ハラスメントは解雇事由になる?懲戒解雇やクビにされた際の対処4つ
ハラスメントを理由に解雇すると言われてしまい困っていませんか。
企業からハラスメントだと指摘されたものの納得できていない方も多いのではないでしょうか。
昨今、外資系企業から、ハラスメントを理由に解雇されたとする相談が増えています。
確かに、ハラスメントも、その程度次第では解雇事由となることがあります。
しかし、そもそもハラスメントがなかったとされることも多く、仮にハラスメントがある場合でも改善指導がされていなかったり、異動や降格が可能だったりすると解雇は不当とされがちです。
もし、あなたがハラスメントを理由に解雇された場合には、焦らずに、冷静かつ慎重に対処していくようにしましょう。
実は、ハラスメントを解雇するための方便として利用しているように見受けられる事例が増えてきています。
ハラスメントを理由とする解雇は、企業からハラスメントを指摘された後のあなた自身の対応が結果に大きく影響していきます。
この記事をとおして、外資系企業からハラスメントを理由に解雇すると言われている方に不利にならないために知っておいていただきたいことをお伝えできれば幸いです。
今回は、ハラスメントは解雇事由になるかを説明したうえで、懲戒解雇やクビにされた際の対処4つを解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、外資系企業からハラスメントを理由に解雇すると言われた際に不利にならないようにするにはどうすればいいのかがよくわかるはずです。
ハラスメントとクビについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
パワハラによるクビについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
セクハラによるクビについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次(contents)
1章 ハラスメントを理由とする解雇が増えている
昨今、外資系企業から、ハラスメントを理由に解雇されたとする相談が増えています。
コンプライアンス意識の高まりから、ハラスメントに対して厳しい対応がされるようになってきているのです。
とくに、外資系企業では、本社がハラスメントに対して厳格な態度を打ち出している場合も多く、かなり強硬的な態度をとられることもあります。
ただし、このようなハラスメントに対する社会の意識を利用して、解雇をするための理由にこじつけてこようとする企業も少なくありません。
例えば、特定の労働者を解雇すると決めた後に、部下やチームメンバーへのヒアリングを行い、その労働者の行動で気になることはないかなどの聞き取りを行います。
そして、ハラスメントと言えないようなことまで、行動の一部を切り取ったり、誇張したりして、ハラスメントであるなどと指摘されることがあります。
また、あなたのことをよく思っていない部下や同僚が報復や陥れる目的で、ハラスメントとは言えないよう発言や態度を誇張して告発することもあります。
コンプライアンス意識の高まりもあり、ハラスメントを理由とする解雇は増えていますが、中には解雇するための方便としてハラスメントが利用されていることもあるのです。
2章 ハラスメントも程度次第では解雇事由になる
ハラスメントも、その程度次第では解雇事由となることがあります。
ハラスメントにより企業秩序や職場環境が害されてしまい、雇用を継続することができないこともあるためです。
しかし、解雇は、最終手段とされており、将来にわたって改善や是正の余地がない場合に初めて許されるものです。
ハラスメントをしてはいけないことは当然ですが、解雇が有されるかについてはまた別の検討が必要になります。
外資系企業であっても、日本でビジネスを行う以上は、日本の法律の規制を受けることになりますので、安易に解雇を行うことは許されません。
そのため、ハラスメントもその程度次第では解雇事由となることはありますが、実際に解雇が有効かどうかは厳格に判断されることになります。
3章 ハラスメントを理由とする解雇が不当となるケース
ハラスメントを理由とする解雇については、不当なることも多いです。
ハラスメント自体存在しないこともありますし、仮にハラスメントがあっても解雇については厳格な規制があるためです。
例えば、ハラスメントを理由とする解雇が不当となるケースとしては、以下の4つがあります。
ケース2:適正な業務指導の範囲である場合
ケース3:改善指導が行われていない場合
ケース4:異動や降格が可能な場合
それでは、これらのケースについて、順番に説明していきます。
3-1 ケース1:ハラスメント行為自体存在しない場合
ハラスメントを理由とする解雇が不当となるケースの1つ目は、ハラスメント行為自体存在しない場合です。
企業側は、ハラスメントの被害の報告があると述べるだけで、被害者の名前やあなたの行為などを何ら特定しないことがあります。
結局、ハラスメントと言えるような具体的なエピソード自体が存在しないこともあります。
また、あなたのことをよく思っていない方が事実と異なる告発や誇張した告発を行っているようなことも少なくありません。
このようにそもそもハラスメント行為自体がそもそも存在しないということもよくあり、このようなケースでは解雇は当然不当となります。
3-2 ケース2:適正な業務指導の範囲である場合
ハラスメントを理由とする解雇が不当となるケースの2つ目は、適正な業務指導の範囲である場合です。
パワハラでよくある議論ですが、強めの言葉を使うことがあっても、その文脈や経緯、状況によっては、適正な業務指導の範囲としてハラスメントに該当しないことがあります。
例えば、部下が同様のミスを何度言っても改善しない場合には、その回数に応じてこれまでよりも強めに指摘する必要がある場合もあるでしょう。
また、部下の業務ミスによって、大きな損害や支障が生じてしまう可能性がある場合には、その程度に応じて強い指摘をすることが必要になることがあります。
