正社員をクビにできない理由|無期雇用で解雇された際のお金と対処法4つ

外資系企業に正社員として入社したのに解雇されそうになってしまい困っていませんか?
日本で雇用されている以上、正社員を解雇することは不当ではないかと疑問に感じている方もいますよね。
正社員をクビにできないと言われる理由は、契約期間満了に伴う雇用の終了ができず、かつ、労働者の同意なく一方的に退職させるには厳格な法律上の規制があるためです。
正社員が解雇される条件としては、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であることが必要となります。
正社員が解雇(クビ)になった場合には、いわゆるバックペイとして、解雇日以降の賃金を請求していくのが通常です。
正社員が解雇された場合には、あなた自身の権利を守るためにも焦らずに冷静に対処していくようにしましょう。
実は、外資系企業は、安易に正社員に対してクビを宣告することが多いですが、日本で雇用する以上は日本の法律が適用されますので、解雇が不当になることもよくあります。
この記事をとおして、外資系企業で働く正社員の方々に解雇の難しさについてお伝えをしていくことで、労働者の権利が強く保護されていることを知っていただければ幸いです。
今回は、正社員をクビにできない理由を説明したうえで、無期雇用で解雇された際のお金と対処法4つを解説していきます。
この記事を読めば、正社員として働く方が外資系企業から解雇されてしまった場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。
正社員のクビについては、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次(contents)
1章 正社員をクビにできない理由
正社員をクビにできないと言われる理由は、契約期間満了に伴う雇用の終了ができず、かつ、労働者の同意なく一方的に退職させるには厳格な法律上の規制があるためです。
まず、正社員と契約社員の大きな違いとして、契約期間の有無があります。
契約社員の場合には、契約期間の満了に伴い契約が更新されなければ雇用契約は終了となります。
例えば、4月1日から3月31日までの1年間の有期雇用契約であれば、3月31日をもって契約を終了として、更新しなければ雇用契約は終了となり、労働者は退職となります。
なので、契約社員は、契約期間の満了時にクビを切られやすく、雇用上の地位が不安定となっています。
これに対して、正社員の場合には、無期雇用契約となっており、契約期間が満了することにより退職することにはなりません。
つまり、正社員については、契約期間の満了などにより雇用契約を終了するとしてクビにすることはできないのです。
そこで、会社が正社員の労働者に退職してもらおうと思った場合には、労働者に退職の同意をしてもらうか、一方的に解雇するかと言ったことが主な選択肢となります。
しかし、日本の法律では、労働者の権利が強く保護されているため、労働者の同意がない場合に一方的に退職させる解雇は、厳格な法律上の条件が定められています。
そのため、正社員については、労働者が同意しない限り簡単に退職させることはできず、クビにすることは難しいと言われるのです。
2章 正社員が解雇(クビ)される条件
正社員が解雇される条件としては、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であることが必要となります。
労働契約法16条により解雇権濫用法理が規定されているためです。これは外資系企業であっても同様です。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
例えば、外資系企業がよく上げてくる解雇理由としては、以下の4つがあります。
・欠勤等の勤怠不良
・会社の経営不振
・ポジションクローズ
これらについて順番に説明していきます。
2-1 能力不足(パフォーマンス不足)
外資系企業が解雇理由として挙げてくることが多いのは、能力不足(パフォーマンス不足)です。
外資系企業は、高いお給料の代わりに、求めてくる成果も大きい傾向にあります。昨今では、成果だけではなく、コミュニケーション能力なども求めてくる企業も増えてきました。
例えば、KPIを設定されて、未達であるとPIPを行われることになり、PIPが達成できないと、解雇になるといった例が典型です。
PIPについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ただし、能力不足を理由とする解雇については、労働契約を継続することができないほどに重大なものか、改善の機会が促されたかなどが考慮されることになります。
(参考:東京地判平24.10.5判時2172号132頁[ブルームバーグ・エル・ピー事件])
2-2 欠勤等の勤怠不良
外資系企業が解雇理由として挙げてくるものとしては、欠勤等の勤怠不良もあります。
メンタルヘルスなどの問題で会社を休みがちになってしまう方も増えてきました。
休職制度がある会社であればそれを利用して休むことなどがあり得ます。
しかし、入社して間もない時期だと、休職制度が適用されず、欠勤せざるを得ないような場合もあります。
なお、休職制度を利用した場合でも、復職しようとすると適合するポジションが空いていないなどと言われるケースもよくあります。
2-3 会社の経営不振
外資系企業では、会社の経営不振を理由に解雇を言い渡されることもあります。
経営不振と言っても、赤字になっているわけではなく、人件費率を下げて利益率を上げようとしているだけのこともあります。
