外資系のクビは労働基準法違反?クビになる人の特徴3つとその後の対処法
外資系企業からクビ宣告をされて困っていませんか?
次の就職先が決まっていないのにクビといわれると困ってしまいますよね。
まず知っておいていただきたいことは、外資系企業であっても、容易には労働者をクビにすることはできないということです。
なぜなら、外資系企業であっても、日本で事業を営む以上は、労働基準法や労働契約法の規律を受けるためです。
もっとも、外資系企業では、法律ではクビにすることができない場合であっても、退職届を記載するように申し向けてきたり、働き続ける選択肢はないと追い詰めてきたりすることがよくあります。
十分に知識がないと、会社の言っていることを鵜吞みにしてしまい、今後の生活の目途もたっていない状況で退職届にサインをしてしまうことになるのです。
実際、既に退職届を記載してしまったが納得がいかないので助けてほしいという相談が後を絶ちません。
しかし、一度、退職届を記載してしまうと、クビの理由が不当であっても、あなたの正当な権利を確保することは非常に難しくなります。
退職届を記載した後では、特別退職金の交渉は困難ですし、会社都合退職にしてほしいといっても聞いてもらえないこともあります。
そのため、あなたがクビを宣告された場合に少しでも不満がある場合には、退職届にサインしたり、面談で退職に応じると安易に回答したりせず、「弁護士に相談したいのですぐには回答できません」とだけ答えてください。
この記事では、あなたが外資系企業からクビを宣告された場合にどのように対処するべきなのかということを誰でもわかりやすいように説明できればと思います。
今回は、外資系企業におけるクビの考え方を説明したうえで、労働基準法等の適用関係と正しい対処手順について解説していきます。
この記事を読めば外資系企業からクビを言い渡された場合にどのように対処すればいいかがよくわかるはずです。
解雇された場合に「やるべきこと」と「やてはいけないこと」は以下の動画でも解説しています。
目次(contents)
1章 外資系企業はクビになりやすい?|日系企業との違い
外資系企業は、日系企業に比べて、雇用の流動が激しい傾向にあります。
つまり、入社してから退職するまでのサイクルが日系企業に比べて短いのです。
これは、外資系企業と日系企業における雇用に関する考え方の違いから生じる差異です。
日系企業では、終身雇用制度のもと定年退職まで働くことを前提に、ポジションを限定せずに採用し、指導・教育していく傾向にあります。
外資系企業では、企業が抱えている特定の課題を解決することを目的として、ポジション単位で採用し、即戦力を求める傾向にあります。
そのため、外資系企業では、ポジションがなくなったり、即戦力にならなかったりすれば、クビを宣告されることになります。
2章 外資系企業をクビになる人の特徴3つ
外資系企業をクビになる人には、いくつかの特徴があります。
私は、これまで外資系企業からクビを宣告された多くの方からの相談を受けてきました。
その経験から、外資系企業をクビになる人の特徴を3つ挙げると以下のとおりとなります。
特徴1:給料が高く定年が近い
特徴2:上司との折り合いが悪い
特徴3:パフォーマンスが悪い
それでは各特長について順番に説明していきます。
2-1 特徴1:給料が高く定年が近い
外資系企業をクビになる人の特徴の1つ目は、給料高く定年が近いことです。
外資系企業では人件費の削減を目的として、一定数の従業員をクビにしようとすることがあります。
そのような場合に対象とされやすいのが「給料が高く定年が近い方」です。
例えば、55~58歳(年収1000万~2000万円)で残り数年間この会社で働き続けるつもりでいたという方などが選ばれることが多いです。
2-2 特徴2:上司との折り合いが悪い
外資系企業をクビになる人の特徴の2つ目は、上司との折り合いが悪いことです。
外国本社や上長から目をつけられてしまったというようなことがよくあります。
外資系企業では、外国本社の意向が強く、外国本社がクビにすると決めた場合には、それが日本法人の意向となることになります。
例えば、外国本社の方針に異を唱えたり、上長に意見を述べたりしたことによって、関係が悪化し、本社での評価が悪くなり、面談を繰り返され、退職に追い込まれるといったことになります。
2-3 特徴3:パフォーマンスが悪い
外資系企業をクビになる人の特徴の3つ目は、パフォーマンスが悪いことです。
会社において、定期考査においてパフォーマンスが下位数パーセントに入った場合、一番低い評価(E評価等)を連続2回とった場合などには、人員整理の対象とするといったルールがあることがあります。
例えば、パフォーマンスが悪いと判断されると、頻繁にワンオンワンミーティングを組まれ、最終的にはPIPを行われ達成できないと、クビを宣告されます。
3章 外資系企業のクビにも労働基準法等は適用される!