更に、危険な現場作業をしている際に、ミスをすると生命の危険などがある場合にも、強く指導しなければいけないことがあるでしょう。
このようにその言葉や態度だけを切り抜かれると一見ハラスメントに見えるような場合でも、文脈や経緯、状況次第では適正な業務指導の範囲となり得ます。
適正な業務指導範囲である場合にはハラスメントには該当しないことになりますので、このようなケースでは解雇は当然不当となります。
3-3 ケース3:改善指導が行われていない場合
ハラスメントを理由とする解雇が不当となるケースの3つ目は、改善指導が行われていない場合です。
改善指導をすることでハラスメントを防止できるのであれば、雇用を継続することができるためです。
例えば、これまでハラスメントを理由に懲戒処分が全く行われていないような場合や業務改善指導書を交付されたりしていない場合は、改善の余地があるといいやすいでしょう。
ただし、犯罪行為に該当するようなとくに悪質なハラスメントの場合には、例外的に改善指導を経ずとも解雇が有効となってしまうこともあります。
3-4 ケース4:異動や降格が可能な場合
ハラスメントを理由とする解雇が不当となるケースの4つ目は、異動や降格が可能な場合です。
ハラスメント行為については、特定の被害者に対して行われていたり、職務上の関係が利用されていたりすることがあります。
被害者が特定されている場合には、異動を行うことでハラスメントを防止できることがあります。
また、職務上の立場などが利用されている場合には、役職を下げたり、役職を外したりすることで、ハラスメントを防止できることがあります。
そのため、企業は労働者を解雇する前に異動や降格の可否を検討する必要があるのです。
4章 ハラスメントを理由に解雇された場合の対処手順4つ
もし、あなたがハラスメントを理由に解雇された場合には、焦らずに、冷静かつ慎重に対処していくようにしましょう。
あなた自身の行動で、有利な結果になることもあれば、不利な結果になることもあります。ハラスメントを指摘された後のあなた自身の行動が非常に重要なのです。
具体的には、ハラスメントを理由に解雇された場合の対処手順は以下のとおりです。
手順2:証拠を集める
手順3:通知書を送付する
手順4:労働審判・訴訟を提起する
それでは、これらの対処手順について順番に説明していきます。
4-1 手順1:弁護士に相談する
ハラスメントを理由に解雇された場合の対処手順の1つ目は、弁護士に相談することです。
法的な見通しを分析したうえで、事案に応じて、どのように対処していくべきか助言してもらうべきだからです。
ハラスメントを理由とする解雇は、会社が指摘するハラスメントの内容を明らかにしたうえで、事実関係について一貫した説明することが大切です。
私自身ハラスメントを理由とする解雇に関する相談を受けることが多いですが、もっと早く相談してほしかったと感じることがよくあります。
私が相談を受けた時点で、パニックになり不利な対応してしまっていたり、貴重な証拠を確保できない状況にあったりするケースが後を絶たないためです。
そのため、ハラスメントを理由に解雇された場合には、すぐに弁護士に相談するべきなのです。
ただし、外資系企業の解雇については、とくに専門性が高いため弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
労働問題に注力していて、外資系企業の解雇問題に実績のある弁護士を探すようにしましょう。
4-2 手順2:証拠を集める
ハラスメントを理由に解雇された場合の対処手順の2つ目は、証拠を集めることです。
企業は、発言や態様の一部分を切り取って、ハラスメントであると指摘してくることが多いためです。
企業から指摘される可能性のある出来事は、その経緯や状況、その出来事があったとされた前後の被害者とされる方との関係などを丁寧に説明できるようにしておきましょう。
例えば、ハラスメントの内容に応じて、以下のような証拠を集めておくといいでしょう。
・被害者とされる方との関係が良好であることがわかるチャットやLINE、メール
・企業からハラスメントを指摘された際のミーティングの録音
・当日の出来事があった場所や被害者とされる方の写真
その他、事案に応じて集めるべき証拠が異なっており、自身の身を守るため、早い段階で適切な証拠を保全していく必要があります。
弁護士に相談した際に併せて、どのような証拠があるといいか確認するといいでしょう。
なお、LINE等のデータを削除してしまう方が非常に多いですが、貴重な証拠ですので削除しないように注意しましょう。
4-3 手順3:通知書を送付する
ハラスメントを理由に解雇された場合の対処手順の3つ目は、通知書を送付することです。
弁護士から企業に対して、解雇が無効であること、及び、解雇理由証明書の交付を求める旨の通知書を送ってもらいましょう。
解雇理由証明書の交付を受けることで、どのような主張や証拠を準備すればいいのかを把握することができます。
また、企業は、事実上、解雇理由証明書に記載していない事由は、後から解雇理由として追加しにくくなります。
4-4 手順4:労働審判・訴訟を提起する
ハラスメントを理由に解雇された場合の対処手順の4つ目は、労働審判又は訴訟を行うことです。
話し合いによる解決が難しい場合には、労働審判や訴訟などの裁判所を用いた解決を検討します。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には労働審判委員会が審判を下します。迅速、かつ、適正に解決することが期待できます。
労働審判については、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
不当解雇の裁判については、以下の記事でも詳しく解説しています。
不当解雇の裁判については、以下の動画でも詳しく解説しています。
5章 ハラスメント解雇でよくある疑問3つ
ハラスメントによる解雇でよくある疑問としては、以下の3つがあります。
Q2:ハラスメントを指摘された際の注意点は?