例えば、外資系企業は非常に高い利益率を求めている傾向にありますので、目標より売り上げが少ない場合には、それに応じてヘッドカウントも削減する傾向にあります。
ただし、経営不振を理由とする解雇については、労働者に落ち度がありませんので、いわゆる整理解雇としてその合理性について慎重に判断されます。
人員削減の必要性、解雇回避努力の有無、人選の合理性、手続の相当性という4つの要素から解雇が不当か検討されるのが通常です。
外資系企業のリストラについては、以下の記事で詳しく解説しています。
2-4 ポジションクローズ
ポジションクローズについては、以下の記事で詳しく解説しています。
3章 正社員が解雇(クビ)になった際のお金
正社員が解雇(クビ)になった場合には、いわゆるバックペイとして、解雇日以降の賃金を請求していくのが通常です。
会社から解雇された場合には、労働者は退職したものとして扱われることになりますので、出勤することができなくなり、お給料も支払ってもらえなくなります。
しかし、解雇が不当であった場合には、労働者が出勤できなかった原因は会社側にあることになりますので、会社は解雇日以降のお給料を遡って払わなければいけなくなるのです。
例えば、2025年4月末に解雇された場合には、不当解雇を争い2026年4月末に不当解雇と認められ解決した場合には、1年分の給料が遡って払われる可能性があります。
バックペイについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ただし、不当解雇をされた場合には、訴訟の判決までいかずに和解により早期に解決することも多くなっています。
退職を前提とした和解をする際には、解雇の見通しに応じた解決金が支払われる傾向にあります。
例えば、外資系企業における不当解雇の解決金の相場については、給料の3ヶ月分~24ヶ月分程度です。
外資系企業における不当解雇の解決金の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
なお、外資系企業は、解雇の前に退職勧奨を行い、パッケージを提示してくることがよくあります。
パッケージとは、会社が労働者に任意に退職してもらうために支給する特別の退職金等のことです。
外資系企業のパッケージについては、以下の記事で詳しく解説しています。
4章 正社員が解雇された(クビになった)場合の対処法
正社員が解雇された場合には、あなた自身の権利を守るためにも焦らずに冷静に対処していくようにしましょう。
外資系企業は不当な解雇であっても強行してくることが多く、労働者が何もしなければ解雇が有効であることを前提に取り扱われてしまいます。
具体的には、外資系企業の正社員が解雇された場合の対処法としては、以下のとおりです。
手順2:通知書を送付する
手順3:交渉する
手順4:労働審判・訴訟を提起する
それでは、これらの手順について順番に説明していきます。
4-1 手順1:弁護士に相談する
正社員が解雇された場合の対処手順の1つ目は、弁護士に相談することです。
法的な見通しを踏まえて、あなたの意向に沿った方針について助言してもらうといいでしょう。
不当解雇については一貫した対応を行うことが重要となり、手続も専門的となりますので、最初から弁護士にサポートしてもらうことがおすすめです。
一度行った発言や送った書面は後から撤回することが簡単ではなく、労働者自身の発言や書面が不利な証拠として提出することが少なくないためです。
また、早い段階で証拠を集めることができたか同課により結果が大きく変わる可能性もあります。
ただし、とくに専門性が高い分野になりますので、解雇問題に注力していて、とくに外資系企業の解雇について実績のある弁護士を探すことがおすすめです。
4-2 手順2:通知書を送付する
正社員が解雇された場合の対処手順の2つ目は、通知書を送付することです。
外資系企業から解雇されたら、まずは会社に対して、解雇が無効であることを通知してあなたが解雇を争う意思があることを明確にしておくこと大切です。
解雇された後に何もせずに放置していると、解雇を争う意思がなかったなどと指摘されることもあるためです。
併せて、解雇理由証明書を請求することになります。見通しをより明確にすることができ、どのような主張や証拠を準備すればいいのかが明らかになります。
弁護士に依頼した場合には、代わりに弁護士に通知書を送ってもらうようにしましょう。
4-3 手順3:交渉する
正社員が解雇された場合の対処手順の3つ目は、交渉することです。
会社から回答があったら争点が明らかになりますので、話し合いにより折り合いをつけることが可能かどうか協議してみるといいでしょう。
解雇前にパッケージ交渉が十分に行われていない場合には、交渉することで示談により解決できることも多くなっています。
示談により解決することができれば、少ない負担と労力で時間をかけずに良い解決をできることがあります。
4-4 手順4:労働審判・訴訟を提起する
正社員が解雇をされた場合の対処手順の4つ目は、労働審判・訴訟を提起することです。
話し合いによる解決が難しい場合には、労働審判や訴訟などの裁判所を用いた解決を検討します。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には労働審判委員会が審判を下します。迅速、かつ、適正に解決することが期待できます。
労働審判については、以下の動画でも詳しく解説しています。
訴訟は、期日の回数の制限などは特にありません。1か月に1回程度の頻度で期日が入ることになり、交互に主張を繰り返していくことになります。解決まで1年程度を要することもあります。
5章 正社員の解雇(クビ)でよくある疑問3つ
正社員の解雇でよくある疑問としては、以下の3つがあります。
Q2:正社員の解雇規制は緩和される?