外資系企業のクビについても、日本で働く労働者をクビにする以上は、労働基準法や労働契約法の解雇権濫用法理が適用されることになります。
なぜなら、法の適用に関する通則法では、労働契約については、原則として労務を提供すべき地の方が適用されると規定されているためです。
万が一、入社時に他の国の法律が適用されると合意していた場合であっても、労務を提供すべき地の強行規定を適用すべき旨の意思表示をすれば、当該規定も適用されることになります。
法の適用に関する通則法第12条(労働契約の特例)
1 労働契約の成立及び効力について第七条又は第九条の規定による選択又は変更により適用すべき法が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法以外の法である場合であっても、労働者が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を使用者に対し表示したときは、当該労働契約の成立及び効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行規定をも適用する。
2 前項の規定の適用に当たっては、当該労働契約において労務を提供すべき地の法(その労務を提供すべき地を特定することができない場合にあっては、当該労働者を雇い入れた事業所の所在地の法。次項において同じ。)を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する。
3 労働契約の成立及び効力について第七条の規定による選択がないときは、当該労働契約の成立及び効力については、第八条第二項の規定にかかわらず、当該労働契約において労務を提供すべき地の法を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する。
つまり、外資系企業では、クビを宣告されることが多い傾向にありますが、日系企業に比べて解雇が有効になりやすいわけではないのです。
例えば、給料が高く定年が近いだけでは、当然解雇は有効になりません。他にも、会社の経営が悪化していて人件費を削減する必要性が高いのか、クビにする前に希望退職を募ったのか、説明会等で資料を配布しながら経営状態を詳しく説明したか等が考慮されます。
また、上司との折り合いが悪いだけでは、当然解雇は有効になりません。業務を拒否したり、暴言を吐いたり、過度に反抗的な態度をとり、注意指導しても改善が見られないような事由が必要となります。
加えて、パフォーマンスが悪いことについては、事情によっては解雇が有効になる可能性もあります。しかし、客観的に合理的な理由が必要となるので、会社が無理な期待をしていないか、他の従業員と比べて本当にパフォーマンスが悪いのか、パフォーマンスが悪いのは従業員に問題があるのか、雇用を継続できないほどにパフォーマンスが悪いのか等が考慮されます。
そのため、外資系企業だからといって、クビを宣告されても、それを受け入れなければならない理由は全くないのです。
4章 外資系企業をクビになったその後|退職届には簡単にサインしない!
外資系企業からクビを宣告された場合には、その後の対処が重要となります。
正しい手順で交渉すれば再就職までの間生活するための十分な補償を獲得できる可能性があります。
他方で、交渉手順を誤ってしまうと、何らの補償もなく、職を失うことになりかねません。
具体的には、外資企業からクビを宣告されたことに不満がある場合には、以下の手順で対処していくのがおすすめです。
手順1:退職届は記載せずに一度持ち帰る
手順2:撤回と業務指示を求める通知書を送る
手順3:交渉
手順4:労働審判又は訴訟
それでは、各手順について順番に説明していきます。
4-1 手順1:退職届は記載せずに一度持ち帰る
外資系企業からクビを宣告された場合の対処手順の1つ目は、退職届を記載せずに一度持ち帰ることです。
会社は、クビを宣告する際に、併せて自分から退職届を記載するようにと申し向けてくるのが通常です。
労働者自身から退職届を取得すれば、解雇ではなく自主退職扱いとなるためです。
仮に解雇の条件が満たされていなかったとしても、後に労働者が不当解雇であるとして争うことが難しくなります。
例えば、会社は、あなたの経歴に傷がつかずに済む、この場で退職届を記載すれば1か月分の補償金を払うなどと言って、面談の場で退職届に署名押印するように求めてきます。
そして、一度、労働者が退職届に署名押印してしまうと、会社は目的を達成してしまいますので、その後の退職条件の交渉はほぼ不可能となってしまいます。
そのため、少しでも、クビを宣告されたことに不満がある場合には、その場では署名押印せずに、専門家に相談してから決めたいとだけ述べて持ち帰るようにしましょう。
退職勧奨された場合のNG行動と正しい対処法は、以下の動画でも詳しく解説しています。
4-2 手順2:撤回と業務指示を求める通知書を送る
外資系企業からクビを宣告された場合の対処手順の2つ目は、撤回と業務指示を求める通知書を送ることです。
クビを宣告された場合には、出勤しても仕事が与えられない状況となってしまいます。
