外資系企業の残業は多い?外資系企業が残業代を支払わない言い分5つ
外資系企業における残業が多いことに悩んでいませんか?
基本給が高くても、残業代が支払われなければ、時給に換算した場合の賃金が低廉となってしまうこともありますよね。
外資系企業であっても、人員不足や時差のある海外との折衝により、残業が多いことは珍しくありません。
しかし、成果主義の外資系企業では残業が多いことは評価されない傾向にあり、残業時間を正確に申告しづらいと感じる方も多いでしょう。
実は、外資系企業で働く従業員には、正確な残業時間を申告しても、どうせ残業代を支払ってもらえないので意味がないとして、毎回所定時刻で勤怠記録を打刻している人も少なくありません。
もっとも、外資系企業であっても、残業をした従業員に対して、残業代を支払わなければいけないのは、日本の企業と同じです。
外資系企業は、「マネージャー職だから」、「年俸制だから」などの言い分で、残業代の支払いを拒否することがありますが、そのような言い分は法的には成り立たないことが非常に多いのです。
もしも、あなたが外資系企業における残業に不満を感じているのであれば、残業代を請求していくことを検討してみましょう。
在籍期間中に残業代を請求することに抵抗があるような場合には、在籍中に証拠を集めておき退職後に残業代を請求することがおすすめです。
この記事をとおして、外資系企業で働く労働者の方であっても、残業代を請求することを知っていただければ幸いです。
今回は、外資系企業の残業は多いかを説明したうえで、外資系企業が残業代を支払わない言い分や残業代の請求手順を解説していきます。
この記事を読めば、外資系企業における残業の悩みが解決するはずです。
外資系の残業代については、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次(contents)
1章 外資系企業の残業は多い?
外資系企業であっても、残業が多いことは珍しくありません。
人員不足や時差のある海外との折衝により、残業が必要となることがあります。
例えば、世界的にはある程度の規模のある企業であっても、日本法人の人員は数人であることもあります。
大きなプロジェクトの前などには、どうしても残業が発生してしまうこともあります。
しかも、人員が不足していて通常行業務が回っていないにもかかわらず、参加しなければいけないミーティングが多かったり、研修プログラムを視聴することを義務付けられたりすることもあります。
また、海外とのミーティングを行う際には、時差により深夜にならざるを得ないこともあります。
このように外資系企業だからと言って残業がないというわけではなく、むしろ長時間の残業に苦しんでいる方もいるのです。
2章 外資系企業では残業は評価されない
外資系企業では、残業は評価されない傾向にあります。
成果主義であり、同様の結果を達成するのであれば少ない人件費により実現することを求めるためです。
日系企業では遅くまで仕事を頑張っていることが評価されるようなことはありますが、外資系企業ではむしろ能力不足の烙印を押されかねません。
例えば、残業時間が長いと、上司から残業時間が長すぎると指摘されたり、労働時間の申告は本当に正しいのかといった指摘をされたりすることがあります。
会社からパフォーマンスに疑問をもたれるとPIPや退職勧奨の対象になってしまうこともあります。
そのため、外資系企業で働く従業員には、正確な残業時間を申告しても、どうせ残業代を支払ってもらえないので意味がないとして、毎回所定時刻で勤怠記録を打刻している人も少なくありません。
3章 外資系企業も残業代の支払義務がある!
