外資系企業では退職金制度がない!?4つの理由と退職金に代わる制度
外資系企業に退職金制度がないか知りたいと悩んでいませんか?
外資系企業のお給料は高いですが、退職金や福利厚生については日系企業とは異なった考え方がされていることがあります。
結論として、外資系企業では、日系企業のような退職金制度がない会社が圧倒的に多いです。
外資系企業に退職金制度がないのは、お給料が高いため、長期雇用を前提としていないため、成果を重視しているため、老後資産の考え方が違うためなどの理由があります。
外資系企業では通常の退職金制度がない代わりに、特別退職金(パッケージ)、確定拠出型年金、インセンティブ、RSUといった制度があります。
外資系企業は、通常の退職金はないですがその分お給料や福利厚生が充実していますし、日系企業でも退職金がない会社や低廉な会社も増えてきましたので、日系企業よりも損ということはないでしょう。
外資系企業の特別退職金(パッケージ)の相場は、賃金の3か月分から1年6か月分程度です。
外資系企業の特別退職金(パッケージ)を増額するためには、退職に納得できていないことを示したうえで、解雇できない証拠を集めて、弁護士に相談することがおすすめです。
実は、外資系企業には退職金制度がないということを信じて、退職したくないのに十分な特別退職金を交渉しないまま退職に応じてしまう方が非常に多いのです。
この記事を通して、外資系企業の退職金についての考え方や正しい知識を伝えていくことができればと思います。
今回は、外資系企業では退職金制度がないことが多いことを説明したうえで、4つの理由と退職金に代わる制度を解説していきます。
この記事を読めば、外資系企業の退職金についてよくわかるはずです。
外資系企業における退職勧奨のパッケージについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次(contents)
1章 外資系企業では退職金制度がないことが多い
外資系企業では、日系企業のような退職金制度がない会社が圧倒的に多いです。
自分の会社に退職金があるかどうかを確認するには、労働条件通知書と就業規則を確認することになります。
労働条件通知書に「退職金」という欄があることが多いので、そこに「有」と記載されているか、「無」と記載されているかを確認しましょう。
また、就業規則に退職金に関する規定がおかれているかを確認してみましょう。
退職金がある会社の場合には、例えば以下のような定めがされています。
従業員の退職金に関する事項については、別に定める退職金規程により支給する。
外資系企業であっても、労働条件通知書で退職金が「有」とされていたり、退職金規程があったりする場合には、退職金が支給される可能性があります。
他方で、労働条件通知書で退職金が「無」とされていたり、退職金規程がなかったりする場合には、退職金制度がないことになります。
2章 外資系企業に退職金制度がない理由4つ
外資系企業に退職金制度がないのは、文化や考え方の違いによるものです。
具体的には、外資系企業に退職金制度がない理由は、以下の4つです。
理由2:長期雇用を前提としていないため
理由3:成果を重視しているため
理由4:老後資産の考え方が違うため
それでは、理由を1つずつ説明していきます。
2-1 理由1:お給料が高いため
外資系企業に退職金制度がない理由の1つ目は、お給料が高いためです。
日系企業は、賃金の一部を退職金として後払いしています。
これに対して、外資系企業は、後払いとせずにお給料の中にも退職金に相当する金額も含めているのです。
そのため、外資系企業では、退職金がない代わりに、お給料が高いことになります。
2-2 理由2:長期雇用を前提としていないため
外資系企業に退職金制度がない理由の2つ目は、長期雇用を前提としていないためです。
退職金は、通常、勤続年数が長いほどにその金額が大きくなっていきます。
また、自己都合退職ではなく、会社都合での退職や定年退職の場合には退職金の金額は大きくなります。
このように退職金という制度は、1つの会社で長期にわたり働き続けるという動機付けとしての側面があり、長期雇用を前提としていない外資系企業にはマッチしないのです。
2-3 理由3:成果を重視しているため
外資系企業に退職金制度がない理由の3つ目は、成果を重視しているためです。
外資系企業では、賃金制度が成果と結び付けられる形となっていることが多く、インセンティブやRSUなどの仕組みが採られていることが多いです。
