特別退職金とは?特別退職金の相場や税金と上乗せ交渉の方法4つ
外資系企業から特別退職金を提案されたものの、特別退職金がどのようなものか分からずに悩んでいませんか?また、外資系企業から、退職勧奨やリストラを告げられたのに特別退職金の提案がされずに悩んでいませんか?
もしも退職することになる場合には、転職するまでの間の生活を維持する必要がありますので、十分な補償がほしいと感じるのは当然のことですよね。
特別退職金とは、通常の退職金に加えて、退職に応じる対価等として支給される退職金のことです。
外資系企業ではよく特別退職金の支給がされますが、その理由としては、例えば以下の3つがあります。
理由2:企業文化の違うため
理由3:様々な誓約をさせるため
外資系企業における特別退職金の相場は、勤続年数×1か月分程度です。ただし、あくまでも相場なので、これよりも大きな金額が支払われることも多いです。
特別退職金の上乗せ交渉の方法としては、例えば以下の4つがあります。
方法2:解雇の理由がないことを示す
方法3:有給休暇の残日数やRSUの未確定分を示す
方法4:弁護士に交渉を依頼する
特別退職金については、退職所得として処理されることになりますので、給与に比べて節税効果が高く、社会保険料も控除されません。所得税や住民税は源泉されるため確定申告も原則不要となります。
実は、昨今、外資系企業では退職勧奨やリストラ、レイオフが非常に多くなっており、労働者としても特別退職金についての正しい知識を身に着けておかないと、十分な補償を受けられないことがあります。
この記事をとおして、退職勧奨等に悩む外資系企業の労働者の方に特別退職金についての正しい知識をお伝えすることができれば幸いです。
今回は、特別退職金とは何かを説明したうえで、特別退職金の相場や税金と上乗せ交渉の方法4つを解説していきます。
この記事を読めば、特別退職金についてどのように交渉、対応していけばいいのかがよくわかるはずです。
特別退職金については、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次(contents)
1章 特別退職金とは?退職勧奨やリストラ等に応じる対価
特別退職金とは、通常の退職金に加えて、退職に応じる対価等として支給される退職金のことです。
通常の退職金制度がない企業であっても、このような特別退職金が支給されることがあります。
通常の退職金制度がある企業であれば、通常の退職金とは別に特別退職金が支給されることになります。
つまり、退職金規程等の制度に基づいて支払われる通常の退職金とは別のものです。
なので、通常の退職金とは区別して、「特別」退職金と呼ばれています。
例えば、外資系企業が退職勧奨やリストラ、レイオフといったことを行う際に、労働者に対して、通常の退職金とは別に特別退職金を支給することがあります。
比較的、外資系企業などでこのような特別退職金が提案されることが多いですが、日本企業においても特別退職金を支給されることが増えてきています。
レイオフとは何かについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
2章 外資系企業がよく特別退職金を支給する理由
外資系企業において、よく特別退職金を支給されることには理由があります。
確かに、法的には、雇用主に特別退職金を支給する義務があるわけではありません。
しかし、外資系企業は、以下のような理由により、よく特別退職金を支給することがあるのです。
理由2:企業文化が違うため
理由3:様々な誓約をさせるため
それでは、これらの理由について、順番に説明していきます。
2-1 理由1:退職してもらうため
外資系企業が特別退職金を支給する理由の1つ目は、退職してもらうためです。
日本の法律では、労働者の同意なく、一方的に、退職させようとすると「解雇」として、厳格な法律の規制が適用されることになります。
労働者の同意がいらない代わりに、簡単には解雇することができない立て付けになっているのです。
外資系企業では、経営の合理化、効率化を徹底して、人件費率を削り、利益率を上げる傾向にあり、法的には解雇できない場面であっても、退職を迫ってくることがあります。
このような場合に、労働者に退職に同意してもらうための説得の材料として、特別退職金を提案してきているのです。
例えば、外資系企業が特別退職金を1円も提案しなかったとしましょう。そうすると、当然労働者は、退職には応じません。
そのような場合に、外資系企業が解雇を強行すれば、労働者から不当解雇であると訴えられることになります。
そして、雇用主は、1~2年間争った末解雇が無効とされれば、後から遡って1~2年分の賃金を労働者に支払うように命じられるリスクがあります。
そのため、外資系企業は、解雇のリスクを回避し、穏当に合意により退職してもらうために特別退職金を提案してくるのです。
2-2 理由2:企業文化が違うため
外資系企業が特別退職金を支給する理由の2つ目は、企業文化が違うためです。
外資系企業では、通常の退職金がない代わりに、解雇の際に一定の補償金を支払うような文化がある国があります。
解雇の金銭的解決ということについて馴染みがある国が多いのです。
そのため、外資系企業は、退職パッケージとして、特別退職金等を提案してくることがよくあります。
2-3 理由3:様々な誓約をさせるため
外資系企業が特別退職金を支給する理由の3つ目は、様々な誓約をさせるためです。
特別退職金が支給される際には、退職合意書にサインを求められることになります。
その退職合意書の中には、特別退職金の支給のほかに、競業避止義務、秘密保持義務、引継協力義務、雇用主や他の従業員や役員を訴えないこと等の条項が含まれていることが多いです。
つまり、特別退職金については、退職してもらう際に、様々な誓約内容に応じてもらう対価としての意味合いとして支給されることも多いのです。
例えば、何らの対価なく、このような誓約所にサインするように求められても、対立的な関係にある労働者であればサインを拒む方も多いでしょう。
また、競業避止義務については、何らの対価なく、他の企業等への就職を制限することは職業選択の事由との関係で無効とされることもあります。
そのため、外資系企業は、退職時に誓約に合意してもらうために特別退職金を支給することもあるのです。