外資系企業であっても、残業をした従業員に対して、残業代を支払わなければいけないのは、日本の企業と同じです。
労働基準法では、残業をした労働者に対しては、残業代の支払いをしなければならないと規定されているためです。
具体的には、1日8時間・週40時間を超えて労働した場合、週1日の法定休日に労働した場合、午後10時から午前5時の深夜に労働した場合には、残業代の支払いが必要とされています。
外資系企業でも、日本でビジネスを行い、従業員を雇用する以上は、日本の労働基準法を守らなければなりません。
そのため、外資系企業にも残業代の支払い義務があるのです。
4章 外資系企業が残業代を支払わない言い分5つ
外資系企業は、残業代を支払わないことについて何らかの言い分を述べてきます。
しかし、そのような言い分は法的には成り立たないことが非常に多いのです。
例えば、外資系企業が残業代を支払わない言い分として以下の5つを挙げてくることがあります。
言い分2:年俸制なので残業代を支払わないとの言い分
言い分3:裁量労働制なので残業は発生していないとの言い分
言い分4:リモートワークなので残業を把握していないとの言い分
言い分5:Basicsalaryに固定残業代が含まれているとの言い分
それでは、各言い分について順番に説明していきます。
4-1 言い分1:マネージャー職なので管理監督者との言い分
外資系企業が残業代を支払わない言い分の1つ目は、マネージャー職なので管理監督者との言い分です。
労働基準法上、管理監督者には残業代(時間外残業代・休日残業代)を支払う必要はないとされています。
これを理由に外資系企業は、多くの従業員にマネージャー等の名ばかりの役職を付けて、残業代を支給しない理由としてきます。
しかし、管理職であれば、誰でも法律上の管理監督者に当たるわけではなく、実はこれに該当するケースはとても限られた場合です。
管理職にも残業代が出るかを判断する基準は以下の3つです。
基準2:労働時間の裁量
基準3:対価の正当性
管理監督者性について判断した裁判例はたくさんありますが、肯定した例は多くありません。
管理監督者については、以下の動画でも詳しく解説しています。
4-2 言い分2:年俸制なので残業代を支払わないとの言い分
外資系企業が残業代を支払わない言い分の2つ目は、年俸制なので残業代を支払わないとの言い分です。
しかし、年俸制が採用されていたとしても、残業代の支払い拒む理由にはなりません。
例えば、裁判例でも、年俸制が適用される者に時間外手当は支給しないとの就業規則については無効とされています(大阪地判平14.10.25労判844号79頁[システムワークス事件])。
4-3 言い分3:裁量労働制なので残業は発生していないとの言い分
外資系企業が残業代を支払わない言い分の3つ目は、裁量労働制なので残業は発生していないとの言い分です。
裁量労働制とは、一定の業種の方について、実際の労働時間数に関わらず一定の労働時間数だけ労働したものとみなす制度です。
例えば、8時間労働時間とみなすとしていた場合には、実際に働いた時間が12時間でも、6時間でも、8時間とみなされることになります。
しかし、裁量労働制を適用するには法律の条件を満たしている必要があります。
とくに裁量労働制を適用できる業種でないにもかかわらず、裁量労働制が規定されているケースがよくあります。
そのため、裁量労働制がとられていたとしても、残業代を請求できることがあるのです。
4-4 言い分4:リモートワークなので残業を把握していないとの言い分
外資系企業が残業代を支払わない言い分の4つ目は、リモートワークなので残業を把握していないとの言い分です。
昨今では、外資系企業の多くが在宅勤務を取り入れており、週に1回しか出社しないという方も珍しくありません。
しかし、リモートワークだと、会社にいる場合と異なり私的な時間が入りがちになるので、本当に勤怠記録のとおりに働いていたのかわからないとの反論をされることがあります。
とくに、勤怠記録を正確に入力していない場合には、メールの送信時刻などだけで労働時間を立証することに限界が出てきます。
その時刻にメールを送信しただけで、送信時刻まで継続的に業務をしていたわけではないと言われがちであるためです。
4-5 言い分5:Basicsalary(基本給)に固定残業代が含まれているとの言い分
外資系企業が残業代を支払わない言い分の5つ目は、Basicsalary(基本給)に固定残業代が含まれているとの言い分です。
外資系企業では、オファーレターや就業規則にBasicsalary(基本給)のうち、何パーセントを固定残業代とするとの文言が記載されていることがあります。
また、Basicsalary(基本給)には、30時間分の固定残業代を含むなどとの記載がされていることもあります。
しかし、固定残業代が支払われている場合であっても、その固定残業代が想定する時間を超えて残業をした場合には、差額の残業代を支払う必要があります。
5章 外資系企業に残業代を請求する手順
あなたが外資系企業における残業に不満を感じているのであれば、残業代を請求していくことを検討してみましょう。
外資系企業に残業代を支払う義務がある場合でも、従業員が何も行動を起こさなければ、残業代は支払われないままになってしまうためです。
例えば、外資系企業に残業代を請求する手順は、以下のとおりです。
手順2:残業代の計算
手順3:交渉
手順4:労働審判又は訴訟
それでは、各手順について順番に説明していきます。
5-1 手順1:通知書の送付
外資系企業に残業代を請求する手順の1つ目は、通知書の送付です。
残業代を請求するには、まずは時効を止める必要があります。
残業代には給与の支払日から3年の時効がありますが、催告を行うことにより6ヶ月間時効の完成が猶予されます。
この間に残業代を計算したり、交渉をしたり、裁判所への申し立てを行うことになります。
また、手元に残業代を計算するための資料がないような場合には、資料の開示も併せて請求することになります。
例えば、以下のような通知書を送ります。
※御通知のダウンロードはこちら
※こちらのリンクをクリックしていただくと、御通知のテンプレが表示されます。