従業員が成果を上げるモチベーションが上がるような制度となっているのです。
2-4 理由4:老後資産の考え方が違うため
外資系企業に退職金制度がない理由の4つ目は、老後資産の考え方が違うためです。
外資系企業では、自分で資産を運用して利息や配当を得て、資産を形成していくという意識が強い傾向にあります。そのため、高いお給料を自分で運用して、老後資産に充てることになります。
これに対して、日本では、退職金を老後の資産に充てるという方が多く、言うなれば賃金の一部を退職時まで企業に預けておき、企業が代わりに運用している状況です。
3章 外資系企業で通常の退職金の代わりにある制度4つ
外資系企業では退職金制度がない代わりに、日系企業にはないような制度があることがあります。
例えば、外資系企業で通常の退職金の代わりにある制度としては、以下の4つがあります。
制度2:確定拠出型年金
制度3:インセンティブ
制度4:RSU
それでは、これらの制度について1つずつ順番に説明していきます。
3-1 制度1:特別退職金(パッケージ)
外資系企業で通常の退職金の代わりにある制度の1つ目は、特別退職金(パッケージ)です。
特別退職金(パッケージ)とは、通常の退職金とは別に、会社が労働者に任意に退職してもらうために支給する特別の退職金のことです。
通常、労働者は、会社からいきなり退職するように言われても、生活もあり応じることは困難です。
そのため、会社は、退職に消極的な労働者に対して、自分から退職してもらうために説得の材料として特別退職金を提案することがあるのです。
特別退職金(パッケージ)については、以下の記事で詳しく解説しています。
特別退職金については、以下の動画でも詳しく解説しています。
3-2 制度2:確定拠出型年金
外資系企業で通常の退職金の代わりにある制度の2つ目は、確定拠出型年金です。
確定拠出年金は、拠出された掛金とその運用収益との合計額をもとに、将来の給付額が決定する年金制度です。
企業型の確定拠出年金では、企業が掛け金を拠出して従業員がこれを運用することになります。
転職の際には積み立てた資産を持ち越すことができます。
外資系では、自分で資産を運用する傾向にあり、所属する会社も変わりやすいため、退職金ではなく確定拠出年金の方がマッチしやすいのです。
3-3 制度3:インセンティブ
外資系企業で通常の退職金の代わりにある制度の3つ目は、インセンティブです。
外資系企業では、Basic salaryの他に、インセンティブがあることも多く、その割合が5:5になっていることもよくあります。
例えば、企業から一定の目標が設定され、これを達成できるとインセンティブが発生することになります。
入社時の段階で、すべての目標を達成できた場合のインセンティブの総額とBasic salaryの合計額が示される傾向にあります。
3-4 制度4:RSU
外資系企業で通常の退職金の代わりにある制度の4つ目は、RSU(Restricted Stock Unit)です。
RSUとは、一定期間勤続する等の条件を満たした場合には、権利が確定し、株式の交付を受けることができる制度です。
通常、入社時に一定のRSUを交付され、一定期間勤続した場合に株式をもらうことができますが、権利確定前に退職した場合にはRSUは消滅することになります。
外資系のRSUについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
4章 外資系企業は退職金がないから日経企業より損?
外資系企業は、退職金制度がないことが多いですが、日系企業より損とは言えません。
なぜなら、その分お給料が高いですし、先ほど見たように特別退職金、確定拠出年金、インセンティブ、RSUといった制度があることも多いためです。
むしろ、日系企業でも、退職金のない会社や退職金額が低廉な会社が増えています。
また、退職金については、退職理由によって支給金額が変わってしまいますし、不利益変更が問題となることもあり、支給の有無が不確実な側面があります。
退職金制度をあてにして住宅ローンを組んでいたのに、懲戒解雇されてしまい退職金が1円も支払ってもらえないという事例も後を絶ちません。
自分で資産を管理できる方であれば、退職金制度に頼らない、外資系企業の方が合っている方も多いでしょう。
5章 外資系企業における特別退職金(パッケージ)の相場(平均)はいくら?
