退職強要とは?違法性や損害賠償の相場と判例3つや簡単な対処法

外資系企業から退職強要をされて悩んでいませんか?
退職強要とは、労働者の自由な意思を抑圧し退職を強要することです。
退職強要は違法であり、損害賠償の対象となります。
もっとも、退職を強要されても、絶対に退職合意書にはサインしないよう注意が必要です。
実は、外資系企業から退職を強要されることは非常に多く、知識を持っているかどうか結果は大きく変わってきます。
今回は、退職強要とは何かを説明したうえで、違法性や損害賠償の相場と判例3つや簡単な対処法を解説します。
この記事を読めば、退職を強要されたらどうすればいいのかがよくわかるはずです。
退職強要については、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次(contents)
1章 退職強要とは

退職強要とは、労働者が自分の意思で辞めたとは言えない状況に追い込み、退職を事実上強制することをいいます。
労働者は、法律上、雇用契約上の権利を有する地位にあり、簡単に退職させることができません。
雇用主が労働者の意思に反し一方的に退職させた場合には、解雇として厳格な規制を受けることになります。
そのため、企業は、解雇をする前に、労働者に対し自主的に退職するように促します。
しかし、労働者としても、生活やキャリアがありますので、容易には退職に応じません。
このような場合に企業は、解雇に関する規制を潜り抜けるため、労働者の意思を抑圧し、事実上、労働者が退職を拒否できないような状況を作り出すことがあります。
例えば、労働者が退職には応じたくないと言っているにもかかわらず、働き続けることはできないなどと述べて、暴言を吐いたり、嫌がらせをしたりしてきます。
このように退職強要とは労働者の自主的な退職に見せかけて、事実上、退職を強制することを言うのです。
“コラム:退職勧奨と退職強要の違い”
退職勧奨と退職強要は似た言葉ですが、法律上の扱いは大きく異なります。
結論からいうと、退職勧奨は適法になり得ますが、退職強要は違法になります。
その理由は、労働者が自由に断れる状態かどうかに違いがあるからです。
退職勧奨は、会社が退職という選択肢を示すにとどまり、最終的な判断は労働者本人に委ねられています。
例えば、「よければ今後の働き方を考えてほしい」と伝えられたり、一定期間の検討時間を与えられたりするケースは、退職勧奨に当たることがあります。
一方で、退職を断れない雰囲気を作ったり、不利益を示唆したり、執拗に迫ったりする場合は退職強要になることがあります。
このように退職勧奨と退職強要は、労働者の意思を抑圧しているかどうかという点で異なります。
2章 退職強要は違法
退職強要は、違法となります。
退職勧奨に際して、社内通念上相当と認められる限度を超えて、自由な退職意思の形成を妨げる不当な行為や言動をすることは許されないとされているためです。
(参照:東京地判平成23年12月28日労経速2133号3頁[日本アイ・ビー・エム事件])
また、退職強要については、パワハラに該当したり、強要罪になったりすることもあります。
2-1 パワハラに該当する
退職強要は、職場におけるパワーハラスメントに該当することがあります。
精神的な攻撃や人間関係からの切り離しに該当することがあるためです。
例えば、「人としておかしい」などの発言を繰り返されたり、別室に閉じ込められ他の社員との会話を禁止されたりする場合です。
退職を勧めること自体が直ちに違法になるわけではありませんが、精神的に追い込んだり、人間関係から切り離したりする方法で迫れば、パワハラとして違法になります。
2-2 強要罪になる
退職強要の態様によっては、刑法上の強要罪に該当する可能性もあります。
脅迫や暴行によって、本人の意思に反して行動を取らせることは、刑事責任の対象となるためです。
強要罪は、必ずしも殴るなどの行為が必要なわけではありません。
退職強要は、民事上の違法行為にとどまらず、内容次第では刑事上の問題となることもあります。
1「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の拘禁刑に処する。」
3章 退職強要に当たるケース
退職強要かどうかは、表面上の言葉だけで判断されるわけではありません。
一見すると指導や話し合いに見えても、その進め方や状況によっては退職強要となることもあります。
どのような場合に退職強要に該当するか事例を知っておくことで、退職強要に気づくきっかけになります。
例えば、退職強要に当たるケースとしては、以下のようなものがあります。
ケース2:人格権を侵害する発言をする場合
ケース3:暴力を振るう場合
ケース4:嫌がらせを行う場合
ケース5:孤立させる場合

それでは、退職強要と判断されやすい具体的なケースを順番に見ていきましょう。
3-1 ケース1:長時間面談を行い帰らせない場合
長時間にわたる面談を繰り返し、事実上帰れない状況を作ることは、退職強要に当たる可能性があります。
時間的な拘束によって冷静な判断ができなくなれば、自由な意思決定が妨げられるためです。
例えば、退職勧奨をやめてほしいと明確に伝えているのに3時間近く、面談を継続され、帰らせてもらえないような場合です。
このような状況では、「早く終わらせたい」という気持ちから、不本意な同意をしてしまうこともあります。