3章 特別退職金の相場|勤続年数×1か月分
特別退職金の相場は、勤続年数×1か月分程度とされています。
法律上、特別退職金の支給義務が定められているわけではないため、とくに法律上の決まりはありませんので、あくまでも実務上の相場となります。
労働者は相場通りの金額で納得しなければいけないわけではありませんし、企業側も相場通りの金額出さなければいけないわけではありません。
最終的な特別退職金の金額について、労働者と企業側の交渉力によって変動することになります。
例えば、労働者側に落ち度がある場合には、特別退職金も少なくなることが多いです。
一方で、企業側に原因がある場合には、特別退職金も大きくなることが多いです。
外資系企業における特別退職金については、おおよそ、賃金の3か月分~1年6か月分程度で交渉されることが多いです。
外資系企業のパッケージの相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
外資系企業における退職勧奨のパッケージについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
4章 退職勧奨の際の特別退職金の上乗せ交渉の方法4つ
退職勧奨の際に適正な特別退職金を獲得するためには、上乗せ交渉を行う必要があります。
外資系企業は、退職勧奨の際に適正な特別退職金を提案してくるとは限らず、交渉した方にだけ上乗せを行うということが多いためです。
具体的には、退職勧奨の際の特別退職金の上乗せ交渉の方法としては、以下の4つがあります。
方法2:解雇の理由がないことを示す
方法3:有給休暇の残日数やRSUの未確定分を示す
方法4:弁護士に交渉を依頼する
それでは、各方法について順番に説明していきます。
退職勧奨された場合のNG行動と正しい対処法は、以下の動画でも詳しく解説しています。
4-1 方法1:働き続ける意思が強いことを示す
特別退職金の上乗せ交渉の方法の1つ目は、働き続ける意思が強いことを示す方法です。
特別退職金については、退職したくない労働者に対して、退職に応じてもらうために説得するために提案されるものとなります。
企業側としては、既に退職に応じるつもりになっている労働者や転職活動を始めているような労働者に対しては、特別退職金を提案する理由はありません。
とくに説得しなくても、待っていれば、労働者が自分から退職するためです。
そのため、特別退職金を交渉する大前提として、労働者に働き続ける意思が強く、退職したくないと考えていることが必要となるのです。
4-2 方法2:解雇の理由がないことを示す
特別退職金の上乗せ交渉の方法の2つ目は、解雇の理由がないことを示す方法です。
企業は、労働者を解雇するだけの理由が揃っている場合には、労働者退職したくないと考えている場合でも、解雇すれば足りることになります。
一方で、解雇の理由がない場合には、労働者の同意がなければ、労働者を退職させることはできません。
例えば、企業は、解雇が無効となる見通しが高いと判断した場合には、労働者に対して、特別退職金を支給することで、退職に同意してもらおうとするのです。
そのため、特別退職金を交渉するにあたっては、解雇の理由がないと示すことが有効なのです。
4-3 方法3:有給休暇の残日数やRSUの未確定分を示す
特別退職金の上乗せ交渉の方法の3つ目は、有給休暇の残日数やRSUの未確定分を示す方法です。
有給休暇の残日数がある場合には、労働者としても、その期間についてはとくに働かなくても給与の支給を受けることができますので、退職したくないと考えるのは当然です。
また、RSUの未確定分がある場合には、退職するとこれを獲得できなくなってしまうため、労働者としても退職したくないと考えるのは当然です。
このように、労働者として、退職に応じることができない理由を示すことで、企業側としても、労働者にとって納得感のある特別退職金の提案を検討することになります。
外資系のRSUについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
4-4 方法4:弁護士に交渉を依頼する
特別退職金の上乗せ交渉の方法の4つ目は、弁護士に交渉を依頼することです。
特別退職金の交渉を行うには、企業側に対して、法的な見通しについて判例や実務傾向を踏まえたうえで説明していく必要があります。
また、特別退職金の交渉は、労働者としてもリスクを伴うことがあり、貴方のキャリア、見通し、意向を十分に分析したうえで、方針を立てたうえで行わなければ、危険なのです。
そのため、特別退職金の交渉をしたいと考えた場合には、弁護士に交渉を依頼することがおすすめです。
5章 特別退職金の税金と会計処理|源泉されるため確定申告は原則不要
特別退職金は、税務上は退職所得、会計上は特別損失として処理されることになります。給与所得に比べると節税効果が高い項目となります。
税金については、会社側が源泉することになりますので、確定申告は原則不要となります。
ただし、退職所得の受給に関する申告書を提出し忘れていると、一律に20.42%を源泉されてしまうことになり、還付を受けるには確定申告が必要となります。
そのため、特別退職金の支給日までに退職所得の受給に関する申告書を提出することを忘れないようにしましょう。
退職所得の受給に関する申告書については、以下の国税庁のページからダウンロードすることができます。
A2-29 退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)|国税庁 (nta.go.jp)
これに対して、特別退職金は、社会保険料の控除の対象にはなりません。
そのため、特別退職金は、給与に比べると、税金や社会保険料については控除が少なく、労働者の手元に残る金額が多いことになります。
6章 特別退職金についてよくある疑問5つ
特別退職金について、よくある疑問としては以下の5つがあります。
Q2:退職金制度がないのだけど特別退職金の交渉はできますか
Q3:正直もう1日も働きたくないのですが特別退職金の交渉はできますか
Q4:特別退職金の交渉をしたいのですが並行して転職活動してもいいですか
Q5:特別退職金よりも在籍期間を延長してもらう交渉もできますか?
