試用期間満了の本採用拒否|違法なケースや判例と簡単な対処法4つ
試用期間満了に伴い外資系業から本採用を拒否されてしまい困っていませんか?
前職を退職したうえで、他の会社の内定も辞退したうえで入社している以上、本採用してもらえないと困りますよね。
試用期間満了の本採用拒否とは、試用期間の終了をもって雇用契約を終了し、本採用を行わないということです。
試用期間満了の本採用拒否の理由として、最も典型的なのは能力不足(パフォーマンス不足)ですが、ポジションクローズや勤務態度不良もあります。
試用期間満了の本採用拒否は、客観的に合理的な理由と言えなければ違法となります。
試用期間満了の本採用拒否通知書を交付されたら、解雇日と解雇理由を速やかに確認するようにしましょう。
試用期間の本採用を拒否された場合には、適切な方針を立てたうえで、焦らずに冷静に対処していく必要があります。
試用期間満了で本採用拒否された際には、失業保険上、原則として、会社都合退職となります。
実は、外資系企業では解雇が多いと言われていますが、その中でもとくに多いのがこの試用期間満了時の本採用拒否となります。
この記事をとおして、外資系企業で働く従業員の方に試用期間の本採用拒否から自分を守るために必要な知識とノウハウをわかりやすく伝えていくことができれば幸いです。
今回は、試用期間満了の本採用拒否について、違法なケースや判例と簡単な対処法4つを解説します。
この記事を読めば、外資系企業から試用期間で本採用を拒否されてしまった場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次(contents)
1章 試用期間満了の本採用拒否とは?
試用期間満了の本採用拒否とは、試用期間の終了をもって雇用契約を終了し、本採用を行わないということです。
通常、外資系企業に入社すると、3ヶ月~6ヶ月程度の試用期間がつけられています。
オファーレターや雇用契約書、就業規則を確認してみると記載があるはずです。
試用期間というのは、採用の際には分からなかった事項を実際に働いている状況などを見ながら確認する期間のことです。
試用期間中に本採用拒否されずに無事にパスすることができると晴れて、通常の社員として働き続けることができます。
このように試用期間満了の本採用拒否は、入社後の試用期間中の働きぶりから雇用を継続することができないと判断され、雇用契約を終了されてしまうことをいうのです。
2章 試用期間満了の本採用拒否の理由
試用期間満了で本採用拒否をされる際には、理由を告げられることになります。
外資系企業における試用期間満了の本採用拒否の理由として多いのは以下の3つです。
理由2:ポジションクローズ
理由3:勤務態度不良
それでは、これらの理由について順番に説明していきます。
2-1 理由1:能力不足(パフォーマンス不足)
試用期間満了の本採用拒否の理由の1つ目は、能力不足(パフォーマンス不足)です。
外資系企業から本採用を拒否される際に最も指摘されることが多い理由となります。
外資系企業では採用の際にジョブディスクリプションが交付され、そのポジションにおいて期待される事項を伝えられることになります。
入社した後の業務の遂行状況や成果がこの期待した程度に達していないと指摘されることが多いのです。
2-2 理由2:ポジションクローズ
試用期間満了の本採用拒否の理由の2つ目は、ポジションクローズです。
ポジションクローズとは、会社の組織体制の変更等により採用されたポジションがなくなってしまうことです。
外資系企業では、ポジションごとに労働者を採用する傾向にあり、ポジションと労働者の結びつきが密接です。
そのため、ポジションがなくなってしまう際には、そのポジションにいる労働者を雇用し続けることはできないと判断されてしまうのです。
ポジションクローズについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
2-3 理由3:勤務態度不良
試用期間満了の本採用拒否の理由の3つ目は、勤務態度不良です。
外資系業では成果が重視される傾向にありますが、業務態度についても見られている傾向にあります。
例えば、ミーティングでの発言の有無や量、部下への接し方などについて指摘されることがよくあります。
その他、返信が遅かったり、成果物の提出が後れたりといった指摘をされることも、少なくありません。
3章 試用期間満了の本採用拒否が違法となるケース3つ
試用期間満了の本採用拒否は、客観的に合理的な理由と言えなければ違法となります。
試用期間満了の本採用拒否は、入社後に労働者を退職させるものであり、解雇に準じて考えられているためです。試用期間と言っても理由なく退職させることはできないのです。
具体的には、試用期間満了の本採用拒否が違法となるケースとしては以下の3つです。
ケース2:主観的な評価となっている
ケース3:労働者の落ち度ではない
それでは、これらのケースについて順番に説明していきます。