仮に解雇が不当な場合であっても、あなたが働く意思示さないでいると、就労の意思がなかったことを理由に退職に黙示的に合意していたとされてしまったり、賃金の請求は認められないとされたりすることがあります。
そのため、交渉に入る前提として、あなたが解雇に不満をもっており、働く意思があることを証拠として残すために、解雇撤回と業務指示を求める通知書を送付する必要があります。
4-3 手順3:交渉
外資系企業からクビを宣告された場合の対処手順の3つ目は、交渉を行うことです。
会社からクビを宣告され、これに対してあなたは解雇の撤回と業務指示を求める旨を送付すると、双方の主張が明確になってきます。
例えば、会社から話し合いによる解決の打診があり、折り合いがつくようであれば示談で解決することとなります。
ただし、交渉の際の発言は、とくに注意するべきです。
あなたが退職を認めるような発言をしてしまうと、不利な事実として残ってしまいますし、納得できる金額が提案されていない段階で退職日や退職理由を協議してしまうと退職自体には納得していたなどと言われることになります。
そのため、交渉する際には細心の注意を払って発言していくことになります。
4-4 手順4:労働審判又は訴訟
外資系企業からクビを宣告された場合の対処手順の4つ目は、労働審判又は訴訟を行うことです。
話し合いによる解決が難しい場合には、裁判所を使った解決を検討することになります。
労働審判というのは、全3回までの期日で、迅速に話し合いによる解決を目指す手続きです。平均審理期間は3カ月程度で、裁判所の心証に基づき話し合いを行うため実効性も高い制度となっております。
労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟というのは、判決の獲得を目指して主張立証を尽くしていく手続きであり、平均審理期間は申立から1年程度となります。
5章 外資系企業をクビになった場合の特別退職金相場|賃金3か月分~1年半分程度
外資系企業をクビになった場合において、その解雇の有効性を争っている中で、退職条件の交渉が行われることがあります。
なぜなら、解雇が不当である場合において、労働者が退職したくないと考えている場合には、労働者がその会社を辞める理由はありません。
それにもかかわらず、会社側が退職を求めるということであれば、労働者が納得する条件を提案する必要があるためです。
その際に提案されるのが特別退職金(パッケージ)です。通常の退職金とは異なるので、そのような制度が会社に存在しない場合でも支給の提案がされることがあります。
ただし、通常の事案では、解雇が有効か否かというのは裁判をしてみないと確定的なことはわからず、会社側のみならず、労働者側も一定のリスクを負っていることになります。
また、労働者も状況によっては、その会社で積極的に働きたいとまでは考えておらず、生活を補償してもらえるのであれば、退職したいとの意向の場合もあります。
そのため、特別退職金の金額は、必ずしも労働者の言い値で決まるわけではなく、上記の事情を踏まえた交渉力の結果により決まることになります。
具体的には、外資系企業をクビになった場合において、退職前提の和解をする場合における特別退職金の相場は、賃金の3か月分から1年6か月分程度が相場となります。
外資系企業における退職勧奨のパッケージについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
6章 外資系企業クビになった場合はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
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7章 まとめ
以上のとおり、今回は、外資系企業におけるクビの考え方を説明したうえで、労働基準法等の適用関係と正しい対処手順について解説しました。
最後にこの記事の内容を簡単にまとめておきます。
・外資系企業では、日系企業に比べて雇用の流動が激しく、ポジションがなくなったり、即戦力にならなかったりすれば、クビを宣告されることになります。
・外資系企業をクビになる人の特徴を3つ挙げると以下のとおりとなります。
特徴1:給料が高く定年が近い
特徴2:上司との折り合いが悪い
特徴3:パフォーマンスが悪い
・外資系企業のクビについても、日本で働く労働者をクビにする以上は、労働基準法や労働契約法の解雇権濫用法理が適用されることになります。
・外資企業からクビを宣告されたことに不満がある場合には、以下の手順で対処していくのがおすすめです。
手順1:退職届は記載せずに一度持ち帰る
手順2:撤回と業務指示を求める通知書を送る
手順3:交渉
手順4:労働審判又は訴訟
・外資系企業をクビになった場合において、退職前提の和解をする場合における特別退職金の相場は、賃金の3か月分から1年6か月分程度が相場となります。
この記事が外資系企業からクビを宣告されてしまい悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日