Q3:ハラスメントは解雇に利用される?
これらの疑問を順番に解消していきましょう。
5-1 Q1:ハラスメントで懲戒解雇になる?
A.ハラスメントにより懲戒解雇になることもあります。
企業秩序を害することから非違行為に該当しうるためです。
ただし、懲戒解雇は、懲戒処分の極刑となっており、普通解雇よりも更に厳格であるため容易には認められません。
5-2 Q2:ハラスメントを指摘された際の注意点は?
A.適当にハラスメント認めたり、適当に謝罪をしたりしないよう注意が必要です。
事実関係を正確に、かつ、一貫して説明する必要があり、一度、行った発言や態様は後から撤回することが難しいためです。
よくパニックになってしまって企業から指摘されている事実関係に異なる部分があるにもかかわらず、適当に認めてしまったり、適当に謝罪してしまったりする方がいます。
多くの事案において、企業側が提出してくるのは、このようなあなた自身の自白の発言や謝罪のLINE、メールなどです。
企業側の勢いに押されて違うとは言えなかった、被害者とされている方に脅されて謝罪をしてしまったという事例が非常に多いのです。
まずは企業側に対して、いつ、どこで、誰に対して、どのようなことをしたことがなぜハラスメントに該当すると指摘しているのかを明らかするよう求めましょう。
そのうえで、一度持ち帰り、弁護士に相談したうえで、客観的な証拠などに照らして正確な記憶を喚起したうえで、あなたの認識や言い分を主張するのがいいでしょう。
5-3 Q3:ハラスメントは解雇に利用される?
A.ハラスメントが解雇をするための方便として利用される事例が増えてきています。
企業が退職させたい従業員に関して、他の従業員に悪いところや気になるところがなかったかヒアリングをして回り、使えそうな事情をハラスメント等と指摘してくる方法です。
また、あなたのことが嫌いな部下やあなたのポジションを狙っている同僚などが、あなたを失脚させるためにハラスメントがあったなどと告発してくるような例も耳にします。
勿論、ハラスメントが許されないことは当然のことではありますが、労働者を企業から排除するための方便としてハラスメントを利用するということはあってはなりません。
もし、あなた自身が身に覚えのないハラスメントを指摘されて、解雇に追い込まれそうになっている場合は、このような現状を理解したうえで慎重に対応するよう注意が必要です。
6章 外資系企業の解雇はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
外資系企業の解雇の相談は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
解雇の有効性につき見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、外資系企業の性質に応じて適切に方針を策定する必要があります。
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解決事例 | 外資系労働者特設サイトbyリバティ・ベル法律事務所 (libertybell-tokusetu.com)
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7章 まとめ
以上のとおり、今回は、ハラスメントは解雇事由になるかを説明したうえで、懲戒解雇やクビにされた際の対処4つを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
“まとめ”
・昨今、外資系企業から、ハラスメントを理由に解雇されたとする相談が増えています。
・ハラスメントも、その程度次第では解雇事由となることがあります。
・ハラスメントを理由とする解雇が不当となるケースとしては、以下の4つがあります。
ケース1:ハラスメント行為自体存在しない場合
ケース2:適正な業務指導の範囲である場合
ケース3:改善指導が行われていない場合
ケース4:異動や降格が可能な場合
・ハラスメントを理由に解雇された場合の対処手順は以下のとおりです。
手順1:弁護士に相談する
手順2:証拠を集める
手順3:通知書を送付する
手順4:労働審判・訴訟を提起する
この記事がハラスメントを理由に解雇すると言われてしまい困っている外資系労働者の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日