長時間面談によって判断力を奪う方法は、退職強要かどうか判断する指標の一つとなります。
3-2 ケース2:人格権を侵害する発言をする場合
人格を否定するような発言を用いて退職を迫る行為も、退職強要に当たる可能性があります。
自主的な退職を促すにあたり、社会通念上相当と認められる限度を超えているためです。
例えば、「存在自体が迷惑だ」「給料泥棒」などと言われるような場合です。
人格権を侵害する発言を伴う退職の迫り方は、退職強要としてよく問題になる行為です。
3-3 ケース3:暴力を振るう場合
暴力を用いて退職を迫る行為は、退職強要に当たります。
退職勧奨かどうかに関わらず、暴力を振るうことは違法行為です。
当然、退職勧奨に行うことも許されません。
直接的に殴られる場合だけではなく、近くの物を投げつけてきたり、机を叩いたりすることも許されません。
3-4 ケース4:嫌がらせを行う場合
退職を目的として嫌がらせを行うことも、退職強要に当たる場合があります。
退職させることを目的として、自分だけ必要な情報を与えられていなかったり、一日中シュレッダー係をさせ続けられたりするような場合です。
ただし、陰湿な方法が取られやすく、会社側も形式的な理由をつけてくることが多いため、嫌がらせと立証できないこともあります。
嫌がらせとして行われていることの証拠を残しておくことが大切です。
3-5 ケース5:孤立させる場合
職場で意図的に孤立させる行為も、退職強要に当たる可能性があります。
人間関係から切り離されることで、強い精神的圧迫を受けるためです。
例えば、自分だけ会議に呼ばれなかったり、周囲から話しかけないよう指示されたりするケースもあります。
孤立化を利用して退職へ追い込む行為も許されません。
4章 退職強要と損害賠償の相場
退職強要が違法と判断された場合、会社に対して損害賠償を請求できることがあります。
違法に労働者の権利を侵害する行為として、不法行為となることがあるためです。
退職強要の損害賠償(慰謝料)の相場は、数十万円~100万円程度です。
行為の内容や期間、精神的苦痛の程度などを踏まえて判断されます。
ただし、退職強要を理由とする慰謝料は簡単には認められませんし、認められても低廉な傾向にあります。
実際に請求が認められるまでにかかる期間や労力、費用には到底見合いません。
損害賠償を請求すればよいと考えて退職に応じるのは悪手となりますので注意しましょう。
5章 退職強要の判例
退職強要の判例については、いくつか蓄積してきています。
これらの判例を見ることで、どのような場合に退職強要とされるのかイメージしやすくなるでしょう。
退職強要の判例を3つ整理すると以下のとおりです。

5-1 広島高判昭和52年1月24日集民130号131頁[下関商教諭事件]
【事案】
市立高校の教員が、勧奨年齢に達しても退職を拒みました。学校側は数年にわたり執拗に退職を勧めました。計10回以上の面談や職務命令による呼び出しを行い、心理的圧力を加え続けた事案です。
【結論】
退職勧奨は限度を超え違法とされ、4万円~5万円の慰謝料が認められました。
【理由】
退職勧奨は自由な意思を尊重すべきです。
本件は拒絶後も執拗に続けられました。多数で囲み長時間説得する行為もありました。
これらは自発的な意思形成の範囲を超えています。受忍限度を越える心理的圧力を加えたといえます。職務上の地位を利用した退職強要であり、違法と判断されました。
教員X1については、慰謝料は4万円とされました。教員X2については、慰謝料は5万円とされました。
5-2 東京地判平成23年10月31日判時2145号121頁[日本航空事件]
【事案】
航空会社の契約社員が上司から退職を迫られました。
業務適性がないと判断され、雇止めも通告されました。
社員は、上司の言動が社会通念を逸脱した違法な退職強要であると主張し、慰謝料等を求めて提訴しました。
【結論】
違法な退職勧奨を認め、慰謝料20万円を認容。
【理由】
退職の意思がないと伝えた後も、説得が執拗に続きました。
面談は長時間に及び、懲戒免職の可能性も示唆されました。これらは人格権を侵害し、社会通念上の相当性を欠くと判断されました。
精神的苦痛への賠償として、被告らに20万円の支払いが命じられました。
5-3 東京地判平成15年7月15日労判865号57頁[東京女子醫科大学事件]
【事案】
大学医学部の主任教授が、部下の助教授に対し、衆人環視の下で侮辱的な文書を配布するなどして退職を迫った事案です。
助教授は一連の行為が退職強要や名誉毀損に当たるとして、大学と教授に賠償を求めました。
【結論】
退職勧奨を違法とし、慰謝料400万円の支払いを命じました。
【理由】
退職勧奨自体は直ちに違法ではありません。
しかし本件は衆人環視の下で行われました。「生き恥」等の侮辱的な表現が使われています。
これは名誉毀損に当たり、許容限度を超えています。人格権を侵害する不法行為と判断されました。
大学も連帯して使用者責任を負うとされました。
6章 退職強要されたら
退職を強要されたと感じた場合、最も大切なのは感情のままに動かず、冷静に対応することです。
強い圧力を受けると、早く終わらせたい気持ちから不利な判断をしてしまいがちですが、その選択が後から大きな影響を及ぼすこともあります。
例えば、退職強要をされたときの対処法としては、以下のとおりです。
対処法2:弁護士に相談する
対処法3:退職勧奨をやめるよう通知する
対処法4:退職条件を交渉する
