを知っておくことは有用です。
例えば、外資系企業から自主退職を促される理由としては、以下の4つがあります。
理由2:ポジションクローズ
理由3:ハラスメント
理由4:リストラ
それでは、これらの理由について順番に説明していきます。
3-1 理由1:パフォーマンス不足
外資系企業で自主退職を促される理由の1つ目は、パフォーマンス不足です。
目標未達が続くと、「結果が出ていない」という理由で自主退職を促されることがあります。
多くの外資系企業では、PIP(Performance Improvement Plan)=パフォーマンス改善プログラムが導入されています。
これは、一定期間内に具体的な数値目標を達成できなければ、改善の見込みなしと判断され、退職の打診につながる制度的プロセスです。
例えば、「3ヶ月以内に営業契約を〇件取る」などの目標が課され、達成できないと「今後も厳しい」と告げられ、退職を促されるケースが多くあります。
PIPに入った段階で事実上の「退職準備期間」とされることもあるため、早期に弁護士相談や転職活動を開始しておくのが望ましいです。
外資系企業のPIPについては、以下の記事で詳しく解説しています。
3-2 理由2:ポジションクローズ
外資系企業で自主退職を促される理由の2つ目は、ポジションクローズです。
業務再編などにより自分のポジションがなくなったことを理由に、退職を促されるケースがあります。
本社主導の組織再編や業務の外注化などにより、部門そのものが閉鎖されたり、役割が消滅されたりすることがあります。
この場合、代替ポストを用意せずに「会社として雇用継続が困難」として、自主退職という選択を勧めてくることがあります。
例えば、日本支社のカスタマーサポート部門がアジア本部に統合され、所属していた社員に対し「他にポストがない」と退職を求めるようなケースです。
ポジションがなくなっても、自動的に退職しなければならないわけではありません。希望すれば、配置転換や退職条件の交渉もできる可能性があります。
ポジションクローズについては、以下の記事で詳しく解説しています。
3-3 理由3:ハラスメント
外資系企業で自主退職を促される理由の3つ目は、ハラスメントに関与したとされる場合です。
会社がセクハラやパワハラの事案を穏便に処理するために、当事者に対し退職を勧めることがあります。
ハラスメント加害者に対しては、懲戒処分よりも自主退職による円満解決を優先することがあります。
一方で、被害者側にも、「これ以上の勤務継続は困難」と判断された場合にも、同様に退職を提案されることがあります。
例えば、部下との口論が「パワハラ」と問題視され、事実関係の調査が不明瞭なまま「今後働きづらくなる」と退職を勧められるケースなどです。
ハラスメントが原因で退職を迫られた場合は、自分の立場と事実関係を整理し、安易にサインしないことが重要です。
ハラスメントを理由とする解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
3-4 理由4:リストラ
外資系企業で自主退職を促される理由の4つ目は、リストラ(人員削減)です。
業績不振や構造改革に伴い、対象者に「自主退職という名の整理解雇」を迫るケースがあります。
企業にとって法的リスクの高い解雇を避けるために、自主退職という形での合意退職を目指す傾向があります。
とくにグローバルレベルでの方針転換によるリストラでは、現場の判断なく、突然の人員整理が行われることも珍しくありません。
例えば、売上が低迷している国の支社に対して「人員30%削減」という指示が本社から出され、順次個別に退職の打診がされるケースなどです。
リストラを理由に退職を求められた場合は、退職金の上乗せや会社都合退職の扱いなど、条件面の交渉が非常に重要になります。
外資系企業をリストラされたらどうすればいいのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
4章 自主退職を促されたらもらえる可能性のあるお金
自主退職を促された場合、「何ももらえない」と思い込んでしまう方もいますが、条件交渉次第でさまざまなお金を受け取れる可能性があります。
とくに外資系企業では、日本企業よりも柔軟な支払い対応がされるケースもあります。
例えば、自主退職を促されたらもらえる可能性のあるお金を一部紹介すると以下の4つがあります。
お金2:ガーデンリーブ期間中の給与
お金3:有給休暇の残日数相当の手当