3-1 ケース1:具体的なエピソードがない
試用期間満了の本採用拒否が違法となるケースの1つ目は、具体的なエピソードがないことです。
会社からパフォーマンス不足や業務態度不足等の指摘をされたとしても、根拠と出来事がなければ、客観的に合理的な理由とは言い難いためです。
例えば、会社側から、低評価となっているパフォーマンスレビューなどを見せられることがあります。
しかし、低評価とした具体的な理由が説明されないということが多くなっています。
このように具体的なエピソードがないような場合には、本採用拒否は違法となりやすいのです。
3-2 ケース2:主観的な評価となっている
試用期間満了の本採用拒否が違法となるケースの2つ目は、主観的な評価となっていることです。
会社側から解雇の具体的な事情を指摘されても、その評価が主観的なものであることが多くなっています。
例えば、あなたが提出した成果物やあなたのミーティングでの発言などを根拠として、パフォーマンスが不足していたとされることがあります。
しかし、上司や社長がパフォーマンス不足と感じているだけでは足りず、誰が見てもパフォーマンス不足が不足していたと言えなければ、客観的に合理的とは言えません。
3-3 ケース3:労働者の落ち度ではない
試用期間満了の本採用拒否が違法となるケースの3つ目は、労働者の落ち度ではない事です。
設定されたKPIや業務目標を達成できなかったということを本採用拒否の理由とされることがあります。
定量的な目標が設定されているような場合には、客観的な理由にも見えるでしょう。
しかし、目標を達成できなかった原因が労働者にはないことが多くなっています。
例えば、過大な目標を設定されていたり、会社側の体制に原因があったりするような場合です。
このような場合には本採用拒否をするだけの合理的な理由とはならないでしょう。
4章 試用期間満了の本採用拒否通知書と確認事項
試用期間満了において本採用を拒否される場合には、本採用拒否通知書を交付されることになります。
本採用を拒否する旨を伝えずに試用期間が経過すると、試用期間の満了をもって本採用されたことになるためです。
例えば、試用期間満了の本採用拒否通知書として以下のような書類が送られてくることになります。
本採用拒否通知書を交付された場合には、解雇日と解雇理由(解雇事由)を確認するようにしましょう。
また、就業規則の条項にどのような記載があるのかについても併せて確認するといいでしょう。
5章 試用期間満了の本採用拒否の判例
外資系企業の試用期間満了の本採用拒否に関する裁判例についても一定程度蓄積しています。
以下では2つの裁判例を厳選して紹介していきましょう。
それでは、順番に説明していきます。
5-1 東京地判平成14年8月9日労判836号94頁|オープンタイドジャパン事件
【事案】
韓国所在のグループに属する会社に事業開発部長として採用された方が、試用期間2か月余で解約された事案です。
【結論】
本採用拒否は認められないとされました。
【理由】
会社が指摘するような業務能力の不足や実務英語能力の不足は認められないとして、事業開発部長として不適格であったとはいえず、本採用拒否は無効とされています。
5-2 東京地判令和3年11月12日労経速2478号18頁|日本オラクル事件
【事案】
外資系企業に日本で最高職位のテレコム・イノベーターとして採用されたものが、3か月の試用期間内に本採用しない旨を通知され(但し解雇日は試用期間満了の2か月後)、その有効性が争われた事案です。
【結論】
本採用拒否は有効とされました。
【理由】
前提として、本採用拒否の通知が試用期間内にされている場合、効力発生日が試用期間経過後でも、労働者の地位を不安定にしない限り、本採用拒否(留保解約権の行使)として扱うとされています。
そのうえで、コミュニケーション能力がテレコム・イノベーターに求められる水準に達していないことを試用期間中の執務状況等の観察等によって、会社が知ったとしました。
そして、職務経験歴等を生かし高度な業務の遂行が期待され、それに見合った待遇を受けるという採用の趣旨からは、新卒者と同様の改善の機会の付与までは不要とされています。
6章 試用期間満了の本採用拒否をされた場合の対処法
試用期間の本採用を拒否された場合には、適切な方針を立てたうえで、焦らずに冷静に対処していく必要があります。
労働者が何もしなければ、会社側は本採用拒否が有効であることを前提に手続きを進めてしまい、あなた自身の権利を守ることもできないからです。
具体的には、試用期間満了の本採用拒否をされた場合の対処法は以下の4つです。
対処法2:通知書を送付する
対処法3:交渉する
対処法4:労働審判・訴訟を提起する
それでは、これらの対処法について順番に説明していきます。
6-1 対処法1:弁護士に相談する
試用期間満了の本採用拒否をされた場合の対処法の1つ目は、弁護士に相談することです。