それでは、退職強要を受けたときの具体的な対処法を順番に見ていきましょう。
6-1 対処法1:安易に退職届にサインしない
退職を強要されても、その場で退職届や退職合意書にサインしてはいけません。
一度サインをしてしまうと、後からこれを撤回することは容易ではないためです。
後から、退職強要であると説明すれば、裁判所に分かってもらえると安易に考えるのは危険です。
立証のハードルは高く、これに係る労力や時間、費用などの負担も大きくなってしまいます。
退職届や退職合意書にサインするよう求められても、弁護士に相談したいとだけ伝えて一度持ち帰るようにしましょう。
6-2 対処法2:弁護士に相談する
退職強要を受けたと感じたら、早めに弁護士へ相談することが有効です。
法的な見通しやリスクを、あなたの意向を踏まえて、方針を立てて、一貫した対応をしていくべきだからです。
ただし、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。専門性が非常に高い分野だからです。
外資系企業の退職勧奨についての実績が豊富な弁護士探すと良いでしょう。
6-3 対処法3:退職勧奨をやめるよう通知する
退職に応じる意思が一切ない場合には、会社に対して退職勧奨をやめるよう通知しましょう。
労働者が退職勧奨を拒否する意思が明確である場合には、会社は速やかに退職勧奨を中断するべきとされているためです。
明確に退職勧奨を拒否したにもかかわらず、退職勧奨が継続されれば、退職強要として違法となりやすくなります。
メールやチャットなどで明確に拒否した後も退職勧奨が続くようであれば、弁護士から退職勧奨をやめるよう警告する通知を送付してもらうことを検討しましょう。
6-4 対処法4:退職条件を交渉する
条件次第で退職する余地がある場合には、退職条件を交渉することを検討しましょう。
適正な退職パッケージを獲得することで、生活やキャリアを守りながら、次の就職先を見つけることができます。
例えば、退職に応じることの対価としての特別退職金や就労免除としてのガーデンリーブなどを交渉することが通常です。
これについても弁護士に代わりに交渉してもらうと良いでしょう。
7章 退職強要された人によくある疑問
退職強要された人によくある疑問としては、以下の3つがあります。
Q2:退職強要は労災の対象になる?
Q3:退職強要の相談先は?
これらの疑問を順番に解消していきましょう。
7-1 Q1:退職強要は労働基準監督署に相談できる?
A.退職強要は、労働基準監督署で是正・指導することはできません。
退職強要は、民法上の不法行為の問題であり、労働基準法の問題ではないためです。
労働基準監督署の取り扱いの範囲外となりますので、労働基準監督署に相談するというのはおすすめしません。
労働局によるあっせんを紹介される可能性がありますが、強制力がなく、法的な判断がされるわけでもありませんので、実効性も乏しいので注意が必要です。
7-2 Q2:退職強要は労災の対象になる?
A.退職強要により、うつ病や適応障害などの精神疾患を発症した場合には、労災の対象となることがあります。
・退職の意思のないことを表明しているにもかかわらず、執拗に退職を求められた
・恐怖感を抱かせる方法を用いて退職勧奨された
ただし、精神疾患については労災の申請をしてから認定まで1年以上かかることもありますので注意が必要です。
7-3 Q3:退職強要の相談先は?
A.退職強要の相談先は、弁護士がおすすめです。
法律や判例に基づいて、適切に対処することができるためです。
ただし、職場環境の改善をメインとして交渉したい場合には、労働組合という選択肢もあります。
8章 外資系企業の退職勧奨対応はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
外資系企業の退職勧奨対応は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
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9章 まとめ
以上のとおり、今回は、退職強要とは何かを説明したうえで、違法性や損害賠償の相場と判例3つや簡単な対処法を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
“まとめ”
・退職強要とは、労働者が自分の意思で辞めたとは言えない状況に追い込み、退職を事実上強制することをいいます。
・退職強要は、違法となります。
・退職強要に当たるケースとしては、以下のようなものがあります。
ケース1:長時間面談を行い帰らせない場合
ケース2:人格権を侵害する発言をする場合
ケース3:暴力を振るう場合
ケース4:嫌がらせを行う場合
ケース5:孤立させる場合
・退職強要の損害賠償(慰謝料)の相場は、数十万円~100万円程度です。
・退職強要をされたときの対処法としては、以下のとおりです。
対処法1:安易に退職届にサインしない
対処法2:弁護士に相談する
対処法3:退職勧奨をやめるよう通知する
対処法4:退職条件を交渉する
この記事が外資系企業から退職強要をされて悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日
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