お金4:通常の退職金
それでは、これらのお金について順番に説明していきます。
4-1 お金1:特別退職金(severance pay)
退職合意の条件として、特別に上乗せされる退職金(severance pay)が支給されることがあります。
特別退職金とは、労働者が自主的に退職に応じることの対価として、通常の退職金とは別に支給される退職金のことです。
退職金制度がない会社でも支給される可能性があり、退職金制度がある会社ではこれに上乗せして支給されることがあります。
例えば、「基本給の3か月分を一時金として支給」、「在籍年数×1か月分をseverance payとして支給」といった提示がされることがあります。
特別退職金は交渉によって増減することがあるため、退職に合意する前に文書で金額・支払時期・税務取扱を明記してもらうことが重要です。
特別退職金については、以下の記事で詳しく解説しています。
4-2 お金2:ガーデンリーブ期間中の給与
最終出社日から退職日までの間に一定期間の猶予をもたせ、その期間の就労を免除したうえで、賃金を支給することがあります。
このような期間のことをガーデンリーブといいます。
キャリアを維持したうえで、生活の不安なく、転職活動に集中できるため、労働者にとってメリットがあります。
例えば、「退職日までの2か月間は出社義務なし。ただしその間の給与と福利厚生は全額支給される」といったような場合です。
ガーデンリーブについては、以下の記事で詳しく解説しています。
4-3 お金3:有給休暇の残日数相当の手当
消化しきれなかった有給休暇については、最終的に金銭精算(買い取り)される場合があります。
労働基準法上、有給休暇の買い取りは原則禁止ですが、退職時に限っては例外として認められています。
外資系企業では、慣習的にこのような扱いがされているケースも多いです。
例えば、有給が10日残っていれば、「10日分の基本給日割り額」が上乗せされるといったケースです。
退職時の有給の買い取りについては、以下の記事で詳しく解説しています。
4-4 お金4:通常の退職金
会社に退職金規程がある場合、通常の退職金が支給されることがあります。
退職金は法的な義務ではありませんが、就業規則や退職金規程に基づいて制度化されている場合には、所定の条件を満たせば受け取る権利があるとされます。
例えば、「勤続年数3年以上で退職する社員には、月給の2か月分を支給」などと明文化されている会社もあります。
退職金制度の有無、支給条件、自己都合と会社都合での取扱いの差などを事前に確認し、合意書に記載されているかを必ずチェックしましょう。
通常の退職金があることに気づかず退職合意書にサインをしてしまうと、免責条項などにより請求できなくなってしまう可能性もあります。
外資系企業の退職金制度については、以下の記事で詳しく解説しています。
5章 会社から自主退職を促された場合の対処法
もし、自主退職を促されたとしても、自分の生活やキャリアを守るために、焦らず、かつ、冷静に対処していくようにしましょう。
外資系企業は自主退職を促すことに慣れており、言われるがまま退職に応じてしまうと、会社の思うツボになってしまいます。
具体的には、会社から自主退職を促された場合には、以下の手順で対処していきましょう。
手順2:弁護士に相談する
手順3:交渉する
手順4:労働審判又は訴訟を提起する
5-1 手順1:サインせずに持ち帰る
会社から自主退職を促された場合の対処手順の1つ目は、サインせずに持ち帰ることです。
退職の同意は一度書面で出してしまうと、撤回が非常に難しくなるからです。
また、一度、退職合意書にサインをしてしまうと、会社はその時点で目的を達成してしまいますので、それ以上の交渉にも応じなくなります。
例えば、「退職合意書にサインしてくれれば、スムーズに終わる」「明日までに出してくれ」と言われても、「弁護士に相談したいので、一度持ち帰ります」とだけ回答しましょう。
書面へのサインは、後戻りできない最終判断です。急かされても、一度持ち帰って冷静に考えることをおすすめします。
5-2 手順2:弁護士に相談する
会社から自主退職を促された場合の対処手順の2つ目は、弁護士に相談することです。
自主退職を促されたら、外資系企業の労働問題に注力していて、パッケージ交渉の実績のある弁護士に相談しましょう。
自主退職を促された場合に上手く解決するコツは、法的な見通しを分析したうえで、リスクや意向を踏まえた適切な方針を策定し、一貫した対応を行っていくことです。