本採用拒否の有効性を適切に分析したうえで、適切な方針を立てて、一貫した対応をしていくことが成功の秘訣だからです。
とくに、外資系企業の本採用拒否は専門性が高く、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
外資系企業の解雇問題に力を入れていて、実績のある弁護士に相談した方が良いでしょう。
6-2 対処法2:通知書を送付する
試用期間満了の本採用拒否をされた場合の対処法の2つ目は、通知書を送付することです。
本採用拒否が濫用として無効であると通知するようにしましょう。
本採用拒否された後、何もせずに放置していると、本採用拒否が有効であると認めていたと指摘されたり、働く意思を失っていたと指摘されたりすることがあるためです。
また、併せて、解雇理由証明書の交付を求めるようにしましょう。
解雇理由を知ることで見通しがより明らかになりますし、どのような主張や証拠を準備すればいいかが分かるためです。
6-3 対処法3:交渉する
試用期間満了の本採用拒否をされた場合の対処法の3つ目は、交渉することです。
会社側から回答があると争点も明らかになりますので、話し合いにより折り合いをつけることが可能かどうか協議するといいでしょう。
早期に示談をすることができれば、少ない負担と労力で良い解決をすることができることもあるためです。
6-4 対処法4:労働審判・訴訟を提起する
試用期間満了の本採用拒否をされた場合の対処法の4つ目は、労働審判・訴訟を提起することです。
話し合いによる解決が難しい場合には、労働審判や訴訟などの裁判所を用いた解決を検討します。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には労働審判委員会が審判を下します。迅速、かつ、適正に解決することが期待できます。
労働審判については、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
7章 試用期間満了の本採用拒否と離職票|自己都合or会社都合?
試用期間満了で本採用拒否された際には、原則として、会社都合退職となります。
離職票上は、その他の欄にチェックされ、試用期間満了による本採用拒否等の記載がされることになります。
会社都合退職になると、自己都合退職に比べて、失業保険の給付までの期間や給付日数、給付条件について有利に取り扱ってもらうことができます。
試用期間が短い場合には、雇用保険の加入期間が足りず失業保険の受給条件を満たしていないこともありますが、前職を通算することで受給できることもあります。
ただし、刑法違反や重大な規律違反等の労働者の責めに帰すべき重大な事由による本採用拒否の場合には、自己都合退職とされることがあります。
8章 外資系企業の本採用拒否はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
外資系企業の本採用拒否は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
本採用拒否の有効性につき見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、外資系企業の性質に応じて適切に方針を策定する必要があります。
リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨事件に力を入れており、特に外資系企業とのパッケージ交渉について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しています。
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9章 まとめ
以上のとおり、今回は、試用期間満了の本採用拒否について、違法なケースや判例と簡単な対処法4つを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
“まとめ”
・外資系企業から本採用を拒否される際に最も指摘されることが多い理由となります。
・試用期間満了で本採用拒否をされる際には、理由を告げられることになります。
・試用期間満了の本採用拒否は、客観的に合理的な理由と言えなければ違法となります。
・試用期間満了の本採用拒否通知書を交付された場合には、解雇日や解雇理由(解雇事由)を確認するようにしましょう。
・試用期間満了の本採用拒否をされた場合の対処法は以下の4つです。
対処法1:弁護士に相談する
対処法2:通知書を送付する
対処法3:交渉する
対処法4:労働審判・訴訟を提起する
・試用期間満了で本採用拒否された際には、失業保険上、原則として、会社都合退職となります。
この記事が試用期間満了に伴い外資系業から本採用を拒否されてしまい困っている労働者の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日