表示されたDocumentの「ファイル」→「コピーを作成」を選択していただくと編集できるようになりますので、ぜひご活用下さい。
5-2 手順2:残業代の計算
外資系企業に残業代を請求する手順の2つ目は、残業代を計算することです。
正確な残業代を計算するための資料が開示されたら、それに基づいて、具体的な未払い残業代金額を計算します。
エクセルなどの計算ソフトを用いて計算することが通常です。
5-3 手順3:交渉
外資系企業に残業代を請求する手順の3つ目は、交渉することです。
具体的な未払い残業代金額が明らかになったら、会社に対して、その金額を支払うよう求めます。
これに対して、会社側からは、反論や会社側の認識に基づいた未払い金額が回答されることになります。
そうすると双方の主張や争点が見えてきますので、折り合いが続けることが可能かどうか交渉を行います。
5-4 手順4:労働審判又は訴訟
外資系企業に残業代を請求する手順の4つ目は、労働審判又は訴訟です。
話し合いによる解決が難しい場合には、労働審判や訴訟などの裁判所を用いた解決を検討します。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には労働審判委員会が審判を下します。
迅速、かつ、適正に解決することが期待できます。
労働審判とはどのような制度かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。
1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
6章 【補足】外資系企業における残業代請求のリスクと2つの対策
外資系企業に対して、残業代請求をすることにはリスクがあるのではないかと感じる方もいるでしょう。
在籍期間中に残業代を請求すると働きづらくなってしまいますし、残業時間が長すぎるとパフォーマンスが不足してみると見られてしまうこともあります。
このように外資系企業に対して残業代請求をした場合のリスクへの対処法としては、以下の2つがあります。
対策2:退職勧奨を拒否し解雇も争う
それでは、これらの対策をそれぞれ説明していきます。
6-1 対策1:退職してから残業代を請求する
外資系企業における残業代請求のリスクへの対策の1つ目は、退職してから残業代を請求することです。
残業代については、3年の時効にかかっていない範囲で、退職した後でも遡って請求することできます。
退職した後であれば、働きづらくなってしまったり、パフォーマンス不足と評価されたりする心配もありません。
そのため、上記リスクへの対策としては、退職した後に残業代を請求することがおすすめです。
6-2 対策2:退職勧奨を拒否し解雇も争う
外資系企業における残業代請求のリスクへの対策の2つ目は、退職勧奨を拒否し解雇も争うことです。
在籍中に残業代請求をしても、働きづらく感じないという方の場合には、すぐに残業代請求を行うことが考えられます。
在籍中に残業代請求を行うメリットとしては、請求後も残業代が増え続けるため、3年以上の残業代を請求できることです。
また、残業の証拠を集めやすいという点もメリットとなります。
例えば、在宅勤務が中心であまり出社しないような方の場合には、職場環境についてはあまり気にならないという場合もあるでしょう。
また、残業代を請求したら、外国本社との関係は悪くなるかもしれないが、日本法人に在籍している同僚は応援してくれているので、働きづらさを感じないということもあります。
もしも、残業代請求をしたことにより、パフォーマンス不足等を理由に退職勧奨や解雇をされたとしても、これを拒否して争えばいいでしょう。
また、そのような方針をとることができる場合には、退職勧奨をされた場合にはパッケージの交渉を行い、条件次第では退職に応じるということも考えられます。
外資系企業のパッケージ交渉については、以下の記事で詳しく解説しています。
外資系企業における退職勧奨のパッケージについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
7章 残業代請求はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
残業代請求については、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
残業代請求については、交渉力の格差が獲得金額に大きく影響してきます。
リバティ・ベル法律事務所では、残業代請求について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しておりますので、あなたの最善の解決をサポートします。
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8章 まとめ
以上のとおり、今回は、外資系企業の残業は多いかを説明したうえで、外資系企業が残業代を支払わない言い分や残業代の請求手順を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
“まとめ”
・外資系企業であっても、残業が多いことは珍しくありません。
・外資系企業では、残業は評価されない傾向にあります。
・外資系企業が残業代を支払わない言い分として以下の5つを挙げてくることがあります。
言い分1:マネージャー職なので管理監督者との言い分
言い分2:年俸制なので残業代を支払わないとの言い分
言い分3:裁量労働制なので残業は発生していないとの言い分
言い分4:リモートワークなので残業を把握していないとの言い分
言い分5:Basicsalaryに固定残業代が含まれているとの言い分
・外資系企業に残業代を請求する手順は、以下のとおりです。
手順1:通知書の送付
手順2:残業代の計算
手順3:交渉
手順4:労働審判又は訴訟
・外資系企業に対して残業代請求をした場合のリスクへの対処法としては、以下の2つがあります。
対策1:退職してから残業代を請求する
対策2:退職勧奨を拒否し解雇も争う
この記事が残業に悩む外資系企業の労働者の助けになれば幸いです。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日