自主退職を促された場合には、あなたの一つ一つの態様が結果に大きく影響してくるため、早い段階で相談をしておくことがおすすめです。
5-3 手順3:交渉する
会社から自主退職を促された場合の対処手順の3つ目は、交渉することです。
退職に応じてほしいというのは会社の希望です。一方的に提示された条件をそのまま受け入れる必要はありません。
話し合いにより折り合いをつけることができるかどうか協議してみるといいでしょう。
無事に話し合いがまとまった場合には、合意内容を明確にするため、合意書にすることになります。
ただし、会社は労働者に一方的に不利な条項を入れてくることが少なくありませんので、内容について慎重に精査しましょう。
5-4 手順4:労働審判又は訴訟を提起する
会社から自主退職を促された場合の対処手順の4つ目は、労働審判・訴訟を提起することです。
話し合いによる解決が難しく、解雇を強行されるなど法的なトラブルとなったら、労働審判や訴訟などの裁判所を用いた解決を検討します。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には労働審判委員会が審判を下します。迅速、かつ、適正に解決することが期待できます。
労働審判については、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
不当解雇の訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。
6章 自主退職を促された場合によくある疑問4つ
外資系企業から自主退職を促された場合によくある疑問としては、以下の4つがあります。
Q2:自主退職を促されたらパワハラ?
Q3:自主退職を促されたのがパートの場合は?
Q4:自主退職させられたら?
これらの疑問について順番に解消していきましょう。
6-1 Q1:自主退職を促された場合の失業保険は?
A:自主退職を促された場合には、原則として会社都合退職として失業保険を受給できます。
退職勧奨による離職は、会社都合退職として処理されることになるためです。
会社都合退職の場合には、自己都合退職の場合に比べて、失業保険の受給要件や給付日数について有利に取り扱われることになります。
6-2 Q2:自主退職を促されたらパワハラ?
A:自主退職を促されても直ちにはパワハラには当たりませんが、態様によってはパワハラになることがあります。
人格を否定する発言がされたり、無視されたり、意思に反して仕事を与えられなかったりした場合には、精神的な攻撃、人間関係からの切り離しとしてパワハラになることがあります。
6-3 Q3:自主退職を促されたのがパートの場合は?
A:自主退職を促されたのがパートの場合でも、正社員と同様です。
退職勧奨に応じたくない場合には、自由に拒否することができます。
6-4 Q4:自主退職させられたら?
A:自主退職をさせられたら、撤回や取り消しをできることがあります。
ただし、撤回や取り消しが認められるには容易ではないため、退職合意書には安易にサインしないようにしましょう。
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8章 まとめ
以上のとおり、今回は、自主退職を促されたらどうすればいいのかについて、会社が促す理由4つと違法性や簡単な対処法を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
“まとめ”
・自主退職を促されたら、拒否することができます。
・自主退職を促すこと自体は違法ではありません。ただし、その方法が労働者の自由な意思を抑圧し退職を強制するものである場合には違法となることがあります。
・外資系企業から自主退職を促される理由としては、以下の4つがあります。
理由1:パフォーマンス不足
理由2:ポジションクローズ
理由3:ハラスメント
理由4:リストラ
・自主退職を促されたらもらえる可能性のあるお金を一部紹介すると以下の4つがあります。
・会社から自主退職を促された場合には、以下の手順で対処していきましょう。
手順1:サインせずに持ち帰る
手順2:弁護士に相談する
手順3:交渉する
手順4:労働審判又は訴訟を提起する
この記事が外資系企業から自主退職を促されて悩んでいる労働者の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日