外資系企業における特別退職金(パッケージ)の相場は、賃金の3か月分から1年6か月分程度です。
特別退職金の金額については、法律上の決まりはありませんので交渉力により決まることになります。
勤続年数1年×1か月分程度の特別退職金が提案されることが多いです。
しかし、最終的な金額は事案により異なり、例えば、解雇するだけの理由がどの程度あるか、従業員がどの程度働き続ける意思があるかなどの要素に左右されます。
特別退職金(パッケージ)金額が決まるより具体的な視点を列挙すると以下のとおりです。
視点2:勤続年数がどの程度か
視点3:残業代等の未払い賃金があるか
視点4:外資系企業本土の慣習
視点5:外国本社の意思が強固か
視点6:業務に応じることが可能か
視点7:貯金がどの程度あるか
視点8:今後の再就職等が決まっているか
6章 外資系企業における特別退職金(パッケージ)の増額する方法
外資系企業における特別退職金(パッケージ)を増額するには、交渉を行うことが必要です。
とくに異論を唱えることなく退職合意書にサインをした場合には、特別退職金(パッケージ)の金額も低廉なものとなりがちです。
具体的には、外資系企業における特別退職金(パッケージ)を増額する方法としては、以下の3つがあります。
方法2:解雇できない証拠を集める
方法3:弁護士に相談する
それでは、順番に説明していきます。
6-1 方法1:退職に納得できないことを示す
外資系企業における特別退職金を増額する方法の1つ目は、退職に納得できないことを示すことです。
特別退職金は、退職に消極的な労働者に対して、自分から退職してもらうために説得の材料として支給されるためです。
既に退職したいとの気持ちになっている労働者は、特別退職金を支給しなくても、待っていれば自分から退職する以上、会社が特別退職金を増額する理由はありません。
そのため、特別退職金の増額交渉を行う大前提として、退職に納得していないことが必要となります。
6-2 方法2:解雇できない証拠を集める
外資系企業における特別退職金を増額する方法の2つ目は、解雇できない証拠を集めることです。
会社側が労働者に自分から退職してほしいと考えるのは、解雇をできないため又は解雇をすることにリスクがあるためです。
労働者の同意がなくても一方的に解雇をすることができる場合には、あえて特別退職金を増額する必要はありません。
そのため、特別退職金を増額するためには、解雇が無効となる可能性があることを示すべきなのです。
6-3 方法3:弁護士に相談する
外資系企業における特別退職金を増額する方法の3つ目は、弁護士に相談することです。
特別退職金の交渉については、解雇された場合の見通しや働き続けることになる場合に想定される不利益を適切に分析したうえで、方針を立てる必要があります。
とくに、特別退職金の交渉については、労働者の一つ一つの発言や行動に気を付ける必要があります。
そのため、会社から退職条件を提案された場合には、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
7章 外資系企業の特別退職金交渉はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
外資系企業の特別退職金交渉は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
解雇の有効性につき見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、外資系企業の性質に応じて適切に方針を策定する必要があります。
リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨事件に力を入れており、特に外資系企業とのパッケージ交渉について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しています。
また、解雇や特別退職金交渉を含む退職勧奨対応については、依頼者の方の負担を軽減するために着手金無料、完全成功報酬としております。
初回相談は無料となっておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
8章 まとめ
以上のとおり、今回は、外資系企業では退職金制度がないことが多いことを説明したうえで、4つの理由と退職金に代わる制度を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
“まとめ”
・外資系企業では、日系企業のような退職金制度がない会社が圧倒的に多いです。
・外資系企業に退職金制度がない理由は、以下の4つです。
理由1:お給料が高いため
理由2:長期雇用を前提としていないため
理由3:成果を重視しているため
理由4:老後資産の考え方が違うため
・外資系企業で通常の退職金の代わりにある制度としては、以下の4つがあります。
制度1:特別退職金(パッケージ)
制度2:確定拠出型年金
制度3:インセンティブ
制度4:RSU
・外資系企業は、退職金制度がないことが多いですが、日系企業より損とは言えません。
・外資系企業における特別退職金(パッケージ)の相場は、賃金の3か月分から1年6か月分程度です。
・外資系企業における特別退職金(パッケージ)を増額する方法としては、以下の3つがあります。
方法1:退職に納得できないことを示す
方法2:解雇できない証拠を集める
方法3:弁護士に相談する
この記事が外資系企業に退職金があるか知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日