Q3:正社員の解雇(クビ)は何日前に言われる?
それでは、これらの疑問について順番に解消していきましょう。
5-1 Q1:正社員の解雇(クビ)は会社都合?
A.正社員の解雇は、会社都合になるのが原則です。
ただし、例外的に、重責解雇と言われる場合には、自己都合となります。
重責解雇とは、労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇のことです。
刑法の規定違反や故意又は重過失による設備や器具の破壊または事務所の信用失墜、重大な就業規則違反等による解雇の場合です。
5-2 Q2:正社員の解雇規制は緩和される?
A.正社員の解雇規制緩和について話題になっています。
仮に解雇規制が緩和された場合には、正社員の解雇が難しいという状況も変わってしまう可能性があります。
しかし、現時点では、解雇規制が緩和されたわけではなく、従前どおり正社員の解雇は難しいというのが現状です。
5-3 Q3:正社員の解雇(クビ)は何日前に言われる?
A.正社員の解雇は、原則として30日前には伝える必要があります。
ただし、解雇予告手当を支給することで予告期間は短縮することができます。
6章 外資系企業の解雇はリバティ・ベル法律事務所にお任せ!
外資系企業の解雇は、是非、リバティ・ベル法律事務所にお任せください。
この分野は、専門性が高い分野であるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
本採用拒否の有効性につき見通しを分析したうえで、あなたの意向を踏まえて、外資系企業の性質に応じて適切に方針を策定する必要があります。
リバティ・ベル法律事務所では、解雇や退職勧奨事件に力を入れており、特に外資系企業とのパッケージ交渉について圧倒的な知識とノウハウを蓄積しています。
解決実績の一部については、以下のページから確認する事が出来ます。
解決事例 | 外資系労働者特設サイトbyリバティ・ベル法律事務所 (libertybell-tokusetu.com)
また、解雇やパッケージ交渉を含む退職勧奨対応については、依頼者の方の負担を軽減するために着手金無料、完全成功報酬としております。
初回相談は無料となっておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
7章 まとめ
以上のとおり、今回は、正社員をクビにできない理由を説明したうえで、無期雇用で解雇された際のお金と対処法4つを解説しました。
この記事の内容を簡単にまとめると以下のとおりです。
“まとめ”
・正社員をクビにできないと言われる理由は、契約期間満了に伴う雇用の終了ができず、かつ、労働者の同意なく一方的に退職させるには厳格な法律上の規制があるためです。
・正社員が解雇される条件としては、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であることが必要となります。
・正社員が解雇(クビ)になった場合には、いわゆるバックペイとして、解雇日以降の賃金を請求していくのが通常です。
・外資系企業の正社員が解雇された場合の対処法としては、以下のとおりです。
手順1:弁護士に相談する
手順2:通知書を送付する
手順3:交渉する
手順4:労働審判・訴訟を提起する
この記事が外資系企業から解雇されてしまった正社員の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士 籾山善臣
神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題、離婚・男女問題、企業法務など数多く担当している。労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。誰でも気軽に相談できる敷居の低い弁護士を目指し、依頼者に寄り添った、クライアントファーストな弁護活動を心掛けている。持ち前のフットワークの軽さにより、スピーディーな対応が可能。 【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日