それでは、これらの疑問について1つずつ順番に解消していきましょう。
6-1 Q1:退職合意書にサインした後でも特別退職金の交渉はできますか
退職合意書にサインした後については、特別退職金の交渉は難しいです。
特別退職金については、企業側が労働者に対して、退職に応じてもらうための説得の材料として提案するものです。
労働者が退職合意書にサインすると、その時点で企業側は目的を達成することになり、それ以降は特別退職金の支払いの提案はされません。
6-2 Q2:退職金制度がないのだけど特別退職金の交渉はできますか
退職金制度がなくても、特別退職金の交渉はできます。
特別退職金は、退職金制度に基づいて支払われるものではないためです。
6-3 Q3:正直もう1日も働きたくないのですが特別退職金の交渉はできますか
1日も働きたくないという場合には、特別退職金の交渉は難しい傾向にあります。
特別退職金は、退職したくない労働者に対して、退職に応じてもらうための説得の材料として提案されるものだからです。
交渉次第で支払ってもらえる場合もあるでしょうが、労働者としても、企業側が退職勧奨を取りやめてしまうと困ってしまうことになります。
6-4 Q4:特別退職金の交渉をしたいのですが並行して転職活動してもいいですか
特別退職金の交渉を行う際に、並行して転職活動を行うことはおすすめしません。
交渉がどの程度の期間かかるか分からないためです。企業側は、回答を後らせて、労働者が自主的に退職するのを待つような対応をしてくることもあります。
転職先が決まると、退職関係書類を入するため自分から退職届を出さざるを得なくなり、それ以上の交渉が難しくなってしまいます。
そのため、納得できるだけの退職条件を獲得してから、転職活動を開始した方がメリットは大きい傾向にあります。
ただし、明らかに解雇の事由が認められるような事案などでは、並行して転職活動を行い、リスクヘッジを図ることもあります。
6-5 Q5:特別退職金よりも在籍期間を延長してもらう交渉もできますか?
特別退職金に代えて、在籍期間を延長して、その期間について出勤を免除して、賃金の支給をしてほしいという交渉を行うこともできます。
このような期間のことをガーデンリーブと言います。
企業側としては、社会保険料の会社負担分などはありますが、特別退職金として支給しても、給与として支給しても、大きな負担の差は有りません。
そのため、特別退職金の一部を減らすので、ガーデンリーブを付けてくださいと言う交渉はよく行います。
ガーデンリーブについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ガーデンリーブについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
7章 外資系企業のパッケージ交渉はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
外資系企業のパッケージ交渉は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
解雇の有効性につき見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、外資系企業の性質に応じて適切に方針を策定する必要があります。
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8章 まとめ
以上のとおり、今回は、特別退職金とは何かを説明したうえで、特別退職金の相場や税金と上乗せ交渉の方法4つを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
・特別退職金とは、通常の退職金に加えて、退職に応じる対価等として支給される退職金のことです。
・外資系企業は、以下のような理由により、よく特別退職金を支給することがあるのです。
理由1:退職してもらうため
理由2:企業文化の違うため
理由3:様々な誓約をさせるため
・特別退職金の相場は、勤続年数×1か月分程度とされています。
・退職勧奨の際の特別退職金の上乗せ交渉の方法としては、以下の4つがあります。
方法1:働き続ける意思が強いことを示す
方法2:解雇の理由がないことを示す
方法3:有給休暇の残日数やRSUの未確定分を示す
方法4:弁護士に交渉を依頼する
・特別退職金は、税務上は退職所得、会計上は特別損失として処理されることになります。
この記事が、特別退職金に悩んでいる外資系企業の労働者の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日